四人の馬鹿
ルリアーナ様はパーティ開始直前に入場するらしい。彼女を生徒入場用の扉の前まで送ってから、私は教職員用の扉から先に会場に入った。煌びやかな服やアクセサリーで溢れかえる会場。色とりどりのドレスの中で、ただ一人、星座の模様の入った漆黒のドレスを纏っている私は確実に浮いているのでしょうね。浮いているのはドレスだけではない。口元を避けるように包帯で顔を隠し、更に目元はベールで覆っている。結い上げた髪も手袋も靴も、包帯以外のものを黒で統一した喪服のようなこの格好は、祝い事である卒業パーティーにはふさわしくないだろう。まぁこれが私の正装だから文句を言われても困るのだけど。
これだけ目立つ格好をしているにも関わらず、誰も私の存在に気付かない。それもそのはず。私は今、姿を隠す魔法を使っているのだから。私がこのパーティにに招待されていることを知っているのはごく僅か。今はまだ姿を見せる訳にはいかない。
さて、ルリアーナ様が入場される前に目的の人物を見つけておきましょうか。私は二階のギャラリーに移動して会場全体を見渡す。その人物はすぐに見つかった。
ルリアーナ様の婚約者、レイナード・アルテスマ殿下。彼はこの国の第一王子。金の髪に水色の瞳で爽やかに笑うその様は、まるで絵本に出てくる王子様そのもの。太陽のように明るいレイナード殿下と、月のように穏やかなルリアーナ様。二人が並ぶと、まるで絵画のようで誰もが見惚れてしまうという。でも、もうその姿も見れそうにないわね。私は殿下の隣に立つ令嬢に目を向けた。
空色の瞳にショートボブの桃色の髪。髪を伸ばす令嬢が多い中、その髪型はとても珍しい。彼女はマリア・フローレス男爵令嬢。この学園で彼女を知らない人間はいないだろう。彼女は婚約者であるルリアーナ様より殿下と仲睦まじくしていることで有名だから。彼女は女の私から見ても可愛いらしい容姿をしているとは思う。ルリアーナ様がバラなら、彼女はチューリップというところかしら。
今日の彼女は殿下の瞳の色と同じ水色のドレスを着ている。銀の刺繍や宝石で装飾された豪華なドレスは、どう見ても男爵家が買えるようなものでは無い。きっと殿下からプレゼントされたものでしょうね。そして殿下が着ていらっしゃるのも銀の刺繍が施された水色の上着。お揃いの衣装を着た二人を見た人達は全員同じことを考えるでしょうね。『殿下はフローレス男爵令嬢を選んだ』と。
そこまで頭が回っていないのか、そう思わせることを狙っているのか。どちらにしても溜息が出てしまう。
本当に馬鹿な人…。
ご拝読ありがとうこざいました。