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神音の羽球  作者: ボルタレン
7/7

第7セット、酷暑の極み

夏の大会に向けて地味なトレーニングが続く千明

その成果で1年生ながらショットパワーは着実に上がってくる

スマッシュの「音」は3年生山崎と大差無いほどになり、大会を迎える


7月22日(木曜日、海の日祭日)


一連の練習が終わり、団体戦のメンバー発表となる


高梨先生「第一ダブルス、金子、伊藤」

金子、伊藤「はい!」

高梨先生「シングル、河西」

河西「はい!」

高梨先生「第二ダブルス、山崎、河合」

山崎、千明「はい!」

高梨先生「補欠、佐々木と田中」

佐々木、田中「はい!」

高梨先生「一回戦は以上のメンバーで行います。二回戦以降は現地での判断で決めます」

男子部員「はい!」


高梨先生「続いて女子…」


………


7月24日(土曜日)

◯◯中学校(大会場所)


1年生たちは初めての公式戦となる

団体戦とはいえ、他の学校は基本的に3年生のメンバーが揃っている


田中「ちーちゃん緊張してる?」

千明「ん?んー、まあ…ね」

田中「頑張ってよ!僕も頑張って冬の大会で頑張るからさ!」

千明は正直なところ、それほど緊張していない。何故なら親父にシゴかれているので場慣れしているのだ


一回戦が始まる…


審判「武蔵村山6中、東大和2中、並んでください」

東大和2中はオール3年生のチームである

東大和2中監督「高梨先生、1年生いっぱい入ったじゃないですか」

高梨先生「いやー、中々のヤンチャ坊主で大変ですよ。今日はよろしくお願いします」

メンバー票を交換しながら握手を交わす監督


審判「第一ダブルス、練習してください」

東大和2中は小慣れた様子で早速基礎打ちを始める


一輝「おいちょっと集まれ」

一輝はメンバーを集めた


一輝「全員利き手をグーで出せ」

そう、一輝は円陣を組ませたのだ

バドミントンの大会で円陣をやっている所は無い。関東大会や全国大会となればやっているところもある。しかしブロック大会の、増してや強豪校でもない学校ではまず見掛けないだろう

だからこそ一輝は円陣をやらせた


一輝「最初は俺がやる。この先勝ったらローテーションでメンバーが先導をやれ。最後に『エイ!エイ!オー!』で合わせるぞ」

千明「(おおおおぉ…恥ずかしい事始めた…)」

一輝「よっしゃお前ら!気合い入れて初陣を勝つぞ!」

全員「エイ!エイ!オオー!」

一輝「よし!金子!伊藤!行ってこい!」

金子、伊藤「ウィッス!」


一輝自身も恥ずかしかった。だが、その馬鹿をやり切らなきゃモチベーションも上がらない

この円陣を他の学校も見ている。見られているのを感じて、敢えて大きな声でやった


高梨先生「よくやりますなぁ」

一輝「いやー、恥ずかしかったっす(笑)」


………


第一ダブルス

金子、伊藤vs阿川、植木(3年生)


阿川「ラッキー、1年生じゃん」

植木「まあ楽勝でしょ」


1年生は一応、ルールと簡単なフォーメーションは教わった。ただ実戦形式での練習はほとんどやっていないのでまだおぼつかない。さらにスマッシュのスピードもコントロールも全く違う


第一セット

15-2

あっ!

という間に終わってしまう

金子と伊藤は防戦一方で打たせてすらくれない


一輝「どんまいどんまい!相手は3年生だから気にすんなって!」

金子「ふぁぃ…」

伊藤「………」

完全に意気消沈である


第二セット

フェイント気味のロングサーブにあえなく空振りする金子、ビビってレシーブの立ち位置が下がってしまいロブを上げるしか出来ない伊藤


第二セット

15-1

しかも1点は相手のサーブミスで取った1点だった


金子「ムリっ!あれムリ!」

千明「どんまいどんまい!河西先輩応援しよう!」

伊藤「………」


一輝「おい、試合終わったら監督に結果報告しろ」

金子「…はい」

金子の口は少しへの字だった。全くレベルの違いを感じてはいるものの、心のどこかでは悔しさがにじみ出ていた

伊藤も心の中では悔しさがあったが、元々柔道家で冷静に自分を見つめる事が出来るのである。ただ、言葉数は少ない。そして表情にはあまり出さない


金子「…1セット目2点、2セット目1点で負けました」

高梨先生「ん、よく頑張りました。ルールも覚えてレシーブの位置も間違えなかった。相手は3年生なんです。気にせず河西くんを応援しましょう」

金子「はい」


金子はトイレへ向かった


………


シングルス

河西vs江越

河西が勝てば第二ダブルス、負ければ団体戦は終わりとなる


河西「よーっしゃ!俺は勝つ!お前ら応援なんてしてねーで準備しておけよ!」


山崎「ちーちゃん、外で素振りしようか」

千明「はい!」


………

(外)


山崎「ちーちゃん凄いよね、もうスマッシュは同じくらいのスピードだし」

千明「いや…まあ…家でシゴかれてるから…」

山崎と千明の身長は大差無い。1センチほど山崎の方が高い程度だ

千明はラケットカバーを付けてゆっくりとラケットを振る

最初はカバーの抵抗でラケットの面が斜めにズレてしまっていた。握力が足りないからである。しかし、今は抵抗をしっかりと感じながらも振れるようになっていた


……ヒュンッ!……ヒュンッ!

カバーを外してラケットを振ると、しっかりと風を切る音が出るようになり始めた


山崎「もうそろそろ行こっか」

千明「はい!」


………

審判「イン、エイト、スリー」

河西の試合は2セット目の中盤まで来ていた

1セット目は

河西15-9大山

2セット目の8点目を河西が取った所だった

部員「ナイコー(ナイスコースの略)でーす!」

河西「おーし!もういっぽーん!」


河西は張り切っていた

1年下の部員が入ってこなかったため、河西自身も団体戦が初めてであるからだ


……ドクン…

千明は緊張し始めていた

鼓動が、心臓の脈が聞こえるほどに…


河西「いよーしぃ!」

千明「(ビクンッ)」

千明は試合を見ていた。見ていたハズだった。が、点数も、風景すらも頭に入ってない。入ってこなかった


審判「ゲーム」


河西15-9大山

河西15-7大山


千明「(し、し、試合…だ)」

千明、ど緊張モード突入である


一輝「おい」

千明「は、ハヒィ!」

声が裏返る

一輝「社会の窓開いてんぞ」

千明「え?え?」

必死に股間を弄る千明

一輝「ねえよバーカ」

千明「え?あ、あ…」

一輝「おいおい緊張ビビってドリチンになってんじゃねーのかぁ?」

千明「…死ね、クソ…」

一輝「いいか、兎に角声を出せ。声を出せば緊張もほぐれる。あと最初の1発は全力で打て。アウトになってもネットに引っ掛けてもいい。だから全力で打て。わかったな」

千明「………」


第二ダブルスの練習が始まる

千明はおもいっっっきりスマッシュを打ってみた

……カンッ!

見事なフレームドロップショットである

一輝「……あれは俺も取れねえな…」



審判「集まってください」




遂に団体戦大会1回戦が始まった武蔵村山6中

1年生ペアのダブルスは3年生ペアにフルボッコとなり、シングルスでは河西が勝ち山崎と千明のペアに託される


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