表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/37

魔王の姫君 【勇蘭視点】

 目の前には魔王の部屋に相応しそうなとても荘厳な扉。



 僕は緊張感から冷や汗をかきながらもその重たい扉をゆっくりと開き、擦れる轟音を肌で感じながら一人その中へと歩を進み入れる。


 中はとても広い空間となっていて、足元には正面に一直線に敷かれた高級そうな絨毯が、やはりボロボロの状態で大きな椅子まで続いている。

 その他にも元は綺麗に吊るされていたであろうシャンデリアや、壁の上段部分に張り巡らされた色鮮やかなステンドグラスなどがひび割れ剥がれ落ちていて、その残骸達が無造作に散乱していた。


 そして扉同様に荘厳な造りのその正面の椅子には、勇騎さん達から事前に聞かされていた今回の黒幕とおぼしき少女が座っている。


 桃色の綺麗なロングヘアーを左側で束ねて、とても高級そうな真紅のドレスに身を包んだとてもクールな出で立ちの少女……魔王の娘、クィンハート。


 そこから視線を右の方へ移すと、人が入れる程の大きな筒状のガラスケースが二本並んで組み込まれた、謎の機械が設置されている。

 ガラスケースの右側は何も入っていない空の状態、だけどもう片方には僕達の今回の目的である召喚師ちゃんが入っていて、何かを叫びながら錠の付いたガラス戸を激しく叩いていた。

 でも残念な事にどうやらガラスケースは防音仕様らしく、彼女の声はこちらに全く届いて来ない。


 そんなとても怪しげな装置の操作盤前には、眼鏡に白衣姿のこれまた怪しげな銀髪の男性が突っ立っていて、急にこちらを振り向きながら大げさに声を荒げ始めた。


「おぉ、グッドタイミングですよ侵入者君っ! まさに今、最終調整が終わった所です。君も是非そこで見ているといい、この度の世紀の大実験をっ! ……ふっ、ふふふっ、ふははははっ。それにしても自分の専門外の事ですらこうも見事に完成させてしまうとは、あぁ……これでまた私が天才だったと言う事が世界に証明されてしまったようですね。さすが私ですっ! 私、最高っ! 科学の力、最高ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」


 意気揚々と眼鏡をクイクイしながら自画自賛をし始めだした謎の白衣男に僕が困惑していると、クィンハートがクールな表情を変えず静かに男へと問いかける。


「あら? 酷く待たされたけれどようやく完成したのねソレ。でも、本当にそんな機械でちゃんと『合体』出来るのか私は未だに信じられないのだけれど……?」


 ……ん? 今……なんて?


「何を言ってるんですかクィンハートさん? まさかこの私が失敗するとでも? はんっ、一体この私を誰だと思ってるんですか?」


「……ごめんなさい。全てレヴィに任せていたものだから、ほぼ全くと言っていいほどに貴方の事をこれっぽっちも全然前世知らないわ」


 あれ、悪魔の中でも前世聞くの流行ってるの?


「……くっ、何たる屈辱っ。いいでしょう、なら教えてあげましょう! 私の前世も含めてっ!」


「いえ、別に貴方の前世には一ミリも興味はないのだけれど……」


 けれどそれ以上聞く耳持たないといった感じで白衣の男は勢いよく背後からラジカセを取り出す。するとそこから突如、BGMと共にナレーションのようなものが流れ始めた。



『……これは、一匹狼の科学者の話である。巨大な魔術大学の研究チームは時代の流れと共に弱体化し、クローン技術研究により命のやりとりをする現場も、ついに弱肉強食の時代に突入した。……その危機的な研究現場の穴埋めに現れたのがフリーランス……すなわち、一匹狼のサイエンティストである』



 突如始まったこの急展開に全く頭がついていかず、僕はただただ唖然。クィンハートは澄まし顔で静かに成り行きを見守っている。



『……たとえばこの男。ハーレムを好み、権威を好み、束縛を嫌い、科学者のライセンスと叩き上げのスキルだけが……彼の武器だ。……科学者フレイ。またの名を、サイエンティストXっ!』



 そこでようやくテープが終了。すると白衣の男は銀髪を掻き分けながらポーズを取り、ドヤ顔を決め、高らかに宣言する。



「私、失敗しないのでっ!」



「…………」


 僕も、そして多分クィンハートも……どこからツッコんでいいのか全く分からず必然的に沈黙を余儀なくされてしまい、部屋全体が圧倒的静寂に包まれてしまう。


 ……ど、どうする僕?

 いや、でもこのまま時間を潰す事が出来るんならこっちとしては願ったり叶ったりなんだけど。っていうか、あれ? そう言えばさっきクィンハートが言ってた事でちょっと気になる事があったんだけど急展開過ぎて忘れちゃったじゃないかっ!? ……えーっと、あれ、本当なんだったっけ?


 僕の中で心のモヤがモヤモヤと広がり続ける中、まるでそれを晴らしてくれるかのようにクィンハートが動き出した。

 この静寂を打ち破るように優雅に立ち上がり、装置の方へと歩みながらようやく話を進めてくれる。


「……はぁ、まぁ失敗しないのならXでもYでも何でもいいわ。さ、そろそろ茶番はこのくらいにして、早く始めましょう。『合体』を……」


 ……合体?


 …………


 ……ああっ、それだっ!

 そうだよ、合体だよっ! あの変な装置を前に合体なんていう突拍子もない言葉が出てきたからちょっと気になってたんだよっ。


 あー、スッキリした…………って、いやそうじゃなくてっ!?


「ちょ、ちょちょちょっと待って? え、合体!? もしかしてその装置でクィンハートと召喚師ちゃんが合体するって事? え、何のために? いや、って言うか合体なんて本当に出来るの? え、あれ? もしかしてシンメトリカルドッキングみたいな、あんな半分半分な感じに?」


 合体なんていう更なる急展開に激しく動揺し矢継早に問いかける僕に、彼女はクールに微笑みながらも律儀に答えてくれる。


「あら、初対面でいきなり呼び捨て? ふふ、まぁいいわ。なら私も……えぇ、そうよ勇蘭。この装置で私と彼女が合体するの。理由は勿論、彼女の召喚術を私が使う為に、よ」


「……召喚術を、自分で使う?」


「えぇ。もう既に知っているのでしょうけど、私の目的は私の父である魔王の復活。でもそれを彼女に普通にお願いしたとしても、きっとすんなりと受け入れてはくれないでしょう?」


「そ、それはまぁ、そうだろうけど」


 過去に世界征服を目論んだ魔王なんて、召喚師ちゃんだって当然おいそれと復活させる訳にいかないだろうけど……。


「でも、そんなわざわざ合体なんて……」


「あら? なら悪魔らしく拷問でもして言う事聞かせろって言うのかしら?」


「え、いや、そんな事は……」


「ふふ、冗談よ? ……それとも、もしかして貴方も大多数の人間や天使達のように、先入観や思い込み、価値観だけで相手を見て判断するタイプの人間なのかしら?」


「え……?」


「ずっと無秩序な魔界で生きてきた悪魔達はその多くが皆好戦的で野蛮で、ルールも守らず、中には乱暴で残虐非道な血も涙も無いような奴らもたくさんいて……だからそんな悪魔達と同じ種族である私も、目的の為には手段なんか選ばないんじゃないのかって……貴方もそう思ったりするのかしら?」


「え、あ、いや……僕はそんな事は、思ってないけど……」


「そう……でもね勇蘭? 貴方は違っても、大多数の人間達や天使達はそうは思っていない。悪魔は皆、野蛮で乱暴で残虐非道な種族だと長年に渡って思われてきて、今尚その思想は深く根付いている。……そうでない悪魔だって、優しい悪魔だってたくさんいるのにも関わらずによ? 勇蘭、何故だか分かる?」


 いきなり始まったクィンハートからの謎の問いかけに、僕は困惑しながらも自分の意見を言葉にする。


「……そ、それは多分、やっぱり昔からそういう人に迷惑をかけるタイプの悪魔達の方がどうしても目立ってしまって、そういうイメージがついてしまったんじゃないかってのと……後はやっぱり、君のお父さんが起こしたあの大災害のせいで、悪魔族全体が危険視されてしまったのが原因だと、僕は思うけど……」


 そんな僕の一般論的な回答に、まるで予想通りとでも言わんばかりに彼女は間髪入れずに返答してくる。


「ふふ、そうね。声の大きい人ほど目立つと言うものね。それに……私のお父様が起こした『ヴァルハラ落とし』によってもたらされた、史上最悪の大災害『神々の黄昏(ラグナロク)』。神族達が住んでいたとされる神殿ヴァルハラを地上へ落とし、多くの街が、村がその破片で潰され、数えきれないほどの多くの死者を出した……。確かにこれで悪魔達に好意的な目を向けろだなんてとても無理があるのでしょうけど……でも、ねぇ勇蘭? ならそれに全く関わっていない多くの悪魔達は? 人間達のルールに(のっと)り大人しく真面目に働いていた悪魔達は? 優しい心を持った悪魔達は? なんの罪も犯してない悪魔達は一体、いつになったら許されるというのかしら?」


「……え?」


「人間にしろ天使にしろ、勿論その他の種族にしたって全員が全員清き心の持ち主で、罪など一度も犯した事のない善人ばかりだなんて絶対にそんな事ないわよね? 色んな考えの人がいて、中には当然悪巧みを考えてるような人もいて、そんな人達が大なり小なり罪を犯してる。……私達悪魔だって同じなのよ? 色んな考えの悪魔がいて、罪を犯さず、他人や家族を思いやれる悪魔だってこの魔界にはたくさんいるわ。そんな悪魔達は、ならいつになったらその呪縛から解放して貰えるのかしら? いつになったら地上の陽の光を浴びる事が出来るのかしら? それともそんな悪魔達ですらもうずっと、二度と魔界から出て来るなと……貴方もそう、思うのかしら?」


「……そ、それは……」


 ……確かに、彼女の言う通りだ。

 僕達人間の中にだって、盗みを働く人、人を騙して貶める人、暴力を振るう人、女性を襲う屑もいれば、殺人を犯す人だってたくさんいる。

 なのに、それなのに僕達は大災害の主犯格が魔王だったというだけで、悪魔達だけをみんな()()()()()で見て、地上に住んでた悪魔達を全員魔界へと追いやった。

 彼等達の生い立ちも、歩んで来た道のりも、喜びも悲しみも、何を感じ何を願って、頑張って生きて来たのかも……全部無視して。

 ただ悪魔というだけで僕達は、人は天使達と協力して追いやってしまったんだ。


「…………」


 僕は、彼女に返す言葉が見つからない。

 僕は知っていた筈なのに……自分のせいでないにも関わらず、馬鹿にされる気持ちを、イジメられる気持ちを、追いやられる気持ちを……誰にも認めてもらえない、孤独な気持ちを……。


 すっかり黙ってしまった僕に、でもクィンハートは怒る事も責める事もなく話を続ける。


「……ふぅ、ごめんなさい話が少し脱線してしまったわね。いいのよ勇蘭、別に貴方がそんな罪の意識に苛まれる必要はないの。別に貴方が私達を追いやったという訳ではないのだから」


「……で、でも……」


「それに見たところ貴方はそういう(たぐい)の人間でない事なんてすぐに分かったもの。だから私は別に貴方を責めたりなんてしないわ」


「…………」


 心がモヤつく。確かに僕が追いやった訳じゃないけど……だからって自分は無関係だと、何にも気にする事なんてないと、そうは思えなかったから……。

 でも目の前の彼女は、もうこの話はおしまいとでも言わんばかりに口を開く。


「……それで話を戻すのだけれど、安心して欲しいの勇蘭。合体……と言ってはいるのだけれどその効力は永続的ではなくて時間制限付きらしいのよ。しかもその時間もどうやらあまり長くないらしくて……ねぇ、変態Xさん?」


 急に話を振られたらサイエンティストXは即座に否定する。


「いえ、私は変態XではなくサイエンティストXなのですが……ふっ、まぁこの際そんな些細な事はどうでもいいでしょう」


 あ、いいんだそこは……。


「確かにクィンハートさんの言う通り、残念ながら効果はもって三分、といった所でしょうか」


「……え? さ、三分って……カップ麺が出来るまでの間しか合体出来ないって事? それ微妙過ぎない?」


「ふふ、そう思うわよね。でも召喚術を使ってそこの後ろのガラスケースに入ってるボディにお父様の魂を召喚するだけなら、三分もあれば充分でしょう?」


「……ん? 後ろのガラスケース?」


 今まで全然気が付かなかったけど、どうやら手前の合体装置の後ろ側にもう一つ別の機械があるらしく、僕は少し立ち位置をずらしながらその後ろ側を覗き込む。

 すると確かにもう一つ大きなガラスケースの付いた機械が設置されており、ただ召喚師ちゃんが入っている物とは異なりその中は薄い黄緑色の液体で満たされていて、なにやら身体中に色々なコードを貼り付けられた大人の男性がまるで眠ったように浮かんでいた。


「……あれが、魔王……」


「そう、私の細胞組織に含まれていたお父様の組織を摘出して生み出した完全複製のクローンボディ……という事らしいわ。ほんと、科学の力って凄いものね」


「ふっ、それほどでも……ありますけどねっ!」


 物凄く自慢気にドヤ顔を決める変態科学者は放っておいて、僕は再びクィンハートに問いかける。


「……つまり僕に安心していいって言ったのは、その三分で目的さえ果たせれば、その後は無事に召喚師ちゃんを返してくれるっていう……そういう事?」


「えぇ。お父様さえ無事に復活すればもう千年に一度の美少女召喚師さんに用は無いもの。なんなら貴方達全員に熨斗(のし)を付けて、マモの力で丁重に地上まで送り届けてあげてもいいのよ? だから……」


「だから、僕に魔王が復活するのを黙って見ていろって……そう言う事?」


「えぇ。そうすれば私はむやみに貴方を殺さなくて済むし、誰も傷つく事なく平穏無事に解決できる……そうは思わないかしら?」


「…………」


 ……確かに彼女のその案を飲むのなら、()()()僕達全員、無事に帰還する事が出来るんだろう。

 でも問題は勿論その後で、先程の彼女の話を踏まえた上で彼女達の目的が何なのかを考えてみると、おのずとその答えは出てくるもので……。


「あのさ、クィンハート。一つ聞いてもいいかな?」


「あら、何かしら?」


「……もしも、もしもそれで魔王が無事に復活したとして……そしたら君達は地上で、一体何を始めるのさ?」


 真剣な面持ちで問いかける僕を真っ直ぐに見据えながら、でもその表情を微塵も崩さずに彼女が答えてくれる。


「……ふふ、そんな事聞かなくても分かってるでしょう勇蘭? えぇ勿論、まずは手始めに神聖ヴァルキュリア帝国を手に入れて、それからきっと天界から慌てて降りてくる七大天使達を全員ぶちのめして……私が新しい神となってこの腐った世界を作り変えるのよ。私の望む、理想の世界へとね?」


「……はは、まぁそうだよね……」


 あまりにも予想通りの答え。


「あのさ? 一応確認なんだけど、考えを改め直して貰えたりなんて……」


「ないわね」


「……だよね」


 ……分かっていた。

 そんなに簡単に考えを改めてくれるようなら、まずそもそも召喚師ちゃんを誘拐して超大国であるヴァルキュリア帝国に喧嘩を売る様な真似はしない筈だ。

 とは言え、例え今この状況で僕がどれだけ別の代案を用いて説得を試みたとしても、彼女はきっと折れてはくれないだろう。


 当然だ。僕みたいなただの凡人の、まだ何も成し遂げたことのないような奴の言葉なんかには……何の重みも、何の説得力も微塵もないのだから。


 ……勇騎さんの時も、僕はそれで失敗したのだから。


 だからこそ、僕達は彼女を倒さなくちゃいけない。

 圧倒的な力を持つ彼女を倒して、出来ないと思われていた事をやり遂げて見せて……そして示さなくちゃいけないんだ。


 自分の言葉に、責任を持つという事を。



「……だったら僕は、君の案に乗る事は出来ないよ。だってさ? 将来伝説の英雄になる予定の僕が、伝説の勇者の息子であるこの僕が……そんな事見過ごせる筈ないじゃないか」



 すると、そんな僕からの返答すら既に予想していたかのように彼女は静かに微笑み、そのまま僕と対峙するように前へと出てくる。


「……ふふ、そうね。なら残念だけど勇蘭、貴方にはここで死んで貰うしかないわね。……安心しなさい? せめて痛くないように、秒で殺してあげるから」


 彼女の静かな殺意から急速に広まる緊張感に冷や汗が止まらない。


 きっと彼女の言う通り、本当に僕なんか秒で殺せるっていうのがこのピリピリとした空気感から伝わってくる。

 だけどこっちだってその実力差は最初から折り込み済みで、だからこそ本当はもう少し時間稼ぎをしたかったんだけど……でも、流石にもう頃合いかな?


 勇騎さんの話ではもう一人敵がいるはずなんだけど、でもこれ以上は本当に僕の命が危ない。


 そう踏んだ僕は、刀を抜き中段で構える。


 ……これは合図。

 基本、抜刀で攻め込む僕が敢えて抜いて構えたのは、これが勇騎さんと決めた合図だからだ。

 彼女の視線が完全に僕へと向いてるその瞬間。そこが僕達が付ける唯一の隙だったから。



 だから……お願いします勇騎さんっ!




(ガッシャーーーーンッ!!)


「うおぉぉぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」




 まさに一瞬。


 部屋の右側上段に貼り付けられたボロボロのステンドグラスを豪快に破壊しながら、物凄い速度で勇騎さんが落下してくる。

 その着地地点は勿論、召喚師ちゃんが入っている合体装置の操作盤だ。


 勇騎さんは落下の勢いに任せてそのまま操作盤に刀を突き刺し一瞬で破壊。



「わ、私のドキドキドッキングシステムがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」



 目の前の光景に絶叫し倒れるサイエンティストX。


 そして突き刺した刀はそのまま放置し、地面に降り立ったと同時に父さん譲りの白い刀を抜いて召喚師ちゃんの入っているガラスケースの錠部分を一瞬で切断。

 素早くガラス戸を開けて中に侵入し召喚師ちゃんを抱きかかえ、すぐさま刀の柄で真横にヒビを入れそのまま勢いよくぶち破り、魔王の椅子の手前あたりまで飛び出して来る。


 そこまでがまさに一瞬の出来事として繰り広げられ、驚きと困惑で目を見開きながらも勇騎さんの腕の中で茫然とする召喚師ちゃん。


 そんな召喚師ちゃんに向けて勇騎さんは優しく微笑みながら、彼女が捕まってからきっとずっと待っていたであろうその言葉を掛けてあげた。



「ごめん、ドゥル。待たせたな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ