新装備開発②
超電磁砲。
この言葉に惹かれる奴は多いけど、戦闘用ロボットに積むとなると、ほぼ「使えない」事が分かった。
レールガンの開発そのものは、実験場の安全を考慮することなど、いくつもの条件を満たせば出来るという事で、実際に開発しようとするとどうなるか、試算させてみた。
「使えないからこそ、使えるように研究するんじゃないですか!」
「無茶を言うな。何百億、予算がいると思ってる」
レールガンの大きさ、消費電力、必要素材などなど。山積みされた問題は富士山か、チョモランマか。実現できる可能性が全く見えないというのが現実であった。
自衛隊に配備されているレールガンの動画が公開されているけど、ミサイルや戦闘機を落とす目的で作られたそれは、砲身6m、重量8tだ。
対モンスター戦闘にそこまでの威力は必要ないので、ダウンサイジングと出力適正化をすれば使えるようになるかもしれない。そう思ったんだろうけど。
「一番の問題は、電力消費量なんだよ……」
どうやっても、戦闘用に最低限の威力を確保しようとすれば、途轍もない電力が要るんだ。
連射するには、何発も撃とうと思えば、それだけ大容量のバッテリーを持っていかないといけない。
連射すると砲身が過熱してとか、そういう問題も指摘されているけど、今の俺たちはそこにすら辿り着けない。
「レベルアップをどれだけ重ねれば、実用可能なレールガンが作れると思いますか? そういう話なんですよね。それでは確かに難しい。新しいバッテリーを開発する事から始めないといけませんね」
「今のバッテリーだって、当時の最新でかなり凄いって聞いたんですけどね?」
「ははは。それでも、いま、最新と言われるものには劣りますよ。たとえレベルアップを重ねていても、ですね。相手もレベルアップをするのなら、基本性能の差は如何ともし難いようです。
いやはや。問題は、その最新のバッテリーですら、要求スペックに足りていない事なんですけれど」
「つまり?」
「本気で取り組むなら、システムすべてを自社で賄うと考えるなら、人員を10倍にしたうえで開発期間は10年で足りるかどうか。20年と言っても不思議ではありませんね。そして開発費用は少なく見積もって1000億円といったところでしょうか」
「……無茶苦茶だ」
及川教授が出した数字は、国が研究開発に費やしたコストをベースにしている。それなりに信ぴょう性がある。
有り体に言って、手が出せない。
俺は小金持ちやお金持ちと言われる人間だと思うけど、1000億円とか、出せる訳がない。
個人でやろうとせず、ファンドなどで資金を集めようと、まだ足りないだろう。
愉快な仲間達を探し、開発にこぎつけるまでに息が切れるわ。
そんな訳で、レールガンの開発は計画の段階でとん挫するのだった。
その代わりと言っては何だが、彼らがやってみたいというロマン兵器に手を出させてみた。
初期段階なら開発コストのかからない、そんな装備である。
「うーん。慣れれば、使えなくもないのか?」
「遠方にワイヤーを張るのに使えるかと思っていたのだけれど、これは難しそうだね!」
「現段階では、まったく使えませんね。射程距離が短く、精度が悪いとなれば、もう。ドローンを使うなど、別の手段を考えた方が良さそうです」
リビングコートの右腕部分。射出されたそれは、狙った的に向かってまっすぐ飛ばすことができず、明後日の方に向かって飛んでいった。
飛んでいった右腕に固定されているワイヤーを巻き上げて腕を回収しようとするが、腕を引っ張ってみれば地面を擦りながら戻っていくし、地面のデコボコで跳ね回る、障害物に引っ掛かって巻き取りできなくなるとスムーズに回収できない。
腕を飛ばすのには炸薬が必要であるし、コストと威力のつり合いが取れていない。
ナデシ〇式にすれば多少は使えるだろうと思っていたけど、投げた方がマシじゃないかと思えるレベル。前途は多難であった。
ぶっちゃけてしまえば、某スーパーなロボットたちが好んで使う超有名装備は、実用性皆無のロマン装備であった。
「涙でパンを食べたものにしか、人生の味は分からない」と言うように、現実はいつもしょっぱいのだ。
実際、開発スタッフは泣いているからね。
ぜひ、人生の味を噛みしめて欲しいものだ。




