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バトルクロスの評価

 剣を槍にするアタッチメントという便利系のアイテムにゴーサインを出したが、ネタ枠で発射機構付きのバージョンもちょっとだけ生産させた。

 対象となる剣の規格については、冒険者向けに一般販売されている売れ筋商品を参考にしているが、アジャスター(調整装置)が付いているので、規格外なものでなければなんとかなるだろう。


 自分でも使ってみたが、悪くはないと思う。

 剣をそのまま使うので普通の槍より穂先が重いが、それぐらいは苦にならないし、リーチを長くしたいか短くしたいかで選択権があるのは嬉しい。


 いくつかのダンジョンは、森のように剣が有利な場面と、平原のように槍が強い環境が混在する。

 その切り替えができるというのは嬉しいものだ。



「魔法剣をバトルクロス用にする柄は……微妙か」


 そして、精霊銀の魔法剣をバトルクロスで使えるようにする柄は、微妙であった。


 バトルクロスは大型なので、剣がナイフのようなサイズになるのは理解していたが、その感覚の違いが戦闘勘を狂わせる。

 俺は剣や槍は使っていたが、ナイフの修練をあまりしていなかったというのもある。

 短剣術、ナイフ戦闘技術は剣での戦闘技術と共通する所があるんだけど、完全に同じというわけではない。


 物が悪いわけではないが、俺ではどうにも上手く扱いこなせない。

 それが結論である。



「いや、それでもガーゴイルを寄せ付けていないんだよ。これで十分ではないのかな?」

「これぐらいなら、やっぱり生身の方が強いんですよ。パワードスーツ(強化装甲)なんだし、着用時の方が強いって思いたいんですよね。

 今の俺に限って言えば、魔法剣を使う時は、バトルクロスは無しです。使うなら、もうちょっと訓練してからですね」


 ちなみに、光織たちはバトルクロス上でも魔法剣を問題なく使えるし、俺よりナイフ捌きが上手いので、問題なく戦える。

 ナイフの戦闘だけを見れば、彼女らは俺より上手いのだ。いくつかの戦闘記録映像を見ただけで学習完了。あとは実地で最適化をして終了。身につけるまでの時間が違う。

 そういう所は多芸なロボットさんたちである。



「そう言えば、だがね。バトルクロスの性能は、今はどの程度なのかね。

 今さっきの話は、ナイフを扱った時のものだが、ナイフではなく、同条件の他の装備で戦った場合、バトルクロスありとなしで比較して、どちらが強いと言えるのかな?」


 ナイフに消極的な俺を見て、どこか腑に落ちないといった顔をした四宮教授。

 だがすぐに表情を切り替え、バトルクロスの性能評価を聞いてきた。


「素手で戦うとした場合、バトルクロスありの方が強いですよ。生身を強化するよりも戦いやすいし、今の追従性であれば結構本気で戦えます。

 それに、デフォルトの装備がいくつかあるので、戦闘時の選択肢も幅が広い。武器無しであれば、バトルクロスは有用です」

「武器ありでは、まだまだという事かね?」

「はい。そっちが本業って事もありますが、武器戦闘はもう少し違ったコツがあるんですよ」


 なので、正直に答える。


 バトルクロスはレベルアップにより、その性能を大きく向上させている。当初の弱さはなく、実戦に耐えられるレベルに仕上がったと言っていい。

 まぁ、技術的な解決ではなく、レベルアップ頼みの解決が良い事かどうかは知らないけどね。

 言葉を返すと「レベルアップすれば実戦に耐えうる」って見方もできるんだし、悪くはないだろうが。これが役立たずなものならレベルアップした所で、使えるようになりはしない。


 なお、バトルクロス着用時で一番困る事と言えば、肌感覚が弱くなる事か。

 戦場の空気を自分の肌で感じる事は割と大事で、天然のセンサーになる。バトルクロスには気密性を持たせたので、それが出来なくなっているんだよな。


 気密性を持たせた事自体は俺のリクエストなので、そこに文句を言う事はしないんだけど。

 なので、そこは外して、武器を握った時の感触が無い事、そこから武器の握りの強弱を上手くコントロールできていない事を説明してみた。

 一応、圧力センサー経由でフィードバックはあるんだけどな。それでも生身の感覚とは違うので、これ以上はどうにもならないのである。



「辛口なようで、ずいぶん高い評価なのだね」

「高いですか?」

「表情を見れば分かるのだよ。

 クソゲーを掴まされた時の怒りの表情と、面白いけれどあと一歩のゲームを語る時の表情の違いと言えばいのかね? 楽しそうに問題点を指摘しているという事は、そういう事なのだよ」

「また、わかりにくい例えですね」

「なぁに。一度『チータ○マン2』をやってみれば分かるさ」

「分かりたくありません」


 俺の正直な感想に、四宮教授は嬉しそうな顔をした。

 四宮教授的には、「まだまだ」だという、それぐらいの評価でも構わなかったらしい。

 それでも進歩しているのだからと、納得の表情だ。


 本当に、こういう時の技術者、開発者の忍耐力は見習わないといけないよな。

 片付けても片付けても山のように積み上がった問題をひたすら切り崩し、その成果がわずかでも実感できるなら、それを喜びにできる精神性は人生を楽しく生きるコツだ。


 俺も、「まだまだ」だろうが笑えるぐらいの、心の余裕があると良いんだけど。

 けど、『チ○ターマン2』をやるような余裕は要らないので、わざわざゲーム機は持ってこなくて良いですよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >>わざわざゲーム機は持ってこなくて良いですよ。 隙あらばクソゲー被害者という名の戦友を増やそうとするクソゲーマーの鑑。
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