表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/528

第二次遠征計画②

 まず、現状ではっきりとしている残念な事実がある。


“俺はパワードスーツ無しの方が強い”


 未だ、パワードスーツは未完成品であり、俺の望む水準に達していない。

 バトルクロスのパワーはともかく、スピードや小回りの関係で、未着用状態の方が強かった。

 参式パイルバンカーの加速装置は便利だけど、その反面、普段は足枷になって遅くなるし、総合的にはマイナスだ。


 防御能力については、そもそも俺は回避専門で比較が難しい。

 ダメージを受けない事を前提に立ち回るので、装甲によるダメージ軽減がどこまで仕事をしてくれるかにかかっている。

 そこはモンスターとの相性次第で、「こう」と言い切れる話ではないのだ。

 炎を吐く狼と、人間サイズの棍棒をぶん回す巨人とでは、求められる防御能力は違うのが当たり前。一括りに評価できるものではなかった。





「そんなわけで、まずは俺が光織たちと遠征行脚に出かけようと思います。

 行った事があるダンジョン、戦った事があるモンスターのいるダンジョン。そういった事前情報のある、比較的対処のしやすいダンジョンで肩慣らしをします」


 パワードスーツ着用時よりも生身の方が強いのであれば、生身でも対処できるダンジョンに行って戦えばいい。

 保険としてパーティメンバーに光織たちを連れて行けば、安全面は大丈夫だ。

 ……たぶん。



「水棲系モンスター、小さいのも外しましょう。残った中で比較的大きなモンスターは、これでしょうか」


 大鬼(オーガ)のような分かりやすい人型モンスターが最有力候補。

 次点で、2本の角を持つ馬モンスターのバイコーン。

 この辺りが、スタンロッドのお相手として選ばれた。



「妥当ですね」

「ここで冒険をしては、安全に配慮するように言った我らの立つ瀬が無いのだよ」


 こいつらは戦い方にひねりの無い、パワータイプのモンスターである。

 戦い方がシンプルで、慣れてしまえばいい獲物なのだが、ベテラン冒険者でもまれに事故がある事で有名だ。

 怪力無双のモンスターなので、その攻撃に当たると大怪我は必至。自分が強くなり実力差ができて格下になろうと、侮れないのだ。



 そうなると、スピードに劣り回避能力が足りないバトルクロスは不利に見える。スタンロッドを当てる前に敵の攻撃を受けてやられるかもしれない。

 うん。バトルクロスで戦うなら、ね。


 今回は俺が先行して戦うという話であり、バトルクロスの出番はない。

 ついでに戦い方の指定もないから、バトルクロスで戦うときに、どうやってスタンロッドを当てるか考えながら練習してみるつもりだ。

 普通に戦えば俺に負ける要素がなく、光織たちの支援があれば間違いも起きない。


 オーガやバイコーンは、俺にとってそれぐらいの相手でしかなかった。



 ちなみに、俺がかなり前に戦ったファイアウルフは、オーガやバイコーンよりも格上である。

 燃える毛皮に炎の吐息。近くにいるだけでこちらがダメージを喰らうし、無対策では攻撃に使った武器を駄目にするような厄介なモンスターだからだ。


 レベルアップやドロップアイテム狙いで戦いの数をこなす冒険者にとって、連戦が難しいモンスターは忌避される。

 こういった“属性持ち”と言われるモンスターは、どれも油断できないのであった。





 こうやって戦うモンスターを選べば、メタを張る事も可能だ。

 相手に合わせた、専用の装備を用意する事もできる。


「ハンティングアクションのゲームなら、落とし穴無双なんですけれど。トリモチなども含め、装備にするのは難しいのですよね」

「現場で落とし穴を掘るのも、他の冒険者への配慮から禁止されていますから。やろうとしなくていいですよ」


 できない、やってはいけないのが落とし穴や、スリップさせるための油を撒く事。

 事後処理が不十分で事故が起き、訴訟になったケースがあったので、国内でやらかす人はもういない。


 似たような物なら、悪臭を放つのも無しである。

 こちらも無差別に被害をもたらすので、使用の許可は出ないだろう。



「カプサイシンパウダーボムの準備をしておくのだよ」

「よろしくお願いします」


 その替わりに、メジャーな対策装備といえば、催涙スプレーの類だ。

 スタンロッドの性能テストなら、相手がカプサイシンにやられてのたうち回ろうが問題ない。


 人間と違い、モンスター相手ではカプサイシンを浴びせても短時間で回復され効かなくなる。

 それでもスタンロッドを使う時間は稼げるので、短時間でも効果があるならそれでいい。


 他にも投網ランチャーなどを用意してもらうつもりだ。

 こちらはパワータイプのモンスターに効きが悪いけど、投網経由で電気を流すとか、やり方次第で楽しくもなる。オーガなどに通用しなくても損はしないはずだ。



 これらの手配は、俺が肩慣らしをしている間に終わっているはず。


「さて。準備もしたし、行きますか」


 諸々の準備をした俺は、久しぶりに他所のダンジョンを目指すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ