表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/528

冒険者ギルドの事情④

 ダンジョンの管理を任される。

 新しいダンジョンを確保して、会社利益にする。

 確かにそれなら、こちらにも利益があるように見える。


「人材が足りませんが」

「ですよねー」


 この思い付きはこれまでの考えよりはマシだが、やっぱり難しいだろうという結論となる。

 彦根ダンジョンはゴブリンダンジョンの十倍ぐらいのデカいダンジョンなので、管理するのは難しいのだから、できると思うほうがおかしい。



「元から居る職員を使うにしても、限度というものがあるのだよ。

 損をしない話などはなく、損よりも利益が大きい提案をしていると言い直せば、まだ理解できるのだがね。

 それも、要求を考えれば難しいのだよ」


 例えば、だ。

 ダンジョンを安定化するために攻略を進めるとして、どれだけの戦力が必要になるのかという話がある。


 俺が光織たちと間引きし続けるのは現実的ではなく、例えばタイタンなども投入していこうと思うと、その資金はどこから出すのかと言うお話。

 必要数を出そうと思うと何億円かかるかって、計算したくなくなる。


 長いこと頑張れば回収できるかもしれないけど、タイタンをレベルアップさせる前に投入するのはリスクが大きい。回収の前に壊されたら大損だからね。

 だからアンデッドダンジョンあたりでレベル上げをさせたいし、戦場への投入は遅くなるので、一年か二年は俺の持ち出しで耐える事になるだろう。


 そりゃ、生涯通してそうやって稼げるならそれもアリなんだけど。ダンジョンは、唐突に現れるだけでなく、前触れ無く消える事も有るわけで。そうなれば投資がしばらくの間は無駄になる。

 彦根ダンジョンを失ったあとに他のダンジョンに配置換えされるとしても、同じようなダンジョンを自由に押さえられるとは考えられない。

 下手をすると用意した戦力がデッドストックになり、こちらの負担が増える事も考えられる。



 それに言葉は悪いが、小さい会社で小回りを効かせて会社経営をしているから、なんとかなっている部分も大きい。

 世界的大企業である冒険者ギルドの中で立場を得たら、それに縛られて身動きができなくなる事も多い。

 ギルド所属は俺にとってリスクが大きすぎる。


 名声や社会的地位、信用というのは諸刃の剣だ。

 出来る事を増やす反面、出来なくなる事も多い。

 俺のやりたい事を考えれば、地位などはそこまで重要でもないのだ。むしろ枷でしかない。





「発想を少し変えてみてはどうでしょう?

 例えばですが、無理のない範囲で一時的に協力をするとしたら、特に問題はありませんよね。

 手に入れるものを減らし、義務も軽くすれば、行きやすくもなりませんか?」


 そんなふうに出来ない理由を並べ立てていると、及川教授は、双方の妥協点を探るようなことを言い出した。


「ダンジョンの一利用者として、一度や二度、オーガを狩るのは問題ではありません。でしたら、それで済ませてしまえば良いのですよ。

 何から何まで世話をする理由はありませんからね。このまま適切な距離を保ちましょう。

 そうしないと、別のダンジョンに通う事になり、せっかく書いていただいたレポートが無駄になってしまいます。ギルドも一文字さんが来なくなり、オーガが放置される。それでは誰も幸せにはなりませんね。

 一度や二度の手助けでスタンピードまでの延命をして、その間に本格的な対応をしていただきましょう」


 いや、妥協点というか、やることを本来の流れに乗せただけか。


 竜胆さんが無駄に交渉を持ちかけたから、ややこしくなったので、それを無視してしまえというわけだ。

 確かにそれは現実的だろう。

 俺だって、せっかく書いたレポートが無駄にならないなら、その方がいい。



 こうして方針が決まった俺たちは、計画の大きな見直しはせず、そのまま動く事となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ