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途中下車  作者: 凪子
6/10

06

「お客さん、リッツカールトンへはよく行かれるんですか?」


女性は目をしばたかせた。


そしてわずかな間、逡巡しゅんじゅんするように視線を泳がせる。


無視してもいいし、話しかけるなと断ってもいいのに、律儀りちぎに答えを探している彼女の姿を見ていると、孝男は自分の行動に間違いはないと確信を得た。


答えることができないのは、きっと彼女が真面目で正直者だからだろう。


「僕もあまり行ったことはないんですが、あそこのランチはうまいですよね」


孝男が優しい笑顔で語りかけると、女性はつられたようにぎこちなくうなずいた。


「え……ええ」


次の交差点を右へ、そして次の交差点も右へ。


――彼女は一体、いつ気づくだろうか。


信号が黄色から赤へと変わり、車はゆっくりとスピードをゆるめて停車した。


背後に目をやると、彼女は放心状態で、その目は何も映していないように見える。


息をこらし、じっとして、車内の揺れに身を任せているだけ。


大通りを行く車はスピードを上げ、水しぶきを立てて走ってゆく。


白や黄色のまぶしい光が、勢いよく降りしきる雨を照らし出していた。


青信号になり、前の車が動き出したとき、孝男は注意深くアクセルを踏みながら、後部座席の彼女に向かって問いかけた。


「お客さん。・・・そろそろ、本当の行先を教えてもらえませんか」


、、、、、、、、、、、、、、

正体を暴こうとしてはならない。



禁忌タブーに触れた孝男に、沈黙が突き刺さる。


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