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途中下車  作者: 凪子
7/10

07

タクシーは走り続けている。


だが、窓から見える景色は、先ほどから全く同じものだった。


彼女が車に乗り込んでから十数分。もうそろそろ高速に乗ってもおかしくないころなのに。


「……あなたが本当に行きたいのは、警察なんじゃありませんか?」


ひゅっ、と音を立てて彼女は息をむ。


大きな瞳がみるみるうちに凍りつくのを、孝男はバックミラー越しに冷静に見つめていた。


彼女は我に返ったように窓に張りつき、外の景色に目をこらした。


そしてようやく、車が辺りをぐるぐる回っているだけだとに気づいたようだった。


白い卵型の整った顔に、おびえの色が浮かぶ。


「違う」


気の毒なほど震える声で彼女はあえいだ。


「違います」


孝男は無言でハンドルを切り、もと来た道を引き返す。


そのとき隣の車線から、対向車のライトの光が車内に差し込んだ。


彼女は鋭い悲鳴を上げ、自分の膝に頭をぴったりとつけて、うずくまった。


身を縮めて頭を抱え、がたがたと震えている。


孝男は道路脇に車を停めて、彼女を振り返った。


車が停まったことに気づいた彼女は、身を揺するようにして、悲痛な声で叫んだ。


「いいから早く行って下さい!行って!!」


孝男は黙って、壊れんばかりにわなないている彼女の小さな背中を見つめていた。


長い髪が肩をすべり落ち、細い首筋と白いうなじがあらわになっている。

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