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第二次遠征計画⑤

 嫌な予感がしようがしまいが、オーガを倒しに来たんだから、貯め込まれたオーガを倒すだけ。


 そんな訳でしばらくオーガと戦っていたが、バトルクロスのバッテリーがヤバくなってきた。

 戦闘モードは通常の状態よりもバッテリーの消耗が激しいので、バトルクロスは少し休ませる必要が出てきた。連続での戦闘モードを避け、インターバルを挟みながら戦えば、今日明日ぐらいは大丈夫だと思うけど。


 そんな訳で、護衛の光織たちと交替し、俺は後方に下がる。

 俺の代わりに前に出た光織たちは、襲いくるオーガたちを、赤子の手をひねるように下していった。


「ライトサークル、レフトサークル。はいアップ、ダウンね、オーガさん」

「お前は『ベスト・キッ〇』のミスターミヤ〇かっ!」

「〇ヤジ? ノー、ノー。ミヤ〇ィ~」


 普通の冒険者ロボットでは、オーガと戦える力など持っていない。

 しかし何年も戦い続けてきたミヤ――じゃなくて光織たちなら、そこまで苦戦する相手じゃない。


 必要なのは、戦いの経験値。

 潜り抜けてきた鉄火場の数だけ、彼女たちは強くなっていた。


 ……戦闘中にボケを挟める程度には。



「人間を含む動物の場合、視線の先と筋肉の動きを見ればある程度次の行動が予測できるって教えたけど。あいつら、俺よりも目が良いからなぁ」


 ついでに。

 色々と仕込んだせいで、魔法抜きの格闘戦に限定すれば、光織たちは俺より強かったりする。

 俺の方は先読みが難しいのに対し、彼女らは俺の情報をガンガン抜き取れるし。それを逆手に取ったフェイントも何度も使ったから見切られるようになっているしで、魔法無しだと打つ手が無いのだ。

 彼女らが敵じゃなくて良かったと思うよ、ホント。





 静岡のダンジョンのオーガ密度は、彦根ダンジョンよりも濃かった。

 光織たちも波状攻撃を、狙ってそうしているのではないだろうけど、仕掛けてきたオーガたちに消耗を強いられる。


 仕方がないので、オーガが出ないエリアまで下がって今日は休むことにした。



「オークの相手は任せた」

「合点承知の助!」

「一切合切任せとけ!」

「でやんでぇ! やったろうじゃねぇか!」


 相変わらずのコントを聞いてから、夕飯に「みしまコロッケ」とおにぎりを食べる。


 このコロッケはご当地B級グルメという奴で、ここに来るちょっと前に、肉屋で買ったものだ。

 肉屋のコロッケ、美味しい。


 保温などしていなかったので冷めてしまっているが、魔法で軽く温め直せば、ちゃんと美味しい。

 温め直しただけのコロッケがここまで美味しいのなら、出来立てはどれぐらい美味しいのだろうか?

 確かめてみたい気持ちはあるけど、明日は高速のサービスエリアで富士宮焼きそばを食べ、ついでに浜松に寄って餃子の予定なので、泣く泣く諦める。


 美味いものは、美味いと思えるように食べるべきだ。

 けして、無理をして詰め込むものではない。そんな事をしたら、味がわからなくなる。



 食事を終えると、歯を磨いてから寝袋に潜り込んで横になる。

 明日は明日で、またオーガと戦わなければいけないのだ。

 ちゃんと寝て、体力と気力を回復させなければいけなかった。





「おはこんばんちわ」

「ん、むぅ。おはよう」


 翌朝、タイマーの音で目を覚ました。

 睡眠時間は十分だったので、体の疲れはほとんど抜けている。

 無自覚な疲労はあるかもしれないが、今日一日ぐらいならオーガ如きに後れを取らないだろう。


 バトルクロスの方も、起動してオートメンテナンスモードを走らせてみれば、コンディショングリーンだと告げてくれた。

 バッテリー残量も、そうとう無茶な連戦でもしない限り、今日のノルマをこなす分には問題なさそうだ。


 光織たちにもコンディションを聞いてみるが、調子は良さそうであった。

 むしろ昨晩は平和過ぎて暇だったらしい。

 以前のようにオーガのトレジャーボックスが山と積まれているという事もなく、夜はそれなりに平和だったことが窺える。


 オーガの出るエリアで休まなければ、こんなものか。

 オーガが出る所まで戻ったりしなければ、こんなものか。


 夜半に無理を押し付けず済んで良かったと、その点は安心したよ。

 わざわざ無理をして、良い事なんかないからね。

 無理を通す場面がいつか来るとしても、それは今ではないのだね。



「じゃあ、今日もオーガを相手にして。昼前になったら撤収するよ」

「サー、イエッサー!」

「アイアイサー」

「あらほらさっさ!」


 こうして俺は、またオーガの出るエリアに向かい。

 己の迂闊さに叫び声をあげるのだった。

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