「初めまして、どちら様?」
そうして、今日も僕は少女と出会う。
「初めまして、どちら様?」
「こんにちは。君の友達さ」
ベッドに腰掛けている少女。僕の一番の友達である彼女は、施設のお医者様曰く、記憶をたった1日しか保てないという奇病を患っているそうだ。
一年前出会って以来、その病気が治る兆しは全く見えていない。
「ごめんなさい。私、あなたのことを知らないわ」
「いいよ。でも僕は一年前、君と友達になった。昨日の君とも友達なれた。だから今日の君とも友達になりたいんだ」
「そう……昨日の私とは何をしたの?」
「ずっと話してた。君はとっても知りたがりだもの」
「聞きたいわ」
「うん、話そう」
今日までのことをたくさん、たくさん話す。
話して、話して、話して、話す。
「――と、こんなことがあったんだ」
「ふふ。それはとても面白そうね」
「うん、とても面白かったよ」
「羨ましいわ。その日の私が」
「僕は今日だって負けないくらい面白いよ」
「奇遇ね。私もだわ」
時折そんなふうに感想を言い合って。
そうして、そして――今日が終わりを迎える頃。
「ありがとう。今日はとっても楽しかったわ」
「僕もだ。ねぇ、明日も来ていいかな」
「絶対来て。絶対よ」
「うん、また明日」
「ええ、また明日」
こうして、僕は昨日の少女に別れを告げた。
そうして、僕は明日の少女と出会う。
「――初めまして。どちら様?」
「――こんにちは。君の友達さ」