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新型④

 コートは光織たちと相性が良くなかった。


 本音を言えば「もしかしたら上手くいくかもしれない」と淡い期待があったのだけど、理論値通り、予定通りの結果が出ただけだ。

 勝手な期待をしたんだ、棚ぼたが無かった事で不満を漏らしたりはしていなかったと思うんだけど。



「まだだ! まだ終わらんよ!」

「いや、できたらいいな、程度の話だから。大丈夫だって。光織たちが抱え込まなくてもいいんだよ?」

「私、要らない子?」

「そういう事じゃなくてね。他の仕事を任せたいんだよ」


 光織たちは、相性が悪かろうと継続の意志を示した。

 これは自分たちの仕事だと、ワガママを言い出したのだ。


「……今後も続けたい?」

「諦めたら、そこで試合終了ですよ」

「屁の突っ張りは、いらんのですよ」

「諦めるのは、いつでもできる。続けるのは、今しかできない」

「分かった。それで予定を組み直すよ」



 本人たちがやると言うのなら、やらせるのもやぶさかでない。

 オプションコート専用機『リトルレディ』の生産は進めるけど、光織たちの協力もお願いしながら、オプションコートの開発を行うように、計画を変更する。


「はぁ。わかりました。こちらでも新しい計画書を作っておきますね」

「ご迷惑をおかけします」

「構いませんよ。レベルアップ済の光織さんたちと、作ったばかりのリトルレディ。条件が違う複数の搭乗者がオプションコートを使う事で、様々なデータが得られますからね。これもいい経験ですよ。

 光織さんたちの動きに追従できるようになれば、一文字さんが使うに値する、そんなパワードスーツにも手が届くと思いませんか?」


 計画に無い話を持ち込んだが、及川准教授はにこやかに対応してくれた。

 計画変更を丁度いいと言ってくれるが、たとえ有効な計画変更でも、計画を変えるのは大変なのだ。変更など、できるだけ少ない方が良い。

 それを笑顔で受け入れてくれるのだから、及川准教授には感謝しかない。





「話は変わりますが。

 一文字さんから頂いた計画書についてのお話です」


 こちらが申し訳無さそうにしていると、及川准教授は話題を変えた。

 先日、俺が立てた新規装備の計画についての話だ。


「アンデッドダンジョンを購入したことで、新規装備が必要になったのは分かります。

 ですが、計画書の中にいくつか技術的に難しい部分と、必要性が理解できないものが見られたので、現場を知る一文字さんと意見交換をしたいと思います」


 いつもにこやかな及川准教授から笑みが消えている、

 かなり無茶振りをした計画書を書いた自覚のある俺は、気を引き締めて向き合った。



「まず、防衛陣地構築ユニットについてです」


 俺は安定したアンデッドダンジョン攻略に向けて、あったらいいものを考えた。

 定期的に攻略を行うなら、装備による戦闘の補助は必須である。


 最初に欲しかったのは、戦場でこちらが一方的に攻撃するための陣地だ。

 敵の行動を制限し、有利を取れるようにするのは戦術の基本だからである。

 現場は「邪魔な木を切ってもまたすぐに生えてくる」「切った木がそのまま残る」特性があるので、その中でできそうな事をいくつか考えてみた。


「切られた木を使い、壁を作るのはいいと思います。低コストで敵が近付く経路を制限できますからね。これは問題ありません」


 そのままにすれば足場を悪くする倒木も、加工すれば木材だ。

 だから、倒木を高速で加工するための製材装備を考えてみた。乾燥などの工程は省略するけど、足りなければ補充も容易だ。

 簡易陣地を作る、敵の侵入を防ぐ壁にするだけなら、現実的ないいアイディアだと自負しているよ。


「問題は、木材の強度とモンスターの反応ですね。すぐに破壊されてしまうなら製材の手間をなくし、そのままを無理矢理利用した方が効率が良いかもしれません。

 まずは現場で実験してみましょう。ここでは、そういった実験ができませんからね」


 ……上げて落とされたが、頭から否定されたわけではない。次、行ってみよう。



「金属製の、展開するタイプの進入禁止柵ですが、これは有効なのですか? ゾンビやスケルトンを相手に、効果があるとは思えないのですが」

「ほんの少しの、使い捨てになるとは思いますが、柵が有効なのは間違いありませんよ。木々が助けてくれるので、動きを止める役には立ちます」


 次に聞かれたのは、折りたたみ式の柵についてだ。

 こちらは本当に有効な物なのか分からなかったので聞いただけのようである。


「落ち着いてみれば開け方も分かるようなものですけどね。低ランクのゾンビやスケルトンって、ゴブリンよりも頭が悪いので。出来の悪いソフトで動くロボットだと思えば、分かってもらえますか?」

「ああ。想定外の事態に対応できないんですね。確かに、そう言われれば分かります。

 ゾンビ映画でも、知性を失ったように見えますし、モンスターのゾンビも同じなんですね」


 こちらは作ってもらうのではなく、購入品を使う予定。

 ただ、持ち運びの段階で及川准教授にも何か考えてもらうので、計画書に書いたのだ。



 他にも高台など、冒険者の間で定番のアイテムについていくつか議論を交わし、今日の話し合いは終了した。


 洞窟タイプのダンジョンではなく、オープンフィールドタイプのダンジョンが相手では勝手が違う。

 今後も情報交流を積極的に行わないと駄目だし、なんなら及川准教授にもアンデッドダンジョンを経験して貰うべきかもしれないかな?


 絶対に、嫌がられるだろうなぁ。

 あそこは冒険者が寄り付かない、不人気ダンジョンだし。

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