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第二次遠征計画④

 オーガの戦闘能力調査。

 前回は様子見という事で、俺が普通に戦ってみた。

 今回はスタンロッドの試験というハンデ無しだが、バトルクロス装着状態で戦ってみる事にする。



「一文字様ですね。期間は翌日の夜で、オーガを中心に戦う予定と。

 承りました。ダンジョンへどうぞ」


 前回と同じように彦根に行くのはアレだったので、今回は行き先を静岡県のダンジョンに変えてみた。

 ここも彦根と同じく、入り口から中ほどでゴブリンとオークを狩る、ロボット使い(・・・・・・)の冒険者ばかりであった。



 入り口でダンジョン攻略計画を提出し、こちらの予定を把握してもらう。こういう手続きをしておくと、いざって時に助けに来てもらえる事があるので、このダンジョンに入る冒険者は計画書の提出をしないといけない。

 なお、書類は電子データによる提出が可能なので、スマホのアプリで書いてしまえば、あとはバーコードを読み取ってもらうだけである。よって、ダンジョンの出入り口で手続きに時間を取られる事は無い。


 とは言え、書面を作るのは手間なので、そういった管理をしていないダンジョンの方が気楽でいいんだけどねぇ。

 静岡より遠目の滋賀に行ったのは、そういった手続きが要らなかったからなんだよ。





 ダンジョン内部は、彦根のダンジョンと同じ有様だった。


「ゴブリンは見つけ次第排除、と。楽でいいね」


 ロボットに乗った冒険者にしてみれば、ゴブリンなどただの経験値である。

 姿を見せれば誰かがすぐに倒しているので、俺の出番など無い。


 俺はバトルクロスを使っているし、護衛に光織たちも連れているので、見た目だけなら周囲の連中の同類である。

 よって、今回はダンジョン内を歩くだけで周囲から警戒され、獲物を横取りされないよう警戒する視線に晒された。


 どうやらこのダンジョンにあの(・・)動画の視聴者は居なかったようだ。嬉しい。



 出てくるモンスターがオークに代わっても、冒険者たちのやる事は変わっていない。


「とはいえ、多少は手こずっているんだよな」


 見つけたモンスターは、即排除が基本。

 ゴブリン相手だと一人で戦う者が多かったが、こちらはオークと集団で戦う奴が多い。

 経験値効率は悪くなるが、その方が戦闘効率がいいので、俺としては集団行動を取る冒険者を褒めてあげたい気分だ。


 ……アホらしい話だが実力も考えずにオークに一人で突撃し、殺される冒険者が稀にいるという話だ。

 ロボットに乗って気が大きくなった馬鹿の末路など、考えるまでもなかった。

 ロボットの貸し出しをしているギルドにしてみれば、頭が痛いどころの話ではないよ。それを先駆けてやっていた史郎は、やっぱり逃げたんだなと、そう思った。





 彦根よりも静岡のダンジョンの方が人気があるのか。

 俺はゴブリンどころかオークとだって一度も戦わず、オーガの出るエリアまでたどり着いた。


「うーん。オーガが小さく見える」


 バトルクロスに乗ってオーガと対峙する。

 すると、オーガよりも視線が上だからか、オーガが一回り小さく見えた。

 普段相手をしているゴブリンなどは、最初から体が小さいのでそこまで違和感が無かったが、大型モンスターのはずのオーガが小さく見えると、非常にショボく感じる。



「とりあえず……えい」


 俺の姿を確認すると、一直線に向かってくるオーガ。その足の遅さに、俺は思わず落胆した。

 俺は気合が乗らぬまま剣を振り回し、その首を叩き切る事に成功する。

 やっぱり、脆い。弱い。オーガは致命傷を避ける様に刃を躱す事もできなかった。


 その後もバトルクロス着用のまま何度か戦ってみるが、やっぱり「オーガは弱い」という感覚は付きまとい、嫌な予感は増していく。

 これならスタンロッドの試用も問題なさそうであるが、俺は素直に喜べないでいた。



 前回はまだ、モンスターが弱かろうと、それがダンジョンの性質である可能性があった。

 しかし今回、別ダンジョンでも同じ様子だとすると、何かしら普通ではない事態が起きるかもしれないと不安になる。


 下手をすると、日本各地でオーガ祭り(スタンピード)である。

 一般人の俺としては、自衛隊が予防を頑張ってくれるのを祈るだけだ。

 稀にこうやって間引きをするので、それ以上の協力要請は勘弁してほしい所である。


 いやまぁ、一介の冒険者資格保有者に、そんなお声掛けがあるとは思わないけど。

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