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続・新装備開発②

 新武装の開発計画もいいが、既存の開発ラインの確認も行う。


「じゃあ、次の遠征に合わせてスタンロッドの調整をしておいてくれよ」

了解(ヤー)!」


 色々とあって忘れそうになるが、以前、オーガ相手に大立ち回りをしたのは、バトルクロス用のスタンロッドを調整するにあたり、バトルクロス装備の俺がオーガと戦えるかの確認のためだった。

 結果は上々。全く問題無いので、スタンロッドの準備をお願いしていたのである。


 今度、また埼玉のダンジョンに行って、スタンロッドのテストをするとしよう。

 一足飛びのパワーアップなど夢物語だから、地道にオプション装備を開発していくとしよう。





 こうやって自前でバトルクロスの装備を開発しているんだけど、これが大手となると、規模が違う。


「最新鋭の冒険者用ロボット『学天即(がくてんそく)EX』対応、重槍『貫丸(つらぬきまる)』はお値段80万円、ねぇ」


 大手の搭乗型ロボットは、販売台数が違う。

 ほとんど売れていないタイタンや、まだ販売もしていないバトルクロスと違い、ある程度普及したロボットたちは、開発元が商品開発をしなくてもいい体制が出来上がっている。

 サードパーティ、つまり開発元とは関係ない企業が、独自に互換性のある装備品を開発してくれるのだ。


 そうやって関連商品、装備が充実していくと、オリジナルのロボットがさらに売れて市場が一極化していく。

 一度市場が形成されてしまえばそれを覆す事は難しく、車業界のように大手数社がしのぎを削り合い、その他の企業が市場に参入できない状況を作り上げる。


 他にも、協力し合う企業群には縁故が生まれやすい。

 下請け企業という訳ではなく、契約を介さない協力体制であるが、どこかの企業の味方であるというような、派閥が出来上がる。

 そうなると、原料入手などで協力し合う事が行われ、時には天下りを含めた社員の融通をする事すらある。

 企業グループになっていない関係だろうと手を取り合って生産・販売体制を強化していくのだ。



 中にはそういった不利をひっくり返すようなユニコーン企業も存在するんだけど、それはそこまで簡単な事ではなく、滅多にある事ではない。いくらメインの商品が凄かろうと、大会社にサードパーティーまで含めた企業群に一社で挑むなど、無謀の一言。

 精々、隙間産業で手堅く稼ぐか、地元を味方につけて地力を蓄え全国展開という勇躍の時を待つのが賢明だと、俺は思う。

 中小企業が既得権益を握っている連中と戦うのは、簡単な事ではないのである。





 ただ、大手企業に対抗し得る手段というのは、企業の規模や資本力、技術力以外にも、もっと単純で理不尽な物が存在する。


「一文字君、自衛隊がタイタンとバトルクロスに興味を持ってくれたのだよ!!」


 世の中には、人脈という名のチートを使い、出来レースをひっくり返す人が存在する。

 どこかの組織のトップに知人が居るからと、道理を蹴り飛ばし、無理を通せてしまう人がいるのだ。


 四宮教授は自衛隊の知り合いに協力してもらって、また(・・)無茶苦茶な事をやってみせたようだった。

 この人はソフトの技術者を辞めても、営業で活躍するんじゃないかなぁ? そう思えるぐらい、顔が広かった。



「タイタンはともかく、バトルクロスはまだ開発段階ですよ」

「こちらとしても、バトルクロスの営業は仕掛けていないのだけれどね。先方はタイタンを買うのを条件に、バトルクロスの納品を急がせたい様子であったよ。どうやら、自衛隊は搭乗型ロボットがお気に召さなかった様だね。

 然もありなん。あのダンジョンでの一件では、搭乗型ロボットに乗る冒険者が活躍せず、バトルクロスを纏った一文字君や六花が活躍したのだからね。

 彼らがどちらを頼みにするかは自明の理と言えるのだよ!

 そう考えると、スタンロッドの装備は急いだ方が良いのかもしれないよ。あれが有ると無いとでは、評価が大きく違ってきそうなのだからね」


 そんな四宮教授だが、今回の話は持ってきたのではなく、持ち込まれた物かも知れなかった。

 四宮教授が人に話を持ち込むのであれば、知人だって四宮教授に話を持ち込むぐらいはするだろう。一方的な利用ではなく、対等な関係であれば、そんな事もあるだろう。



 問題は、未完成品のバトルクロスを強請られた事。


 商品として販売するという事は、売った後の保証をするという事でもある。

 俺が売りました、客が買った物が壊れました、では商売として最悪なのだ。戦闘用とはいえ、簡単に壊れる物を売るなど、信用を損なってしまう。


「……予備機として生産中の三号機を試供品としてレンタル。しばらくはデータ取りに協力してもらうとか、そのあたりが落としどころじゃないですか?

 まだ未完成なんだし、商品として売ってから何かあったら大惨事ですよ」

「そうですな。最低限の保証も無しにトラブルが起こせば、収入以上の賠償を支払う事になりかねないのだからね。

 そこを詰めていく前に一般の商品と同じ条件で売るのは、ただの倒産願望であるな。

 もちろん、勝手に販売計画を立てたりはしていないので、安心して欲しい」


 一応も何も、ヤバい案件を無策に受け入れる事は無い。四宮教授だってそれぐらいは把握している。


 把握しているが、向こうが強く出てきてしまえば、それも絶対ではない。

 どれぐらい本気で欲しがっているかにもよるが、こちらが我が儘を押し付けている時に要望を突っぱねると、今後に響く。


 可能であれば、ほどほどに要求を受け入れ、自分の身を守りつつ相手に満足してもらいたいんだけど。

 できるかな?

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