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一年後①

 あれから一年。

 世界を見回しても大きなイノベーションと言える発見はなく、とても静かに時が過ぎた。



 イギリスの方で始まったダンジョン造船が成功しただとか、アメリカでダンジョンを舞台としたロボット格闘技ゲームが人気だとか、ロシアの一部でダンジョンが制御不能になっただとか、イベントと言える出来事はあったものの、こちらに大きな影響を与える話は無いままだ。


 こちらは進展が見込めない話なのだが、日本で始まった、「自我のあるロボットに人権を与えるかどうか」という議論が泥沼となっている。


「ですから! 彼らに自我がある以上、幸福追求権はあると見るのが正しい!」

「それは性急すぎる! まずは動物愛護の議論から派生させて、お互いの距離を間違わないよう、徐々に変革をしていくべきだ!」

「急な変化は社会に与える影響が大きすぎる。ここは本人たちともっと話をして、実のある話し合いをするべきではありませんか?」


 現在、自我持ちロボットはその数を順調に増やしている。

 自我は認められたものの、昔と同じ仕事をこなす事を好む彼らの精神性は、人間と随分異なる。

 それでも個性はあるので、数が増えていくことで相互理解に時間がかかっていた。


 おかげでロボットの人権に関する議論は水掛け論に終始して、まだまだ準備が足りていない。

 暫定の枠組みこそ発表されたが、法的には、未だに自我持ちロボットの扱いは「備品」なのであった。





 社会に大きな変化はないが、小さい変化が見られつつある。

 それは、各種産業にロボット労働者が投入された事だ。


「冒険者に限らず、ロボットの需要が急上昇してますよね。やっぱり、大量生産が鍵だったんでしょうか」

「そうですね。多くの企業が参戦して競い合う環境が整った事で、大幅なコストダウンが行われました。

 この分なら、5年以内に単純労働の大半はロボットに取って代わるでしょうね」


 ダンジョンで戦闘が可能なレベルのロボットたちが量産されるようになった。

 しかし市場が飽和すれば売れ残りが発生して在庫が倉庫を無駄に圧迫する。


 そこでロボット企業が目を付けたのは、コンビニなどへのレンタル業だった。

 レジなど、ごく簡単な作業をロボットに任せる事を提案したのだ。


 販売となれば、高額で手が出せない薄利のコンビニばかりである。

 そこで購入ではなくレンタルだからとコストを抑えることにより、コンビニが手を出しやすくして、ロボットを倉庫で余らせない方針を打ち出した。


 売れないロボットを倉庫の場所を占拠する不良在庫ではなく、少額でも稼ぎのある労働者にする事で、ロボット企業は赤字を最小限に留める事に成功した。


 ただ、「ロボットのいるコンビニ」というインパクトは、初期だけだが客の入に大きな影響を与えた。

 それによりコンビニ、スーパーで廉価版のロボットを購入する流れができて、人手不足の解消に役立てられるようになった。

 自我無しではあるが、ロボットに市民権が生まれそうな勢いがある。


 もともとコンビニは機械化や自動化が進んでいたので、これもその一環。些細な変化だよ。



「もっとファジーな命令に対応しなければならないが、難しいね!

 むしろ、一つ一つのロボットができる事をもっと制限してもいい、限定的な仕事で完結する店舗管理システムを構築する方が簡単なのだよ!」


 なお、四宮教授は自宅に戻った。

 今では人とロボットが混在する中で、いかにロボットを活かすか、それに求められる人工知能の構築で忙しくしている。


 おかげで、ダンジョン前で生活しているのは俺一人となってしまった。

 俺としては、ロボットの社会進出よりもこっちの方が比重が大きい出来事だよ。





「リンクシステム、異常。システム・ダウンします」


 そして、ロボット開発はマイナーチェンジを繰り返しながら順調に進んでいるが、ロボット用パワードスーツの開発は目処が立たなくなっていた。


「またバグか?」

「ここで原因不明のエラーが発生しています。フィードバック値が異常値を出していますね」

「んー? ちなみに、これを無視して強制出力すると、どうなる?」

「リトルレディの腕が折れます」

「そりゃ、駄目だな」


 機械的な構造に問題はないんだけど、レベルアップ時のステータス変化が悪影響を及ぼして、性能が安定しなくなっていたのだ。

 レベルアップで強くなるのはいいんだけど、中身とパワードスーツのバランスが取れていないので、何度調整しても、すぐにエラーを起こす。


 他にも細かい問題が山積みで、チマチマとその山を崩しているところだ。



「これ、人間が使うとなると……」

「止めてください。死んでしまいます」


 今のパワードスーツは人間の動きに対応したものではないが、いずれは俺の動きに追従できるものを作る予定だ。

 そして予定は未定であり決定ではないため、何も話が進まない。

 まずはロボット用パワードスーツを完成させたいのだが……。



「せめて、ガワだけでも作るか」


 現状、見た目がロボットっぽいフルプレートアーマーが出来ただけである。

 人力で動かすため、パワードスーツとは言えない。

 これが今の俺にできる、精一杯だった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 私も前話の最期で2年が過ぎたで終わってたのに 次の話で1年後ってなってて???ってなってますw
[気になる点] 前話で2年過ぎた、と書かれていたので 今回からその間の事を書くのですか? それとも前話の2年じゃなくて1年の間違いですか?
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