表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/528

新装備開発③

「回転させると飛距離が伸びるって思ってたんだけど」

「実際は回転にエネルギーを使う分、飛距離が落ちるわけですね。もっとも、“飛距離”は落ちても、“有効射程”は伸びるわけです。有効射程は、最大射程である飛距離とイコールではありませんので」


 ロケットなパンチを実用化すべく、ジャイロ効果を狙って、飛んでいく拳を高速回転させてみた。つまりブロークンなマグナムだ。


 結果、狙いを付けやすく、命中精度は向上したんだけど、最大飛距離はそこそこ減ってしまった。

 ジャイロ効果で射程が伸びると聞いていたので話が違うと思い聞いてみると、射程と飛距離は別物だと言われた。



「ジャイロ効果は直進させるための工夫なんですよ。だから、狙いを付けられる“有効射程”は伸びます。

 しかし、その直進させるための力を得るために、どうしても回転時に発生する空気抵抗で、最大飛距離が落ちる物なんですよ。特にパンチは形状が形状なので……発生する空気抵抗も、より大きなものになってしまいますから、この結果は必定なのですよ」


 付け加えると、弾丸よりも重いパンチは必要とされる回転数も上がってしまうので、パンチは回転数が足りていないというオチも付く。

 全く効果が無いとまでは言わないが、銃弾ほどジャイロ効果は見込めないのだという。



「ですが、それを実践で実感できたのは嬉しいですね。ええ、これらのデータは無駄ではありませんよ」


 及川教授や研究生たちは、こうなると分かっていて色々と実験をしていたようだ。

 無理や不可能を机上の数式ではなく、実験データで証明できてホクホクした笑顔を見せている。


「ここから、不可能を可能にするから楽しいんですよ。できると分かりきった事をやっても意味がありません。できない事をできるようにして魅せて(・・・)こそ、研究者なんですから」


 ここから「どうすれば良いか?」と悩むのが楽しいのだと、及川教授は言う。

 楽しそうで何よりだけど。予算もそこまで出していないけど。


 ……いや、もう何も言うまい。本当に実用性のあるものを作れるかは疑問だけど、挑む事そのものは悪い事じゃないんだから。





「○ノフスキー粒子が欲しいです……っ、先生!!」

「無茶を言わないでください。普通にドローンを使えば良いではありませんか」

「ドローンでは、敵の的になるだけではありませんか! 速度が足りんのです、速度がっ! 偉い人には分からんのですか!?」


 別の開発チームは、及川教授に無茶ぶりをしていると言うか、寸劇をしている。


 彼らが作りたがっているのは、多重展開可能な遠距離子機。小片(ビット)漏斗(ファンネル)竜騎兵(ドラグーン)と称される、アレだ。

 素直にドローンを使えよってみんな思っているんだけど、それが嫌なんですと、なんか高機動型の物を作ろうとしている。


 なお、ビーム兵器など存在しないし、銃を装備する事もできないし、武装はどうするんだと思ってしまうのだが、そこはスルーされている。

 彼らはまず、高機動型浮遊ユニットを作りたいらしい。


「ロボットの空間知覚能力ならば、レドームを使えば、火器管制システムと合わせるだけで実践レベルの制御はすでに可能なんですよ! 男なら、ここは挑まなければ如何のですよ!」

「宇宙で戦ってこい。いや、先にコロニーとか軌道エレベータか。地上でやろうと思うなよ」


 どうでもい話だが、アレが地上で機能しているのはアニメ・ゲーム的な演出であり、本来はその世界の独自設定(ミノフスキー粒○)に助けられての事だ。本来は宇宙空間で使用する武器である。初期設定だけ見れば地上用の武器ではない。



 ドローンも結構素早く動くし、トロくもないんだけど。それでも彼らは「スピードを甘く見るな!!」的な、鋭角的な空中機動を実現したいのだという。


「推進剤を使った超機動は可能なんですね。あとは姿勢制御システムを……」

「ちょい、待った。その推進剤、どれぐらい搭載する? で、どれだけ超機動をするために消費する? それは、コストに見合った働きが出来るのかな?」

「それは、その……」

「まずは、武装を考えようか。そういった機動が必要になる、そんな武装だと良いよね」


 実現までの道筋は存在するので、妄想兵器ではないんだけどね。

 ただ、もう一歩分、考えてもらわないと、ゴーサインは出せない。



 ロマン兵器の開発そのものを否定するつもりはないよ。

 でも、ロマンだけで計画を立てないで、実用性にも目を向けてもらわないと。


 ロケットなパンチはワイヤーを張るとか、遠くの物を掴むとか、ちょっとは利用方法を考えているからゴーサインを出した(やってよし)だけど、超機動浮遊ユニットを作っても、俺にプレゼンできる使い道が無いなら机上の空論で終わらせるよ?


 俺は偉い人だからね。技術者の言葉が分からんのですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ファンネルミサイルなら・・・ やって見せろよ、マ〇ティー! まあぶっちゃけ、使い捨てはコストが
[一言] 多重展開可能な遠距離子機。小片ビット、漏斗ファンネル、竜騎兵ドラグーン みごとにガンダム関係の兵器ですな それにしても、モビルスーツとかアーマードコアとかナイトメアとかレイバーとかアームスレ…
[一言] ワイヤーで無駄に遠くに飛ばさず フレームで伸ばす抜き手方式にすれば足元のドロップ品回収にも便利なのでは? グリフォンとか零式みたいなアレね 地面に手をついてゴリラスタイルの移動補助とか 腰…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ