暇だからRPGの必殺技を当てるゲームをする【五人少女シリーズ】
五人の少女たちについては紹介などがされていませんがシリーズどこから読めて、共通設定なので大体こんな感じです
留音→男勝りっぽい感じの常識人
衣玖→天才な子
真凛→朗らかな子
西香→うざい子
あの子→描写されないけど全人類の頂点にある愛されガール
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夏場。9月初頭。
「すごい雷と雨だなぁ……今日は外出る予定無くてよかったわ」
留音は窓の向こうで降る雨を見ながらそう行った。自分たち人間がアリンコで、そこに風呂場のシャワーでも掛けられてるくらいすごい雨だし、雷は激しすぎて「ゴロゴロバリー」どころか、あまりに落雷が近くて「バッゴーン」という音に聞こえるくらいの酷い天候になっている。
「この時期はね。気圧の影響よ。まぁこういうのは数十分で止むわ」
衣玖がソファーでゴロゴロ転がりながら不安そうな留音にそう言った。気象学の観点からの話も出来るがこの人らに話しても多分理解されないだろうなと思って簡単に話を済ませる。
「うーん、暇ですねぇ。みんなで何か遊びますか?」
真凛は大型テレビの前に並んでいるゲーム機を見ながら提案するのだが、そこでまた近くに雷が落ち、同時に部屋の明かりが落ちてしまった。窓から見える別の家も真っ暗になっていることも見ればどうやら付近が停電したようだ。今この部屋には五人の少女たちが全員集合しているが、その中で留音だけが停電の瞬間に「ひぁっ」と声を出していたが、落雷の音にかき消されたため幸い誰にも聞かれていなかった。
「これじゃゲームが出来ないわね……何しようかしら」
衣玖が提起すると西香がスマホ片手にダルそうに返す。
「わたくしはパス。星5があと四体出るまで貢いでもらってる最中ですので」
西香はいつものように自分の信者に貢がせているようで、西香のスマホにはライン通知で『お納めください』とストア用の課金コードが送られてきているらしい。
「ってあら、データの更新があるって……100メガ……あら?ワイハイが繋がってないじゃありませんか」
「ワイファイね。停電してるんだから当然でしょ」
「100メガも更新データがあるのにですの?!」
「そんなのスマホの回線で落とせよ……」
「嫌ですわよもったいない!外でなら落としますけどワイハイがある自宅で回線使うなんて!回線使い切ったらもったいないじゃありませんの!」
「お前無駄に金あるんだから使い切っても買い足しゃいいじゃん……」
いつもの事ではあるが、西香の守銭奴っぷりに留音も衣玖もため息だ。だが西香も暇を持て余すことになった事を考え、真凛が楽しそうに提案した。
「それじゃあ西香さんも参加できるゲームで遊びましょう~、何がいいですかねぇ?」
「プレス……あ停電中か。じゃあスイッ……あ停電中だ」
うーん、と少し留音が唸ると、真凛がぽんと手を叩いた。
「思いつきましたぁ!ゲームの音を再現して技名なんだゲームしましょう!」
「へぇ、それどんなゲーム?」
真凛がニコニコしながら言った新ゲームの内容について留音が訊くが、衣玖が「名前のままでしょ。ゲームのサウンドエフェクトを再現して何の技名か当てるゲームじゃないの?馬鹿なの?」と呆れる。
「わー!流石衣玖さん、天才です!わたしが今考えついたゲームなのに!」
というわけで新ゲーム”ゲームの音を再現して技名なんだ”ゲームが始まった。
「じゃあわたしから行きますね~」
「ちょっとまって。縛りなし?範囲広すぎじゃない?」
「そうですねぇ。じゃあPS1時代のRPG固定にしましょう~。同じタイトルも禁止にしましょうかっ」
「それでも結構あるなぁ……」
というわけで新ゲーム”ゲームの音を再現して技名なんだ(RPG固定)”ゲームが始まった。みんなもレッツチャレンジ!正解しよう!
「始めは簡単なのから行きましょう~。うーん……”ヒュロロ(巻舌気味)キュピーン!シュルシュルシュルジャギン・ジャギン!!”はい、ではなんでしょう?」
真凛の割と本気なSE再現に留音が半笑いになりながら言う。
「すげぇシュールだ……っていうか恥ずかしくないの……?わかるやつだって絶対いな……」
音なんて人の感性で受け取り方も表現も変わるし、当てるなんて絶対ムリだろと留音は初めから答えを考える気もなかったが、そこに被せるようなタイミングで衣玖が机を叩いて言った。
「はいわかった。サガフロのかすみ青眼。恥ずかしいなんて言ったら失礼よルー、これはゲームなんだし。TRPG遊んだ事無いの?」
その回答にわあ、と真凛が両手を合わせて嬉しそうな顔を向ける。
「衣玖さん正解!もう留音さん~、恥ずかしいなんて言わないでちゃんとやらないと駄目ですよ~、衣玖さん1ポイント!」
なんかすまん、と留音。だが割と盛り上がりそうな空気感に馴染めていない。衣玖が鼻を高くしてポイント獲得を誇るようにしてこう言った。
「簡単ね。キュピーンの時点でサガシリーズの閃き音だってわかったわ。なかなか面白いじゃない。次は?」
「じゃあ次、西香さんが音やってください」
「えぇ、わたくしもやるんですの?うーん……そうですわねぇ」
自分専用のお姫様椅子に深々と腰掛けていた西香だが、参加を促されて姿勢を正す様子に留音は、
「あ、やるんだ。意外と乗り気で……」
と、これは自分に回ってくるだろうしあんまり本気で音を再現するのは恥ずかしいどうしようと考えながら西香の音再現を聞く。
「いきますわよ。”だす!だん!きゅぃいいん……みょーふぁーふぁーふぉーふぉーふぉーふぉーふぉーふぉーふぇーふぇーふぇーふぇーふぇーふぃーふぃーふぃーぷぉー……”」
留音がそっぽ向きながら口元を抑えている。衣玖と真凛は真剣だ。
「……これは難問ね。最初の二回は打撃音でしょうけど、最後の方のが難しいわ。すっごい連続攻撃って事?」
「魔法っぽい感じでしょうかねぇ」
うーん。と考える二人は全く思いつかないらしい。
「わかりました。じゃあヒントですわね。行きますわよ」
何故か立ち上がる西香は「みょー」と言うと最初に左腕を前へ出しながら右腕を後ろへ、次に左腕を回すように顔の横から後ろへ、右腕は前へ出し、それと連動するように右足を上げ……そんなような動きをゆっくりと緩慢に行った。留音は「停電でちょっと暇つぶしたいだけの人間がこんなに本気で恥をかきすてた行動出来るもの?」と自問しながら西香の動きを見た。
「あ!あ!あ!」
真凛が嬉しそうに指を指しながら興奮した様子でその動きに反応している。この謎の盆踊りのような舞に心当たりがあるようだ。衣玖も同時に「ゼノギ!ゼノギ!」と叫んでいるが、真凛の方が早く「超武技闇勁!!」と答えた。
「はい正解。ちゃんと技名答えたほうが正解ですわよね。真凛さんに1ポイントですわ」
「やった~!うれしぃ~!」
ぴょんぴょん跳ねながら喜ぶ真凛に衣玖は素直に負けを認め、答えを聞けば先程の音がかなりの再現度だったことを評価した。
「それにしても西香のくせに超武技闇勁を知っているとはやるわね……レベルすごく上げないと出せないのに」
「簡単ですわよ。プロアクっていうのを使って経験値を100倍にして遊べばすぐ覚えられますわ」
「やっぱり西香は西香だった」
西香は一周目であろうと出来る裏技やチート技はすぐに使うタイプである。ダーク○ウルも700レベル以下でクリアしたことがない。(そのくせ余裕だったとか言っちゃうヤツ)
「じゃあ次は留音さんかしら。どうぞ」
西香から順番が周ってきた留音が露骨に嫌な顔をする。
「あたしもやるのかぁ……えー、なんか……あたしはいいよ……」
「こらー、ルー。萎えるぞー、ちゃんとやれー」
衣玖のブーイングに真凛と西香も同時にブーブー。だが始まった時からやるならこれかなというのを考えていた留音は「仕方ねぇなぁ……」と咳払いをすると意を決したのだろう、ワンテンポ置いて。
「……”ざしゅ じょん↓わぁ↑ぁぁい!(高め)”」
割と吹っ切れながら言った感じに今度は衣玖が「むふっ」と口元を抑える。じょんわぁぁい!のところに妙に気合が入っていたのも面白かったらしい。
「うーん、短めですねぇ……なんだろぉ」
真凛が人差し指を頬に当てて考えている。
「ブライトナックルかシャイニングキックかなと思ったけどこれサガフロなのよね……」
衣玖はサガフロを除外しようとしているが、どうしてもそれがよぎってしまっている。ルール的に同作品からの出題は禁止という制約がある。
「その流れでサガフロ2だったら難問ですわよ、あれの剣技ってざしゅ!じゃじゃーん!とかじゅぎょーん!とかのオンパレードですからね……留音さん、ヒントくださる?」
真面目に考えてくれると意外と嬉しいな、なんて思いながら得意気に鼻下を手の甲で軽く撫でる留音は「最初に覚える技かな」というヒントを出した。
「あ、ラフディバイド?ちょっと違う……?」
衣玖が口元に指を置きながら必死に初期技縛りで思い出している。
「違うんだなぁー、もっと軽い技」
「ざしゅ、ならほぼ剣技なのは間違いないでしょうけど……」
なんだろう……と唸る三人。
「じゃあ次のヒントな。その技はシリーズの歴代キャラが結構使ってる」
「うーんシリーズで同じ技を使うってなるとテイルズとスタオーしか思いつきませんよぉ」
真凛がそう言うと、衣玖が”軽い初期技”についてこう発言した。
「となるともう、魔神剣か空破斬くらいしか無いわね……どっちも違うでしょう?」
その発言に留音が指をさす。
「いや、正解。魔神剣」
「嘘-!?魔神剣って言ってもザッパー!くらいじゃないの?」
「いやマジマジ!PS版のデスティニーの魔神剣の音はこんな感じでめっちゃ響くんだよ”じょんわぁぁぁい!”ってくらいに。当時はやりすぎだと思ったねあたしも」
留音は興奮したように当時の魔神剣の音を伝えている。この感じがちょっと面白くなってきたようだ。
「じゃあ次はあの子だな!」
やってみたら楽しいぞ、みたいなテンションであの子に順番を譲る留音だが。
「何言ってんの!?その子にこんな恥ずかしいことさせないでよ!」
「そうですよ酷いです留音さん!この子はこんな馬鹿みたいな事しませんよぉ!」
飛んでくる衣玖と真凛からのブーイング。西香は唯一の友達の肩を撫でながら安心させるように言った。
「大丈夫ですわよ、空気の読めない留音さんからの無茶振りなんて無視してくださいね」
「お前らさっきは恥ずかしがったあたしを責めてただろうが!まぁ確かにその子がこんな事する想像は出来ないけどさ……」
「やったとしても”大いなる福音”とかそこら辺でしょうね。というわけで一周して次は私よ」
まだ続くらしい。今の所衣玖が一点リードしている。責められて不服そうであった留音も聞く態勢に入っている。
「これは簡単かもしれないわね。『ざしゅ ざしゅ ざしゅ、ざしゅざしゅ!キン!キン! ガッキーン!”……」
「わかったかもしれない。その後場合によっては『きゅいーんきゅいーんきゅいーん ほわわわわ ぶぉーん!じゃッぎーん!』って続くんじゃないか?」
「お、流石に食いついたわねルー」
衣玖は留音がPSの頃のAAA作品をよく遊んでいたことを思い出してそう言った。
「それは簡単すぎるな。ニーベルン・ヴァレスティだわ、剣の方」
「正解。これでルーも1ポイントね」
「じゃあ次はわたしの番ですかぁ……うぅん、同じゲームは駄目なんですよねぇ。ネタ切れしてきました……音覚えてるのって意外と無いですねぇ……」
「わたくしもですわ。まぁ大体の作品で通常攻撃で最大ダメージって状態でしたから」
「あたしももう思いつかない。ニーベルン出されちゃったし。セリフなら出てくるんだけどな、リオンのストーンウォーリィ!とか。あと覚えてて特徴的なのって言ったらあたしは超究武神覇斬くらいしかないなぁ」
ゲームとしてポイントは付けていたが、彼女らの遊びではそういう者は殆ど意味がない事が多い。一緒に過ごして楽しければいいというものだ。だからこの日もみんな勝負という事を忘れて、外の雷雨が収まってきたことも寄与してこのゲームも終わりに近づいていた。
「あぁいいわね。あたしとルー、最後のセフィロス戦見たくて当時何度もクリアしたものね。じゃあ最後にルーの超究武神覇斬を聞いて終わりにしましょうか」
しょうもない音当てゲームだったが、多分今日のことをいつか思い出した時、クスリと微笑む事ができるような思い出になるのだろう。
「そうですねぇ。締めにはいいと思います~」
「じゃあどうぞ留音さん。わたくしも清聴しましょう」
「え……あの、そう言われると恥ずかしいんだけど……」
あれはなぁ……なんて感じで頬を人差し指で軽く掻いている留音だが、FF7を遊んでいた頃を思い出した衣玖が優しく背中を押した。
「別に恥ずかしいこと無いわよ。みんなで思い出に浸りましょう」
「んじゃあ……」
留音は長いリミット技に備え小さく息を吸ってから、限界を超えた。
「『ピキーーーン!ジャギンジャギンジャギシン!ジャギンジャギンジャギシン!ジャギンジャギンジャギンジャギシン!ジャギンジャギンジャギシン!ジャギシン!ジュヴォア!ヴィエエエエエエ!!ジャギーン!ズドゥアアアアアアア!!』」
『ピンポーン(被り気味)』(宅配の来る音)
「あ、わたし出ま~す、ふふっ……」
「ブフフフッ……ムフッ……留音さん……っ、それは卑怯ですわっ……ブフフ……」
「ルー。恥も外聞も無くよくやりきったわね。私にはクラウドがルーの口の中で超究武神覇斬を撃ってるように感じられたし、本当に感動したわ」
留音はその日、普段ならみんなと一緒に食べる晩ご飯を自分の部屋で一人で食べた。
いつかこの日の事を思い出した時、きっとみんなの心に超究武神覇斬が放たれることだろう。そして彼女らは顔を地面に向け、むしろこっちが恥ずかしくなるわというってな感じで少し笑うのだ。今日のことはそういう思い出になるのだろう。
「思い出の中でじっとしていてくれぇ……」
ちゃんちゃん。
小さい頃はボイスの方をよく再現してた人のほうが多いですかねぇ。
私は時オカリンクの回転斬りする時の「シェアアアアア!」の声再現に関しては一線を画していましたね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。もしよろしければ評価や他シリーズのチェックをいただけるととても嬉しいです。