1話〜騎士団長は胃に穴が空きそうです〜
ーー城下町ベルヒルツルム
『ここらでいいだろ。』
アルスはナルメアをゆっくりと降ろしながら言った。
『んで?本題はなんだ?あんなに強引に連れ去った上に瞬間移動を三回繰り返したんだ。知られたく無い話題だろ?』
だいたい人に聴かれたくない話は瞬間移動を複数回使用してからアルスは話す。こうする事で探知魔法を振り切っているようだ。
あんなに適当に振舞ってるのも周りを油断させる為だろう。中々に食えない男である。
『当たりだ。単刀直入に言おう。お前のスキルは何だ?』
思わず私は首をかしげた。
『私のスキル?知らないな…鑑定士に鑑定不可って言われたからな…』
何らかのスキル発動しているが分からないと言われたが…この事か?うーん…ちょっと心配になってきたぞ…
『そうか…ならスキル適正が無い者は?』
彼は顔に皺を刻み言った。
『確かモミル副団長と本隊所属のアラン、一番隊のメル、二番隊のハラシ、候補生のナキ、バラスの計6人だな。スキル無しがどうかしたのか?』
どうやらスキル無しに用があるのか…安心した…コイツが真面目な話をするときは必ず面倒事が絡む。
私に関係無いとは言えないが、取り敢えずは彼奴らを呼ぶ準備くらいはしとくか…
『副団長にアラン、メル、ハラシにナキとバラスねぇ…最悪、6人纏めて、か。』
なんか不穏な単語が聞こえたんだがなぁ…アルスの事だ。多分私に害が及ばないように処理するつもりだろう。大丈夫かな…?
アルスがふと思い出したようにこちらを見て、
『あとナルメア、午後の会議の終わったあと、スキルを聖女に鑑定してもらえよ。悪い事は言わない…スキル不明だと後々厄介になる。今は言えないが、絶対面倒になるぞ…』
珍しくアルスが真剣な表情で私を見据える。あいつが滅多に見せない結構貴重な表情だ。
『なるほど、《未来視》で何か見えたのか…ありがとう、アルス。そうだな…お願いしておこう。滅多に聖女様なんて会えないし…』
アルスの《未来視》は未来が視えるというスキルだ。
だが、デメリットが結構多い。第一に視える未来を指定出来ない、第二に直接その事象に関して言えない、ただし、忠告なら大丈夫だそうだ。第三に突然未来が視えるようになる、この三点だ。
他にも様々なスキルが存在する。勇者なら《魔族特攻》だし、聖女なら《神々の祝福》、もっとポピュラーなもので言えば《付与》や《飛行》なんかそうだ。
他にも色々とあるらしい。
だが、《スキル剥奪》や《スキル複製》なんかは存在しない。コレは非常に謎だ。と、アルスは言っていた。
魔族なんかはスキル複数持ちや、異能とか呼ばれる相手のスキルを無視して能力を行使するとんでもない化け物もいるとかいないとか…まぁ、またアルスの受け売りだが。
『どうした?ぼーっとして?体調でも悪いのか?』
アルスは心配そうな表情を浮かべてじっとこちらを見つめてくる。
『ああ、ちょっとな…』
いかんいかん、ぼーっとし過ぎたようだ。というかまた厄介事ばかり…胃がキリキリ痛む…
それに、私のスキル名《疫病神の祝福》とかだったらどうしよう…そうしたら私の人生、お先真っ暗…
実際、ありえそうで怖い…
『まぁ、考え過ぎるのもアレだ、気分転換にお茶でもどうだ?最近面白い茶を購入してな…』
普段通りのアルスに戻った彼は家にに私を連れ込むつもりらしい。というか多分コレが本命だろう…
『そうだな…そうするか。よし、案内してくれアルス。』
私は笑ってこう付け足す。
『不味かったら全力で剣を振るうぞ?』
途端に彼の顔色が悪くなる。
『ああ、ちょっとヤバイかな?』
ーーその日の午前中にとある男の家で悲鳴が上がったと言う。
二話目です。意外と早く投稿出来て正直ビックリです!
ちなみに一応タグ付けしてますが団長は女性です…