魔王再臨、勇者招集…私の胃に穴を開ける気ですか⁉︎
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燃える悪夢に別れを告げて
村が燃える。
自分の家も、優しかった近所のおじさんも、仲が良かった幼馴染も、お父さんも、お母さんも…皆んな燃えてく。
全部あの黒い化け物のせいだ。
空を飛び、火を噴き、みんなみんな燃やしてくんだ。
『おいチビ助!お前ここで死ぬ気か?とっとと逃げるぞ‼︎』
兄貴が僕を掴む。
『やだ!離して!みんな助ける‼︎』
やめてくれ兄貴!まだ皆んな助かるかもしれないんだ‼︎
『もう手遅れだ‼︎現実を見ろ!』
『ウソだ‼︎そんな訳無い!』
兄を無理矢理引き剥がし僕は走りだす。
ーー村の中央広場に着いた。
…だが、前のような面影は全く無かった。
噴水は破壊され、花々は焼かれ、村の平和の象徴だった勇者像は黒い化け物によって破壊されていた。
『あっ…ぁぁぁぁ…』
声にならなかった。
この時間帯にはみんな居たのに…ガキ大将のムルス、幼馴染のアンリ、親友だったマル…
『な、なんで…』
僕は泣いた。あまりの理不尽さに。
…そこに一人の声が響く。
『おい!無理だって言ったろ!早くしないと…』
その再会を邪魔するかのように激しい魔力が迫って来る。
『ギシャァァ‼︎』
翼の生えたあの黒い化け物が迫ってくる。
『アクア・ジェイル‼︎』
兄貴が魔法を展開する。
黒い化け物も黒い炎で迎撃する。
『お兄ちゃん‼︎』
僕は悲鳴を上げた。
魔法は相殺し周囲に白い煙を撒き散らす。
『今のうちに行け!シルヴァ街の避難所だ!俺は後から行く!いいな!』
兄は切羽詰まった声で僕に言い放つ。
『でも…』
『大丈夫だから、さっさと行きな!後で会おう!』
無理に明るい声で更に兄貴は言う。
『約束だよ…?』
『おう!兄ちゃんが約束破った事無いだろ?』
『うん!』
そうだ。僕の兄貴は約束を破った事がない。だから…きっと…。
僕は駆け出す。地獄と化した故郷を背に…。
ーーちょう!団長‼︎起きて下さい‼︎
『う?んぁ?』
間抜けな声を出して私は起きる。
『もう!団長!起きて下さい!』
白い鎧を纏った女騎士と男騎士が私のベッドの横に立っている。
『すまん。プリシラにアルゲイツ。だが、今日は私は珍しく休日なのだが…』
私はベッドの横に貼ってあるカレンダーを見て今日のスケジュールが空白になっているのを確認する。
『何寝ぼけた事言ってるんですか?仕事じゃなくて私達に稽古つけて下さるんでしょ?』
『そうですよ!団長が初めて団長になられてから初めての直接の稽古ですから我々楽しみなのです!』
私はん?と首をかしげる。
『確かに暇な時に稽古はつけてやるとは言ったがな…仕方ない…午後からだ。午前中は私が用事があるからな。』
午後はゆっくり寝るつもりだったんだけどなぁ…
…仕方ない。可愛い部下達からのお願いだ…。
『やったあ!』
『意外とイケたな姐さん!』
二人共喜んでいるし…まぁ、いいか。
『朝食を作るが、二人は食べて来たか?』
『いや、まだです!』
『じゃ、私もまだです!』
『仕方ない…四人分作るか…』
朝食はトースト2枚に目玉焼き、ベーコン3枚にレタスだ。簡単だしね。
私は朝食の準備に取り掛かる。
『2人とも、そこの椅子に座っておいてくれ。』
私はそう言うと皿を手早く並べ、冷蔵庫から卵とベーコンを取り出し、フライパンに油を注ぎ、ベーコンを焼く。
ジュウゥゥゥ…と肉の焼ける音といい香りが部屋に広がる。そうするといつも通り…
バン!と扉を勢いよく開けられて、
『フハハハハ‼︎私が来たぞ‼︎』
いつも通りの高笑いと共にあの野郎が来る。
『今は部下も居るから少し自重してくれ…』
『なんだ?朝から美女美男を連れて優雅に朝飯か?いい御身分じゃないか〜このこの〜!』
あの野郎はそう言うとリビングのソファーに座りヘラヘラ笑いだす。
『お、王宮魔術師長殿⁉︎』
『アルス殿⁉︎団長、どういう事です⁉︎』
部下達は大物の登場にビックリして敬礼しながら私に文句を言い出す。
『立場的には彼と一緒だし気楽にしててくれよ。ほら、お前からも何か言ってやれよ?』
アルスはヘラヘラ笑いながらこちらを見る。
『…騎士団長として命ずる。この不届き者を即刻排除せよ。』
と、私は朝の爽やかな時間を邪魔された苛立ちを含ませて脅した。すると彼は慌てて、
『あーもう悪かった悪かったって‼︎実は彼の所によく朝飯をたかりに来てるんだよ〜ほら!説明した…ああ!剣は抜かないで!あと、大事な報告…ヒィッ‼︎』
彼が無表情になり殺気を放ち出した。…アルスは更に慌てている。
『はぁ…事情は分かりましたが…なんで私達にそんな大事な事教えて下さらないんですか!それに…』
と、プリシラは文句を言い、
『そうです!団長はまだ着任一年なのに何で…』
と、アルゲイツも文句を言いだした。
『わかった、わかったから!あ、ベーコンが…』
話し込み過ぎてベーコンを焦がしてしまったようだ。
『おやぁ?ナルメア殿?珍しいですなぁ〜』
アルスの野郎が嬉々として弄りに来る。後で覚えておけよ、の意味を込めて睨む。
『そんなに見つめないでくれよ…惚れてしまうだろ…』
『チッ…』
『ねぇ、今舌打ちしたよね⁉︎一応僕年上…ねぇ聞いてる⁉︎』
『あ?どうやら突発性の難聴になってしまったようだ。』
『いや、絶対聞こえてるよね⁈』
『そう言えば、報告とは何だ?』
ナルメアは露骨に話題を逸らし、口笛を吹く。
『そいや、今日の午後から緊急の呼び出しだと。俺や聖女や第一王女様、第一王子様もお呼び出しって訳さ。』
ナルメアはその言葉に思わず眉をひそめる。
『第一王子に王女だと?王様はまだ御在命だし…恐らく魔王関係か…。アルス、そこんとこはどうなんだ?』
眉を潜めて彼は言う。
『さあ?内容は分からんが多分そうだろうな。』
『はぁ…』
彼はこれからの事を考えると胃が痛くなった。恐らく勇者召喚の事か獣人関係との同盟…または王の継承権の事だろう。
『まあ、そう言う事だ。じゃ、お二人さん、コイツ借りてくぜ〜』
と、彼は言うなり無理やり私を担いで連れ去ってゆく…
『あっ!団長!』『そんなぁ!』
団員二人の悲鳴が寮にこだまする。
ーーこれは、様々な種族の存在する世界、ユグラシドルの中で繰り広げられる、とある国の騎士団長のお話である。
こう言った文章を書いて投稿するのは初めてなので何分至らない点があると思いますが何ぞとお許しを…(´・_・`)