表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/528

リビングコート②

 ドロップアイテムがパーツ単位なので、鎧の元の部位ごとに、対応したパーツを作る。

 兜なら頭を、胸部装甲であれば胸の部分を作るし、脚甲であれば脚を作る。そうやってパーツを対応させるのは手間だけど、その手間をかけたかどうかで成功率が変わりそうなので、手は抜けない。

 まぁ、手間と言っても、その後の話の方がよっぽど手間で面倒くさいんだけど。


「すみません。これはアウトです」

「了解。作り直すよ」


 俺はパーツの加工のうち、装甲部分の加工を担当しているんだけど、結構な頻度でリテイクがかかる。

 それもこれも、手作業で機械部品を作っているからだ。

 厚みについては誤差1mmの精度で論外。0.1mmでも微妙な顔をされてアウト。0.09でいいから誤差の桁をもう一つ落として、ようやく合格となる。


 成型には型を使っているが、それでも意外と駄目な規格外品ができあがるのだ。

 そこをどうにかするために、やや大きめに作ってから自動機械の研磨でごまかすという手段もあるのでそういう作り方もしているけど、それとは別に完全手作業バージョンも作っている。

 勘ではあるけど、ここで手間をかけた方が良い物ができそうな気がするんだよね。魔法的に。



 ハンマーとヤスリ片手に頑張った。

 削りが足りないと言われた後に削り過ぎで再製作を何度も言い渡され、仕上げの表面処理に手間取りながらも、俺は折れなかった。


 手作業で全パーツの装甲を作るだけに、おおよそ2ヶ月。

 機械で削り出しをした装甲で作られたオプションコートが3回もレベルアップするほど完成を待たせてしまっていた。





 そうやってパーツを作り上げると、あとは鴻上さんのところで組み立ててあった中身(・・)へ皮膚のように貼り付けられる。

 完成は俺の装甲の納品待ちだったため、装甲を納品し終えた時は本当にホッとしたよ。


 これは工場で働くみんなを見てない人には分かりにくい感覚だけど、未完成品が作業スペースの一角を占拠しているというのは、やっぱり面白くないんだ。

 かと言って俺を急かしたところで良い結果につながらないのは分かっているため、何も言えない。言えないけど、無言のプレッシャーをかけてくる。

 納期不定でパーツ待ちというのは、工場勤務をしている人にとって渋面を作らせる状態なんだよ。


「こちらも、まとめて作った方が効率が良いと判断したわけで。ええ、何も言えないんですけどね」


 一応、削り出しに比べて手作業の装甲作成に時間がかかるのは予想できた事だ。

 それでも削り出しバージョンと並行して組み上げた方が全体の作業時間短縮になるからと、そういう作業計画を立てたのは鴻上さんな訳で。この件に関して恨みがましい目を向けられたのは、鴻上さん。


「上手くいったら、宴会でもやろうか」

「いいですね。何処で何を食べましょうか」

「気軽に、焼肉屋にでもしましょうか。『焼肉牛山苑』でいいですかね?」

「わーい!」


 ただ、そんな目を向けられなくても、場の空気が悪ければ俺も居心地が悪い。

 諦めるしかないんだよね。言ってどうにかなる問題でもないから。

 精々、景気のいい話でごまかすぐらいだ。


 地元で有名な、ちょっとお高いお肉を出す焼肉屋の名前を出して場を盛り上げる。

 焼肉屋を選ぶのはハズレが無いから。この職場に肉が嫌いだったりヴィーガンやってる奴はいないので、宴会をやるにはちょうど良い。

 タダで旨いものが食えるとなれば、多少の不都合には目が向かなくなるのだ。



「あ、参加は自由で、家族も呼んでいいからね」

「うーっす! ゴチになります!」


 なお、宴会などに参加を強制すると、雰囲気はかなり悪化する。

 こういったイベントには参加したくない人っていうのは絶対に出てくるので、嫌がられるなら呼ばないほうがマシなのだ。

 俺には共感できない話だが、参加費がタダだろうが、ウマい物を出されようが、宴会に出るくらいなら、家でカップ麺でも食べていたいと彼らは言い切るのである。

 無理を通して呼べば、パワハラ認定待ったなしだ。 


 そういった人に配慮して、誰が参加するかは聞かず、人数だけカウントする。

 誰が来ないとか、だいたいいつも同じなのでみんな知ってるけど、配慮しないとね。

 「当日になればバレるんだから」と手を抜くと、ロクな事にならないからな。何年も付き合いがあれば、それぐらいわかるよ。


 俺だって金を払ってまで雰囲気を悪くしたくないから、少しばかり気を遣うぐらいはするんだ。



 そこまでしても、宴会に行かないだろう、職場に一緒に卓を囲みたくない人がいる奴から恨みがましい目を向けられるが、そこはフォローの対象外。

 日程が合わないとか事情がある人を除き、自分で行かないと決めたのなら、そのデメリットは自分の責任だと思います。

 特に、これは会社のイベントではなく、俺個人の呼びかけなんだからさ。行かない人に何かを配るような理由は無いんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ