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途中下車  作者: 凪子
2/10

02

願ってもない客に喜んでいいはずなのだが、孝男はかすかに躊躇ちゅうちょしていた。


その女性の顔を見た途端、何とも言えず嫌な予感がしたからだった。


こういう予感はよく当たる。


孝男は40年近くにわたるドライバー経験から、客を見抜く鋭い眼力がんりょくを養っていた。


冷たい雨は先ほどから勢いを増しているというのに、女性は傘もさしていない。

そのせいで全身ずぶ濡れだった。


それくらいならまだいいのだが、最も孝男をひやりとさせたのは、その女性の顔色が真っ青であることだった。


酔っ払い客や、乗り逃げしそうな客は絶対に乗せるな。


この仕事についてすぐさま、先輩ドライバーから耳にタコができるほど聞かされてきた台詞せりふだった。


言われなくとも、厄介事やっかいごとはこちらとて遠慮したい。


孝男はためらった。


だが、雨の夜道に1人彼女を残して走り去ることなど、到底できそうにない。


仕方なくドアを開くと、女性は車内にするりともぐり込んできた。


ドアが閉まってしばらくしても、しばらく物も言わずに震えている。


真珠の粒のような歯を小さく鳴らしながら、夜の雨に滲むきらびやかな塔を見上げ、行き先も告げようとしない。

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