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野犬退治③

 新しいダンジョンがどこかにある。

 しかも、モンスターが湧き出している未発見ダンジョンだ。


 ダンジョンが現れる事自体は年に数十回ある、よくある話だ。

 ただ、今のご時世でモンスターが湧き出すまで見つからないというのは意外と珍しい。

 ダンジョンが現れ始めた当初こそ暴走(スタンピード)を許していたが、今は遠方でもダンジョン発生を検出する事が可能になっているので、暴走前に発見、制圧が可能になっている。



「――はい、はい。そうです。では、捜査をよろしくお願いします」

「うーん。しかしですね、こちらのダンジョンレーダーにはなんの反応もありません。失礼ですけど、本当にダンジョンのモンスターがいたというなら、カメラの画像なりなんなり、証拠を出していただかないと。こちらとしても、動けないんですよね」


 ダンジョンが発見されたかもしれない。

 一般市民、冒険者資格を持っている者の義務としてそのことを警察に報告をした。


 だが、そんな俺の言葉は軽く見られ、綺麗に流された。

 そんな暴走中の未発見ダンジョン、有るはずがない。それが警察の言い分である。

 そんな事が有るはずないと、常識が邪魔をして俺の言葉を信用してくれない。



「うーむ、そうだね。では、テレビ局に情報を流そう。あとはSNSで情報を拡散しておけば、何か起きても我々が責められずに済むのではないかな」

「そうですね。通報したという証拠だけでも拡散しておきましょう」


 警察が動いてくれないだろうと考えた俺たちは、警察に期待する事を止めて自己防衛をすることにした。

 俺たちはちゃんと対応したのだと、早い段階で公共の電波とネット上に証拠を拡散し、何かあっても責任は警察にあると言える状況を作る。

 そうしないと、民間人に被害が出た時に「俺たちの通報の仕方が不味かったのではないか?」と責任問題になってしまう。この場合、未発見だからダンジョンが俺の土地の中にあろうが法的責任は発生しないのだが、第一発見者として道義的責任があると見なされかねないからだ。

 うるさいことを言われたくなければ、手間でも打てる手を打っておいた方が良い。



 テレビ局のプロデューサーさんは、すぐには動けないと言っていたが、助けてくれる気はあるようだった。


「それだけで番組は作れないから。すぐには動いてあげられないかなぁ。ただ、一文字君たちのところで何かあった時、その時は上手くフォローしてあげるよ。

 こっちとしても、民間人を叩くより警察を叩く方が数字が取れるからね。警察にも話を聞くけどさぁ、今のうちに一文字君からもちょっと話を聞かせてちょうだいよ」


 もちろん、ただで助けてくれるわけではない。


「その代わりと言ってはなんだけど、ちょっとバラエティ番組に出てみない? テコ入れしたい番組があってね」


 こうして俺は、いざという時の保険を用意し。





「ネットの反応は真っ二つだね!

 今更未発見ダンジョンなんて現れないという意見、ダンジョンは未だに解明されていないことが多いんだからあり得るかもしれないという意見。今のところ、前者がやや有利だよ!」


 それと並行してネット上での情報戦も行う。

 テレビ関連の仕事で知り合ったインフルエンサー(情報発信者)にもお願いして、情報の拡散を依頼した。

 「そういう事があるかもしれないから、気をつけよう」と、それだけ言ってもらうのだ。

 これには何人かは「面白そう!!」とネタに食いつき、こちらが思う以上の投稿をしてくれた。



 ただ、インフルエンサーの発言であっても、全ての人が受け入れてくれるとは限らない。

 こちらが出した情報に証拠がないと言うことで、楽観論で否定する奴だけでなく、反論したいだけの人間が多く食いついた。証拠がない話なので、有名人を言い負かしたい、反論すれば勝てると思った奴が意外と居たのだ。

 そのため、彼ら(インフルエンサー)のSNSは一部、荒れ始めている。


「人のSNSを荒らしている連中、捕まえてやりたいな」

「最低限、論争のてい(・・)を取っているから難しいね。彼らは荒し慣れている、と言うことだよ。下手は打たないだろうね」


 協力してくれた彼らには申し訳ないと思う気持ちがあるので、スパチャ、投げ銭で支援しておこう。

 金を払うことを下品だとか言う奴もいるだろうが、今の俺にはこれぐらいしかできないからな。何もしないよりは良いだろう。


 ……あとで「俺が金を握らせて誤情報を拡散させようとした」なんて言われるかもしれないが。

 そうなるかもしれないと分かっていても、偽善でもやらずにはいられなかった。





 最後にやっておく事は、ダンジョンの捜索。

 せめて自分の土地の中だけでも調べておかないと、安心できない。


「支倉さんにも連絡しておこう。近所付き合いは大切だからな」

「ならば、支倉氏の土地も探索しておいた方が良いだろうね。あちらも、こんな話を聞かされれば不安になるだろうからね!」

「そうですね。それぐらいは……とは言えませんよ。あの人、まだまだたくさんの山を持っているから。無償で手助けできる範囲を超えています」

「そこは要交渉という事にしておきたまえ。言われるまで何もしないというのと、こちらから切り出すのとでは相手に与える印象が違うのだからね!」


 まずは自分の山の安全確保と思っていたけど、四宮教授に言われて、そのあとには支倉さんのところも調べる段取りとなった。


 かなり時間がかかるなぁ。しばらくは身動きできないかもしれない。

 はぁ、気が重い。

 俺は土地管理の自営業みたいな物だから、休みも何も有ったものじゃないな。

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