第二部 異化効果でトロープを生かす
異化効果、というものがあります。
異化とは、「普段見慣れたものを非日常的に表現することによって全く違う印象を持ったものに変えてしまうということ」です。
例えば、キャッチコピーは異化効果を意識するとうまく行きます。
「日本で47番目に有名な県」(島根県)
とかどうでしょう?
我々の固定観念を巧みにひっくり返して、「目に留まる」印象を醸し出すことに成功しています。
なぜこうなるのか。
島根県が魅力全国最下位であることは、我々の一般常識であるからです。
使い古されて自動化された観念であるからです。
それを普段とは全く違った視点や物言いで、見慣れた風景とは全く違う見慣れないものにしてしまうことによって、不安や驚きを駆り立て、印象深いものにするのです。
不安や驚きという刺激こそ、異化効果の本質です。
さて、異化効果がトロープとどう繋がるかというと、トロープもまた、見慣れた風景、一般的常識なのです。
あまりに反復され、再生産され、固定化された観念であるからです。
観客や読者はトロープに見慣れ、飽き飽きしています。
前話で紹介したメキシカンスタンドオフだって、最新の映画で見たら陳腐だと思う人も多いのではないでしょうか。
だからこそ、あるトロープを描くときは、よりそのトロープ自体のあり方に自覚的になり、その使い古された点を上手に異化して、新たな表現を模索しなければならないと思います。
次に行きます。