国ごとの話
ロボット界隈で、同族っていう線引きはどうやって行われるのだろう?
光織たちは、新しく自我を得たであろうロボットたちを同族とは認識しなかった。
むしろ、なんで彼らが自分たちと同じ存在だと思うのか、不思議そうにしていた。
落ち着いて考えてみれば、光織たちと彼らは違う事の方が多い。
同じ人型という括りではあるが、運動性能が段違い。彼らは人のようには動けない。
会話機能が付いている。人間との会話を楽しむ事も可能だ。
そして何より、人型ロボット研究の基礎研究を形にした某有名ロボットや、飲食店で接客業に使われていた案内ロボットと、その先の技術で作られた光織たちでは進化の段階が違いすぎる。
これらを「ロボット」だからとひとまとめにするのは、人とネズミを「哺乳類だから」と一緒にするとか、人間と魚を「炭素系生命体」と括るような暴論だった訳だ。
光織たちの表情は窺えない。表情なんて用意されていないからね。俺の発言に呆れていても、俺には分からない。
変な話を振った事で、光織たちが機嫌を悪くしていないか、ちょっと心配になった。
こういった話は、一つの切っ掛けがあると、他の話にどんどん連鎖していく。
ニュースは他国のダンジョン事情、ロボット開発関連の話題がいくつも取り沙汰されていた。
ご近所の台湾でもダンジョン攻略にロボットを活用していくため、全てのダンジョンを国が管理し、ダンジョン関連事業を国家戦略として扱うなど、小国ならではの立ち回りの軽やかさを活かした動きを見せている。
アメリカでは相変わらず民間がダンジョン管理の主流だが、大企業による管理は国のそれと大差ない。日本や他国に負けられないとばかりに面子を重んじた無茶をして、かなりの怪我人を量産しているという。ただ、その怪我人の数に見合った分の成功者も輩出している。
ヨーロッパではEUがロボット関連のレギュレーションを作ろうとしていくつかの国の反発を受けただの、元EUのイギリスではダンジョン内にようやく造船所が出来上がったので戦艦の建造が始まっているとか、愉快な話も取り上げられていた。
なお、不思議な事に、どこかの国の自我持ちロボットには中の人が居ただとか、そんな話もあったのだが、それは綺麗にスルーされた。
見栄で吐いた嘘の話題なんてどうでもいいから、どの番組も取り上げたくなかったんだろうな。視聴率にならないから。仕方がないね。
「一部分野で日本が大きく躍進したという話が出ているけど……出遅れ感が凄いですね。あまり大きく取り上げられてはいないけれど、このままでは取り残される事になるかもしれないな」
「国にリーダーシップが無いのだから、仕方がないのだよ」
「諸外国は、国が主導する形で動いていますからね。日本のように、自主性に任せる風を装った放置とは違いますよ。このままでは、日本は後進国になってしまいますね」
そうやって日本以外の国の動きを見ると、日本が大きく遅れている事実が浮き彫りになっていく。
海外の国々は、国が方針を打ち出し、民間を巻き込みつつ動く。
日本は国が方針を打ち出す事をせず、優秀な民間企業が独自に動いて結果を出す。
国の主導で動く外国と企業単位で動く外国では動きのスピードや規模が違うため、外から見ていると、外国の方が凄い結果を出しそうに見える。
国の規模が小さくても一致団結して国力を集中させれば、大国にだって対抗できるのはこれまで多くの国が証明してきた事実だ。小国が大国に全ての面において勝つと言うのは不可能だが、日本の製造業のように格上相手でも勝てる分野を生み出すまでは出来るのである。
「日本は国が強い言葉で主導するのを嫌うお国柄になってしまっているからね。愛国心も足りていないし、国が主導するのは不可能なのだよ」
「それは分かるんですけどね。けど、税金分はちゃんと仕事をして欲しいって思いますよ」
俺自身、国が国民を強く押さえつけるような事をすれば反発する人間だ。
ただ、こういったご時世だと、どうとでも取れる玉虫色の言葉でお茶を濁すような政治屋連中には辟易としてしまう。
連中は自分が責任を取りたくないからと、いつでも逃げの姿勢を見せている。
「では、政治家による愛国心たっぷりの発言を聞くとどうなるのだね? そういえばこの間、防衛大臣が海上防衛力の大幅強化を訴えていたけれど、それについてはどう思ったかな」
「あー。ま、まぁ、反対は、しないと思いますよ? ただ、どこから予算を持ってくるのか、とは疑問に思いましたが」
ちなみに。その国の政治家が駄目な理由の一つに、国民の政治意識の低さがある。
ノンポリ、政治に興味を持たない国民が大勢いるから、国の上が腐りやすくなるのだという。
もちろんそれだけが原因ではないのだが、それも理由の一つだと言われると、反論できない。
俺?
選挙には行くけど、そこまで真面目に投票先を選んでないです。ごめんなさい。
さすがに「ヤベー政治家を集めてみました!」というネタ政党に投票したりはしないけど、困った時の「寄らば大樹」の精神で投票していたよ。
あんまり、俺にはお上に文句を言う権利は無いのかな。
義務を果たしてないって意味で。




