表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/528

第二次遠征計画①

 ネット上の情報操作はよくわからないので、少し口を挟んだけど、あとは及川教授に任せる事にした。

 俺は俺のやるべき仕事として、パワードスーツのテストパイロットをしていく。



「このスタンロッド。生物相手なら、かなり強いですね。持続時間に難はありますけど」

「他のモンスターにどれだけ有効か、それが重要ですね。

 他のダンジョンに遠征でもしますか?」

「有用性を確認するためにも、遠征は必要でしょうが、候補の絞り込みが難しいですね」


 大型のパワードスーツであるバトルクロスは、その大きさゆえに拡張性がある。

 今回はバッテリーを増設して、電気で敵を痺れさせるスタンロッドをゴブリン相手に使ってみた。


 結果は上々。消費電力に目をつぶれば、使える武器であると思えた。短期決戦用ならば問題ないだろう。





 もっとも、こんな武器が必要なダンジョンはどこなのかという問題がつきまとう。

 スタンロッドの開発経緯は、「強い武器がほしい」「技術的に可能な武器だから」というのがスタートラインで、「こういったダンジョンで使える武器がほしい」ではないからだ。

 オーダーが曖昧な装備とは、こんなものである。



 装備の開発計画は、強い敵を想定して設計される。

 が、その「強い敵」というのが曲者で、ダンジョンにいるモンスターの多様性から、「これ」と決めるのが難しい。

 特定ダンジョンの、特定モンスターを選ぶ方が楽なのだ。


 しかし、武器を商品と考えると、ある程度の汎用性が求められる。特定のモンスターにしか通用しないようでは、売れ難いからだ。

 スタンロッドの場合、電気が通用しそうな「生物系モンスター」というカテゴリで開発をしている。

 生物系モンスターという括りなら、汎用性がかなり高い。


 さらに、汎用性の高い装備は、検証も大変だ。

 汎用性が高いと言っても、「どこからどこまで通用するのか」の目安を提示できないと、買ってもらえないからである。

 効くと思った。そんな考えで使われ、効かなかった場合は責められかねないのだ。

 アメリカの電子レンジで猫チン事件みたいな、そこまで酷い話は日本じゃないだろうけど、それでも性能調査で自己防衛はしたほうがいい。

 これまで販売された同種の装備を参考に、適当な事を言って、やっぱり駄目でしたは通用しないのである。



 商品開発の視点以外にも、遠征をしたい理由はある。


 俺自身、どこまで有効なのかを知っておきたかった。

 できる事の多寡は、そのまま選択肢の数に繋がるので、今の自分ができる事の範囲を知る事は大切だ。


 それと、ゴブリンや野犬、アンデッドの相手をしているばかりでは、感覚が狂うからだ。

 同じ相手ばかりではやる事がパターン化して、マンネリ化する。しかも相手が弱いとなれば尚更だ。

 たまには違う強めの敵と戦い、気持ちを新たにした方がいい。俺の錆落としにもなるからな。



 デメリット、人の目については今更だ。

 開発機を他所のダンジョンに持ち込む事で知られてしまう情報はあるけど、そこはやりようがある。


 それに、こんな事ができるのは今だけなのだ。

 今後は知名度の上昇によって注目されるようになり、動きにくくなる。

 そうなれば、小手先の情報隠ぺいなど通じなくなる。

 今のうちに動かないと、身動きが取れなくなってしまう焦りがあった。





「言い出した私が反対するのもどうかと思いますが、遠征で安全マージンを確保できるかどうかの方が大切ですよ」

「うむ! 一文字君が無事に帰ってる事よりも優先される事など無い!」

「ロボは壊れても直しますが、ポーションがあってもオーナーはそうもいきませんし。怪我一つないのが一番です」


 今回の遠征計画。

 みんなで話し合いを始めたときに、計画の意義やらなんやらより、まず先に安全について考えるようツッコミが入った。

 俺が、俺の安全をちゃんと考慮しているか心配になったらしい。


 いや、俺が生きて帰るのは大前提であり、いきなりスタンロッドが通用するか心配になるようなモンスターと戦う気は無かったんだけどな?



「でしたら、それをちゃんと言葉にしてください。言ってもらえなければ分かり合えない事なんてたくさんあるんですよ」

「安全は言葉にしておかないと、いざという時に忘れ去られるとも言うのだよ」

「オーナーも、普段はご自身が言っていた気もしますが?」


 細かい部分はこれから詰めていくので、その中で話し合えばいいと思っていました。

 そう言いたくもなるが、戦うモンスターがまだ決まっていないからと、最初の資料に安全面を記載していなかった俺に、反論の余地は無い。


 俺は素直に謝り、計画の見直しを約束するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ