プロローグ1 修学旅行にて。
初めまして。
もがみいなりと申します。
拙い文章ではありますが、とにかく完結目指して頑張りたいと思います。
よろしくお願いします。
「夜でござるな、トシオ殿」
「夜でござるな、タクシ殿」
拙者、佐藤トシオと唯一無二のその親友、木村タクシ殿は顔を見合わせ、ニヤリと笑う。
修学旅行も最後の夜。
人生初めての京都の夜は、何とも綺麗で幻想的でござった。
明日、拙者達は東京に帰るのでござるが、その土産を買う最後の自由時間が与えられるのだけれど、この自由時間に拙者達が熱を入れているアニメ「アベノ☆ハルカ」コラボのお土産を買い漁ろうと二人楽しみにこの時を待っていたのでござる。
「キモタク!佐藤!うちら、勝手にウロウロしてっから、八時半にここ集合な!」
「はい!でござる!!」
「はい!でいいんだよ!ござるござるキメェんだよ!」
「痛いでござる!」
口も悪いが素行も悪い、見た目だけ美少女の遠藤小雪に尻を蹴っ飛ばされ、拙者らはすぐさま班行動を離脱する。
いいのでござる。
班行動では見たいものもじっくり見れぬのでござるからな。
拙者達はクラスカースト最底辺。
こうなることを見越して、小雪殿に虐げられることをわかって同じ班で甘んじていたのである。
「ではタクシ殿、参ろう。」
「そうでござるな、トシオ殿。」
ズレた眼鏡を直しつつ、いざ新京極!
待ちに待った自由行動時間なのである!
「ふおおおおおお!!これは!!!ハルカたんの顔が描いてあるクッキーではござらんか!」
「これは勿体なくてなかなか食べれないでござるなぁ!!」
「これは!!き…着物バージョンのハルカたんクリアファイル!だと!?」
「新撰組バージョンもありますぞ!!」
「いつもの陰陽師服とはひと味違う趣がありますな!」
「あっ!拙者こちらのチューベエの生八つ橋も欲しいでござる!」
底辺には底辺の楽しみ方がある。
拙者達が某有名画像の様にリュックにポスターを突き刺し、両手に紙袋を持つまで、そう時間はかからなかったでござる。
「さて、タクシ殿、最後の締めくくりと行きましょうぞ」
「あ、トシオ殿、ついに行っちゃうでござるか?w」
何を隠そう、一番楽しみにしていたのは、この新京極の外れにある「陰陽堂」なる聖地なのである。
アベ☆ハルについてタクシ殿と熱く語らいながら、GPSナビ通りに歩くこと数分。
目的地周辺です、と言われたものの近くにあるのはどう見ても廃墟のようなボロ汚い建物ばかり。
「本当にこの辺なのでござろうな??拙者、ちょっと怖くなってきたでござる…」
生暖かい風が拙者の頬を撫でる。
ほんの数分歩いただけなのに、裏路地とはこんなにも静かで暗くて、先が見えないものでござろうか。
ガタガタッ!
「ヒィッ!!」
すぐ左からの物音に、思わずタクシ殿の腕にしがみつく。
「あばばばば!トシオ殿!いきなり抱きつかないで欲しいでござるよ!!」
「タクシ殿!あれ!!あれ!!!」
拙者が指さした先には、建物と建物の間を塞いである錆びたトタン板が不自然にガタガタと揺れている。
「ヒイイイイイ!!!」
二人してズザザザッと後ずさる。
ガシャンと向かいのシャッターに背中がくっつく。
もう後ろには逃げられない。
タクシ殿に、拙者の心臓の音が聞こえているのではなかろうかと言うくらい、心臓が暴れ回る。
指の先がガクガクし始め、全身が泡立っていく。
怖くて堪らないのに、その方向から目が離せない。
トタンはキィィィと音を立てながら徐々に上にめくれ上がり…
のっそりと黒猫が這い出してきた。
「なんだ。猫でござったか。」
「お、脅かすなでござるよ。もう少しで心臓が口から飛び出て弾け飛ぶところだったでござる…」
「タクシ殿は強いでござるな。拙者はもう出た後でござるよ…」
ははは。と空笑いをしている拙者たちを猫はじっと見たあと、まるで闇に溶け込むように走り去って行った。
「帰ろうでござる」
「そうでござるな…」
なんだかどっと疲れて、来た道を引き返すべく振り向いたその時。
通ってきたはずの道の一角に灯りがついている。
「ん?あんな所に灯りがあったでござるか?」
「はて?拙者の記憶にはないでござるが?」
「とにかく、少しでも明るいのは有難い。これで少しは道も怖くないでござるな。」
早足で来た道をまた引き返す。
少しでも早く明るいところに出たかったのでござるよ。
「むむむ!?」
「どうしたでござるか?タクシ殿」
「陰陽堂…と、書いてあるでござる」
「え!?」
なんと、目の前には探し求めていた陰陽堂があったのでござる。
キモオタ二人、無事陰陽堂にたどり着くことが出来ました。
次回、陰陽堂にて。