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シブリングズ・ボエジ  作者: チャンドラ
2/7

叶えたい願い

 しばらくすると、スミスが船から戻ってきた。着替えたようでピンク色の上下薄着のパジャマを着ていた。

「早く食べよう! お兄さん」

「分かった分かった」

 俺は肉の串焼きをスミスに渡した。俺たちは砂浜に座り込んだ。

「いただきます!」

 ガブッと、スミスは肉に噛り付いた。

「やばい! 超美味しい! さすがお兄さん。料理上手だねぇ」

満足そうな顔で、スミスは口いっぱいに肉を頬張っている。そんなに美味しいのか。

 俺も肉を口に入れた。

 肉は思ったよりも柔らかく歯ごたえがあった。味付けも我ながら悪くなかった。

「お兄さん、肉おかわり!」

「はいはい」

 残っている肉を適度な大きさに切り、串に刺してやった。

「火に近づけて炙ってくれ。しっかり中まで加熱するまで待てよ」

「分かった」

 串に刺さっていた肉を食べきり、俺は先ほどの大きめな木の実を取り出し、ストローを刺した。この木の実の中には甘い汁が入っている。

 飲み物としてよく使われると本で読んだことがあった。

 さっそく、飲んでみた。ドロドロとした肌触りで思ったより冷たく、ココアに近い味がしてなかなか美味しかった。

 俺は木の実をスミスにも渡した。

「ほら。お前の分だ」

「やった! ありがとう!」

 スミスは受け取り、木の実の汁を飲んだ。

「美味しいね、これ!」

 少し飲んだ後、スミスは再び肉を食べ始め、すぐに串に刺さっていた肉を平らげた。しかし、よく食べるなぁ。

「お兄さん、お代わりしていい?」

「あいよ」

 徐々にあたりは暗くなってきた。今日は天気がいいため、星空がよく見えた。

「あー美味しかった」

 スミスは砂浜に寝転がった。

「わー星空綺麗。ねぇ、お兄さんも見てみ?」

「え? ああ」

 スミスに促されたので、俺も砂浜に寝転び星空を見上げた。

 無数とも思える星空が見え、宝石のように様々な色合いと明るさの星々が輝いている。

「流れ星見えたりしないかな?」

「なんだ? 何か叶えたい願いでもあるのか?」

「うーん、まぁ。あると言えばあるかな。ただ、流れ星見えたらラッキー! みたいな?」

「なるほど。ちなみに叶えたい願いってなんだ?」

 俺はつい気になりスミスに訊いた。

「えー? 秘密。お兄さんはなんかあるの?」

 叶えたい願いか。俺は自分のしたい航海ができて、満足している。

「これからも安全に航海できますように、とかかな?」

「うふふ。もっと大きいことを願えばいいのに」

 スミスは俺の方を向き、少しバカにしたかのように微笑んだ。

「いいじゃねぇか。俺の叶えたい願いも言ったんだからお前のも教えろよ」

「やだ。まぁ、いつか気が向いたら教えるよ」

 気が向いたらか。いつになるのやら。しかし、スミスの願い事か。美味しいもの一杯食べられますようにとかだろうか?

 スミスは起き上がり、俺を見下ろしながらポケットから何かを取り出した。

「じゃーん! これ見て! お兄さん」

 暗くてよく見えない。俺も起き上がり近くでスミスが取り出した物をまじまじとみた。

 これは……ディスミレじゃないか?

「お、お前どうしてこれを?」

 ふふーんと得意気な顔をした。

「いやーちょっと、どんな味がするのか気になって何個か手に入れておいたんだ」

 まじか。まさかこいつ、食べる気なのか?

「お前まさかこれ、食べる気か? 辞めた方がいいぞ」

「そうかなぁ。ちなみに毒はないよね?」

 少し不安そうな顔でスミスが訊いてきた。

「ま、まぁ確かに毒はないんだが」

 本には、食べると笑いが止まらなくなるものの、体に有害な成分は含まれていないと書いてあった。

「ならいける!」

 俺の警告も聞き入れず、パクッとスミスはディスミレを口に入れた。すると、

「あっはははは! 何これ、超不味い! うけるんだけど。あはははは!」

 突然、スミスが笑い出した。やはり不味いのか。それと食べたら笑いが止まらなくなるっていうのも本当らしい。

「あはははは! やばい! お腹が痛い! どうしようお兄さん!」

 笑いながら質問された。どうしようって言われても。どうしたらいいか分からない。これはディレスミスの効果が切れるまで待つしかないだろう。

「だから辞めておいた方がいいって言ったのに……効果が切れるまでおとなしく待つしかないな」

 そう言うと、笑った顔をしながら少し不服そうな顔をした。

「えー? あははは! それは困った。あははは! お兄さんも食べてみ? あははは」

 何をトチ狂ったか、もう一つ手に持っていたディスミレを俺の口に突っ込んできた。

 突然の出来事に思わず面食らい、思わず俺はゴクリと飲み込んでしまった。

 口全体に、今まで感じたことのない苦味と渋みが広がった。やはり不味いな。だが、問題は味じゃない。

「あはははは! スミス、お前何してくれとんじゃ! あはははは!」

 俺は笑いながらスミスに怒った。こいつ、なんで俺にも食べさせようと思ったんだ。

「あはははは! 私だけこのままじゃあれじゃん? あはははは!」

「あはははは! あれってなんだ? あはははは!」

「やっぱりさ。あはははは! 一緒に。あはははは! 苦しさを感じた方がいいんじゃなかと思って。あはははは!」

 こいつ、身勝手すぎるだろう。何だ一緒に苦しさを感じた方がいいって。やつあたりか?

「あはははは! お前、後で覚えておけよ。あはははは!」

「あはははは! お兄さん。あはははは! 喧嘩で私に勝ったことないじゃん。あはははは!」

 全くもってその通りだ。

「あはははは!」

「おほほほほ!」




 およそ一時間後、ようやく笑いの症状が収まった。

「ハァハァ……疲れたな」

「そ、そうだね。ごめんね。お兄さん。ちょっとおふざけが過ぎたよ」

 珍しく素直に謝ってきたので、怒る気が失せてしまった。

「まぁ、分かればいいよ。今日はもう寝よう」

 俺とスミスはテントに入り、布団を被った。

「久々に陸地で眠れるなぁ。一週間ぶりくらいか」

「そうだね。ふわぁ……眠い。お兄さんおやすみ」

「おやすみ、スミス」

 疲れからか、俺はあっという間に寝落ちした。


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