柊翔太という男の子
「柊くん!?何してるの!?」
私は思わず声が大きくなる。
「しー。杏ちゃん。見つかるでしょ。」
そう言って、柊くんは靴を脱いで窓を乗り越えて私のいる教室に入ってきた。
「よいっしょっと・・・。」
「戻らなくていいの?」
私は一応聞いてみる。
「いいの、いいの。杏ちゃんとお話ししたいからね。」
そう言ってウィンクをする柊くん。正直、チャライ。
「ねぇ、杏ちゃん。抜け出さない?」
柊くんはそう言った。抜け出す?考えたこともなかった。学校をさぼることすらしたこともなく、こうやって身体測定をすっぽかしていることに多くの罪悪感を抱くような私にはそのような感覚は全くと言っていいほどなかった。
「ダメだと思う・・・。」
素直に私はそう言った。
「よくないことだよ。抜け出すのは・・・。」
私はそんなことを言っていた。
自分が抜け出していて、秘密を隠していて、それを知られたくないがためにさぼっているにも関わらず。
自分に言っているようにも聞こえた。でも、それは同時に自分を守るためのただの言い訳。いい子のふりをしてきた自分の生き方に他ならなかった。
偽善者ぶって、自分は嘘偽りで固め、それでもなお他人には正直であるべきだという幻想を押し付ける。強要する。私は気がついたらその場から走り出していた。多分、泣いていたと思う。だって、自分はそういうものから抜け出してきた存在なのだから。
「ちょ・・・。どうしたの!?」
という柊くんの声がしたけども私は走り出した足を止めることはできなかった。
2時間ぐらい経っただろうか・・・。
私は屋上に上がる階段の踊り場で泣いていた。
というのも屋上は鍵がしまっていて入れなかったからである。
しかたなしに屋上の扉の前で体育座りで少し泣いた。
少ししてから柊くんのことを思い出したが、私があまりにも勝手過ぎた。
申し訳なく思う。
「ここにいたんだ」
階段の端っこからひょこっと顔を覗かせる柊くんがそこにはいた。
「となり、いいかな」
柊くんはそう言ってと私の許可を待っている。
私が頷くと隣にきて話を始めた。
「今の。断られたらどうしようかと思ったよ。」
緊張したー。と柊くん。
でも私は何と言えばいいのか分からなかった。
自分のことを心配してくれたであろう柊くんに偉そうに注意した挙句、急に走りだし、さらにはこうして探させたわけである。私ってダメだな。そう思った。
「ねぇ。屋上、好き?」
柊くんが沈黙を破ってくれた言葉がこれだった。
「うん。でも鍵ないから・・・。」
私がここにいる理由の一つだ。
「これ。」
そういって柊くんはシルバーの鍵をだし、立ち上がって屋上の扉を開けてくれたのだった。
翔太くんかっこえー
これからどうなるんですかね??