表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/528

寄り道:労災対応

 勝手にパワードスーツを使われた事は失敗だが、ある意味ではちょうどいい教訓となった。


「新型ロボは強奪されるお約束。俺たちは、アニメが教えてくれた教訓に学ぶべきだったんだ」


 大事な事は、全部アニメが教えてくれた。

 そこまでは言わないけど、ロボアニメが様々な教訓を教えてくれるのは、本当の事だ。

 今回の事件も、アニメに学んでいれば、防げた事なのである。



「たとえ手間でも、ロッカーの解錠にはカードキーが2枚必要な方法に変更する。

 それと、パワードスーツに個人認証システムを導入する。開発者用の起動キーと着用者用の起動キーを別物にして、ああいった事件を起こせないようにするつもりだ」


 まず、開発中のロボとは敵に狙われ、奪われかねないものである事を正しく認識する。

 今回は内部犯で防ぎにくい相手だったのは確かだが、防犯のためのやり様などいくらでもある。

 いくつかのセーフティを導入する事で、機械的な対策を用いて事件が起こせないようにするのだ。


 他にもパイルバンカー用の炸薬の管理についてだとか、色々な物の管理について、細かく規定を作っていく。

 規定や手順を増やせば、何をするにも時間がかかり、開発の効率が落ちかねないが、安全と機密情報保護の方が優先だ。

 今回は運良く死者が出なかったが、パワードスーツのパイルバンカーは、使い方を誤れば人が死ぬ武器なのだ。その管理は徹底されるべきである。



 今回の事件は、人死にが出ていない小規模な被害で収まった事に感謝して、再発防止に努めておけば、そう悪い話でもない。

 最悪なのは、事件が起きずそのまま危険な状態が放置され、誰かが死んでしまうような事態だ。


 ハインリッヒの法則で言われるように、危険は小さな異常のうちに問題解決をする事こそ賢い対応だ。

 重大災害が起こってからでは遅いのであった。



 ……世間一般の感覚で言うと、今回の件は間違いなく重大災害なんだけどね!




 今回の事で割を食ったのは、俺だけではない。

 俺以外にも、余計な仕事を増やされた事で、物の管理が面倒くさくなった開発チームなどは被害者である。


「そういえば、あの馬鹿、クビだって」

「そりゃそうだろ。死な安じゃねーんだし。右肩がぶっ壊れたみたいだけど、自業自得だよな」

「へ? 俺、あいつはただの脱臼って聞いていたけど?」

「ん? そうか? 俺は肩がぶっ壊れたって聞いたけど」


 今回の事件は、社内に公開されている。

 問題を起こした奴を首にした事も含め、何も隠さずに周知徹底を行った。


 こういう事をすると、プライバシーの侵害と騒ぐ人もいる。

 しかしだ。公式発表が無ければ、人は勝手な憶測で情報を拡散するようにできている。そういった誤情報を防ぐためにも、公式発表は必要であった。


「けど、理由が笑えないよな。“パワードスーツでパイルバンカーを撃ってみたかった”だなんてさ」

「馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、筋金入りの馬鹿だったって事だよな。冒険者専用装備を、レベル0(非冒険者)が使えるわけないじゃん」


 それに、こういった情報を流さないと、余計な調査をする人間が出てくる。

 探られたところで俺の腹はそこまで痛まないが、会社的には面白くも無い事に繋がりかねず、対策せねばならなかったのだ。


 なにせ、苦労して調べた情報とは拡散したくなるものだからな。

 特に秘密だとかここだけの話というのは、誰かに喋らずにはいられなくて、どうやっても広まっていく。

 隠したい情報を覆い隠せる別の事件でもない限り、人の口に戸は立てられない。

 だからこちらが情報を出す事で、話の方向性をコントロールする方がマシであった。


 なお、この時流す話は、本当のことも教えるけど、ちょっとだけ違った事も流布して、都合の悪い話に目が向かないようにするのがポイントだ。

 多少の情報は流すけど、何から何まで教える必要はないのだ。同じ事でも言葉や視点を変える、自分の考えを足したりする事で、メイン情報の使いまわしをしている。

 隠しておきたい事のために、相手の好奇心を刺激するのに、情報の拡散はそこそこ効果があったようだった。



 現在、社内の雰囲気はそこまで悪くない。


「はぁ。ただでさえ事前の申請が必要とか、手間がかかるのに。アホのせいでどんどん手間が増える。

 勝手な事をしたあのアホは、それに見合った罰でも与えられればいいのにな」

「だよなー。今回のって、横領だっけ? 罰金だけとか、そこまで重い罰にはならないとか聞いたけど。マジなら許せねーよな」


 中には威勢のいい事を言っているのもいるけど、だいたいがその場限りの口先だけで、ちょっとしたジョークのような物だ。

 本気の言葉も混じっているだろうけど、何か悪い事をするわけでもない。過激な発言があっても聞き流しておけばいい。


 なにしろ、この開発チームなどは「被害者」であり、馬鹿が馬鹿な事をしたせいで実害を受けている。そしてその補填は一切受けられない。

 多少の侮蔑や過激発言の一つや二つぐらい、言わせておけばいいのだ。

 被害者なら加害者に何をしてもいいとか言わないけど、これぐらいで目くじら立てて正論を展開して論破するのは、よほど空気が読めない奴だけだろうよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 未来のパワードスーツは装着レベルを付ける事になりそうだ
[一言] 逆転の発想で普通の人用のパワードスーツの開発も考える企業が現れるかな(重労働のサポートと安全向上を目的とした機体や車椅子の替りになる義足型等)
[一言] 今回は身内の犯行で動機も馬鹿みたいなものだったけど ダンジョン攻略ロボットの元祖チームがずっと研究・制作してる戦闘用パワードスーツ及び専用武装なんて 統一した規格の武装を量産してその物量でモ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ