表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/522

新型③

「初期設計なんて、楽なものですよ。

 問題は、作った物が理論値を出せない事に対する原因究明、対策立案、効果実証のサイクルですね。これはものすごくお金と時間がかかるんです。

 もっとも、今回は気前の良い(一文字)スポンサー様(さん)がいるのでずいぶん楽なのですが」


 タイタンの改良は予想以上の結果だったという事で、今後も色々と実験をやっていく事になった。

 計測された出力向上の割合は4%と、理論値以上であった。


 今後を占うためにも、改良されたタイタンは正式バージョンではなく、「試作二型」という扱いになっている。


「鬼鉄を用いたバージョンのテストを今後も行うとして。

 問題は、鬼鉄の性能が安定しない事なんですね。こちらに関しては一文字さん頼みです。できるだけ、鬼鉄を安定させてください。そうしないと、設計する時に困りますので」

「うーん。あれは、何度作ってもかなり誤差が出るんですよね。融かす時や打つ時の状況にもよりますし、数値化する……のは難しいので、大体の評価だけ、付けておく事にします」

「そうですか。無理を言ってすみません。

 では、実測された最低値をベースに設計を行う事にしますね」


 鬼鉄の性能に関しては、あんまり正確な数字が出せなくなりつつある現状。

 レベルアップと再精錬を繰り返し、よく分からない性能を持つようになった鬼鉄は、設計段階では不確定要素として及川准教授の悩みの種となっていた。


 単純に出力向上を喜べられれば良いのだが、出力が向上したという事は、体への負担が増すという事でもある。耐久力がヤバいかもしれないのだ。

 出力性能が5%向上したという話だが、耐久向上がされていない状態の話なので、下手すると向上した出力に耐えられず、戦闘中に関節が壊れるなどの不安が生じてしまう。


「ま、まぁ、耐久性能も出力と同じように増している可能性もありますから」

「これに関しては、実働させつつデータを取っていくしかないですね」


 地道にデータを取っていくだけのお仕事なので、こういった調査は時間がかかる。

 ショートカットは出来ないので、俺は口を挟まずお任せするしかない。慌てさせてもロクな結果が出ないからね。

 そういうものだと思って、受け入れるしかない。



 そこで出た結果次第で今後の計画が大きく変わる、らしい。

 耐久性能が向上しているという前提があっての話だが、関節部分にかけられる負荷が高くてもいいなら、無茶も利くらしい。

 「らしい」ばかりだが、いまはまだ全部机上の空論なので、そんなものだ。





「こっちは、数字通りというか、なんと言うか」

「慣れていないようだから、しばらくは慣熟訓練だね」


 もう片方の新型、『オプションコート』、面倒だから『コート』と言っている装備に関しては、割と残念な結果になっている。


「2m級の戦闘に慣れてますからね。同じように3m級の戦闘ができるかって聞かれたら、俺も無理だって言いますからね。

 コート専用の中身でもなければ、こんな物でしょう」


 今更、ゴブリン相手に苦戦する事などない。

 しかし、普段よりも動きに無駄が多く、同サイズのタイタンと比較しても動きが重い。


 光織たちにしてみれば、手枷足枷を付けて戦っているのと変わらないのだろう。

 その前に試作二型の動きを見たあとだから、もっと酷く見える。

 コートにも鬼鉄を使っているのだが、見たところ「使えない」の一言で済ませて良さそうだ。



「これ以上、光織たちでテストをするのは止めておきましょう。変なデータしか取れないと思いますし」

「そうですね。サポートプログラムも上手く機能していないようですし、コートは『リトルレディ』に任せてしまいましょう」

「細かい調整は任せてくれたまえ」


 コートのテスト結果は、事前に予測されていた事だが、あまりよろしくない。

 とは言え、その結果はコート側に問題があると言うよりも、光織たちがコートに適応できていないというのも原因なのだ。



 そんなわけで、コートの運用は『リトルレディ』こと、オプションコート専用の人型ロボットを作り、運用していく事で話が付いた。

 汎用機である光織たちには悪いけど、やっぱり一つの目的のためだけに作られた専用機から始めないと、こういった新しい事は難しい。だから光織たちの「妹」に頑張ってもらう事で話が付いている。これも計画のうちなので、既定路線だ。


「インパル○も、元々はカオ○、アビ○、ガイ○など僚機の装備を使う計画があったんですよね。アニメ本編では出てきませんでしたが。一機種に集約する事は悪い事ではありませんが、データ取りを考えると、専用機が欲しくなるのですね」

「どこでそういう話を仕入れてくるんですか?」

「これはサイドストーリーで漫画になった分の話ですよ。ですので、ちょっと詳しい人なら誰でも知っている事ですね」


 なお、この計画に対して及川准教授はニコニコとロボットアニメネタを突っ込んできた。


 アニメの話だからか、及川准教授の話は汎用的で高性能な主人公機と、特徴のある他のロボットという組み合わせにしがちな「アニメのご都合」に対する言い訳のようにも聞こえるんだよなぁ。

 いや、ある程度の筋は通っているんだけど。大人の事情、お約束が透けて見えるからそう感じるだけかもしれない。


 俺がこの話を素直に受け取れないのは、大人になって心が汚れたからだろう。

 俺はロマンを解する方だと思うけど、たまーに付いていけない時もあるんだよね。


 俺は変形や合体の計画書を作りながら、裏でそんな事を考えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] |気前の良いスポンサー様《一文字さん》が ルビ化ミス
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ