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四宮教授の別案

 アンデッドダンジョンの攻略だけど、意外と素早く動き始める事になった。


「自我持ちタイタンに新型タイタンを指揮させる! こういった経験を早めに積ませておくと、後々に動きやすくなるのだよ!」


 攻略を進めるかどうかは別にして、一回の魔石稼ぎに投入するタイタンを増やす、その指揮官に自我持ちタイタンを起用する。その程度であれば現状の体制でも無理なくこなせるので、今のうちに仕込みをやっておこうと動き出したのだ。


 工場勤務の人たちで例えるなら、普段定時退社で終わる所を2時間ほど残業させる程度の負担増である。

 稼ぎたい人なら有り難く、早く帰りたい人には迷惑そうな顔をされるラインである。

 これが4時間残業などと言うと、ほとんどの従業員からクレームが来るので、そうならないように仕事の分散が大事であるが、製造業はあまり工程に融通が利かないので大きな休みの前後はだいたい文句を言われながら仕事をする羽目になる。


 残業の指示を出す鴻上社長、ご苦労様です。

 タイタンは仕事が増えても文句を言わないので、俺はその苦労をしないのですが。

 俺だけ楽をさせてもらってすみませんね。





 当たり前の話だけど、タイタン3体で得られる魔石の量を100とした場合、タイタン6体を投入する事で200にできるかと聞かれれば、否と答える。


 少し考えれば分かる事だけど、タイタンは今、一番効率よく戦える場所で敵を殲滅しつつ魔石を稼いでいるので、100の魔石を入手出来ているのだ。

 次の3体はそこよりも効率が落ちる場所で戦う事になるし、先に戦っていた者たちよりも練度の点で劣るので、稼ぎが100に届かないのが普通なのだ。精々、序盤で50いけばいい方ではないだろうか。慣れてこようが、70を超える事は無いと思う。


 それに、敵の分布の問題もある。

 コンビニがひしめき合って客を奪い合うように、ダンジョンという閉鎖空間の中で戦線を広げた(店舗を増やした)場合、一つ一つの陣地(コンビニ)に回されるモンスター()が分散され、全体の回転率が落ちる事も考えられる。

 安全性を考えるのであればそれは良い事なんだけど、魔石という名の収入を考えるとあまり喜べる話ではない。そもそも、安全性というなら陣地を構築している段階で確保されているのだから、単純にどうにかしたいと頭を抱えていい話である。


 タイタンを動かすのだってタダではないのだ。

 生産コストもそうだが、運用コストだって無視できない。

 今は大幅な黒字だけど、無駄にタイタンを投入して稼ぎが悪くなれば、赤字転落も考えられた。



「一時的なデメリットを受け入れてでも、ここで前に進まねば発展性がないのだよ!

 発展しない事業をそのままにしておけば、いずれ足を引っ張る存在になりかねないというのが、企業運営における常識であるかな!」


 四宮教授は、今後を見据えるなら、アンデッドダンジョンの調査をした方が得だと判断している。

 どの程度が稼げる上限なのかを見極め、それに沿った計画を立てていこうと提案する。

 ついでに攻略とは別で奥へ進んで、より稼げるポイントはないか確認していこうと話す。



「これは一文字君の計画とは違うのだよ。しかし、そこで得られた情報は一文字君の役に立つと思うので、うまく活用して欲しいね」


 俺の掲げるダンジョン攻略とは違い、四宮教授の提案は今よりも奥に進むものの、少し前に出る程度。

 それでも得られる情報が増えれば、ダンジョンの奥を目指す計画の役には立つ。モンスターの分布が変わるかどうかだとか、地形の変化だとか。得られた情報を活用できるかどうかは俺にかかっている。


 ダンジョンの奥を目指すというのであれば、いきなり奥に行くのではなく、一歩一歩、慌てずに前へと進むべきだと、言外にそう言われた気がした。

 そして、ゆっくりとした拡大であればすぐにできる事もある。急がば回れと、焦らない方が早い事もあるのだ。


 何かやりたい事があるなら、地盤固めをしっかりするように。今回だけ私がお膳立てをするよと、四宮教授はそう言っている。



 四宮教授は確実に俺に対する気遣いでこんな計画を立てていて、それがありがたくもあり、申し訳なくもある。

 俺にできる事は、得られた情報からより具体的かつ採算のとれる計画を立てる事であり、そこで成功を収める事であった。


 先達に手を引いてもらった分、後進は少しでも前に追いつき、肩を並べられるようにならないといけない。それが恩返しにもなるだろう。

 今は目の前の計画に集中して、ダンジョンの調査を進めていこう。

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