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途中下車  作者: 凪子
9/10

09

「お客さん、あのね……」


そのとき、まぶしい光がフロントガラスから差し込んできて、孝男は目を細めた。


彼女は顔を伏せたままだが、気配を感じたのだろう、ますます怯えるようにして体を強張らせている。


そのパトカーは、孝男の車の前で音もなく停まった。


そこから降りて来た男の1人が、明愛タクシーのガラス窓を上品にたたいた。


彼女は力なく首を振って最後の抵抗を示したが、孝男はそれを物悲しい目で見つめたまま、言った。


「ごめんね、お客さん。遅かったみたいだ。私も……あなたも」


孝男は、はっと目を見開く。


彼女は覚悟したように涙に濡れた顔を上げていた。


夜露をたたえた花のような美しさに、孝雄は息をすることも忘れて見とれていた。


やがて我に返り、窓のそばにある開閉ボタンを押す。


するすると開いた窓から車内をのぞきこみ、


「はい。写真照合完了っと」


ひょうきんな調子で言ったのは、かなり若い男だった。女性とそう年が変わらないように見える。


後ろからやって来た中年の男性が、彼女の名前を呼び、


「任意同行願えますか」


と、丁寧な口調で言った。


女性はよく目をこらしていなければ分からないほど小さく、かすかに頷いた。

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