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野犬退治②

 野犬たちは、水の無い山道をさまよっていた。


 運が良ければ、野犬どもは乾いてそのまま自滅する。

 運が悪ければ、野犬は脱水症状で理性をなくし、凶暴化した状態でこちらに襲いかかってくる。

 ネタを言うなら、山に入り込んでいるだろう猪が野犬と遭遇し、殺し合う事だろう。


 自滅などであれば、その後の確認の手間はかかるけど「被害もなく終わって良かったね」で済む。

 凶暴化されれば厄介だ。ただの野犬に後れを取るほど俺は弱くないけど、俺以外の誰かは野犬の集団に襲われたら危険だ。

 鶏を襲われた恨みを抜きにしても、やっぱり野犬はここで殲滅しておきたい。



 犬を殺すな? 動物愛護?

 知らない子ですね。俺は、俺の身の回りの安全が第一だよ。

 意味も無く動物を殺す気は無いけど、危険だと思えば躊躇はしないのが普通だと思う。





 監視カメラを使い、リアルタイムで野犬の姿を探しているけど、一度見失ってしまったので、どうにも見つかってくれはしない。

 そうこうする間に夜が来て、カメラの画像では野犬を見つけ難くなる。

 監視カメラだから赤外線タイプの暗視モードもあるけど、暗闇の中にいる動物を見つけるのは困難なのだ。



 肉眼で見ているならともかく、こればかりは魔力持ちの冒険者であってもどうにもならない。

 暗視系の魔法が使えても、カメラの画像には効果が無いのである。


 こんな時に活躍するのが、四宮教授の画像処理フィルターなんだけど。それも、相手が映ってくれなければ意味が無いわけで。


「野犬を見つけるソフトは、すぐに用意できるものではないのが痛い」


 人の侵入を防ぐ、検知するためのソフトはあっても、それを野犬に対応させるのには手間がかかる。

 急造のソフトでは精度に難があるし、むしろ余計な仕事を作りかねないので、今回のバックアップは暗さに対応させるフィルターだけである。

 だから自分でカメラ画像と睨めっこをして、野犬を探し続ける。



 そしてもう一つ。

 野犬をおびき出すための、鶏の羽毛で作った囮のドローンを動かしておく。

 鶏の為に用意した水や餌も、連中を呼び込む効果があるだろう。


 これは相手が水の気配を探れるかどうかにもよるんだけどな。やらないよりはマシだと思う。



 この日は深夜の2時まで頑張っていたけど、野犬の姿は見られず、空振りに終わった。

 もしかしたらここから離れていったのかもしれない。

 失意の俺は囮に使ったドローンと水、餌を回収し、この日は寝る事にした。





 そして翌朝。


「なんじゃこりゃ」


 家の前で光織たちが野犬の死骸を積み上げているのを見て、俺は目を見開いた。


「光織、六花、晴海。これは、お前たちがやってくれたのか?」


 驚きはしたが、そういえば以前、光織たちは俺のために山狩りをして猪を捕ってきてくれたのを思い出し、すぐに納得した。

 だから確認のために聞いてみると、光織たちは首を縦に振り、肯定する。

 やはり、予想通りで合っていたようだ。



 そこで話が終われば良かったのだが、光織たちは野犬の死体だけでなく、ビー玉のような物を俺に手渡した。

 ダンジョンでモンスターを倒した時に得られる、トレジャーボックスだった。


「ちょ!? ま、待ってくれ。これは、アレか。野犬と一緒に、モンスターもいたって言うのか?」


 今度こそ驚きを隠せなくなった俺は、再度、光織に確認をする。

 答えは、またも肯定。光織たちは首を縦に振った。


 なお、トレジャーボックスだから出てきたドロップアイテムは質の良い魔石で、どんなモンスターだったかは分からないけど、厄介そうというのだけは間違いなかった。





 光織たちが、ここらでは見ないモンスターと戦ったようである。

 このあたりのダンジョンは調べてあるが、野犬を率いるようなモンスターがいるという話は聞いていない。

 そもそも、ダンジョンの外にモンスターが湧いている事自体が問題だ。


「未発見ダンジョン……」


 考えられるのは、見つかっていないダンジョンがどこかこの近辺にあり、モンスターを吐き出しているという事。

 下手をすれば、俺の所有する山のどこかという事もあり得る。


「マジですか」


 これはさすがに予想外だ。

 近場にダンジョンが並ぶというのは珍しい話ではあるが、全く無い話でもない。

 ただ、本当に珍しいので、考えた事もなかった。


 元地主である支倉さんだって、もちろんこれは知らない話だろう。

 ダンジョンからモンスターがあふれ出すスタンピードは近隣住人みんなにとって危険であり、隠しておく事などできない災害だからだ。そして隠していたなら、それは立派な犯罪である。

 何か知っていれば、間違いなく俺に話を通したはずだ。



 とにかく、予想外ではあるが、すぐに関係各所に連絡するべきだろう。

 俺は最初に警察と四宮教授に一報を入れると、他にもモンスターがいないか、俺の所有地内だけでも探索するため、山歩きの準備を始めるのだった。

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