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第3話 数十年ぶりの

深夜の勢いで書き上げてしまいました。

 

 プラテリア王国は大陸の内陸部にあり、国土の半分以上を占める草原を利用しての牧畜・羊毛の盛んな国だ。

 プラテリア王が住む王都ヴィーゼは、その広大な草原を見渡せる小高い丘の上に建てられていた。

 王都は4層で構成される。

 第1層は王が御座すその居城であるプラテリア城。

 第2層は貴族の住む上流階級地区。

 第3層は商人、職人が住む商業区。

 第4層はいくつもの農民の集落が点在し、広大な麦畑が広がる農業地区。

 各層は厚さ3m高さ10mにもなる分厚く堅固な壁によって区切られ、壁の上部は通路になっており、一定の間隔で歩哨が詰める見張り台もあった。

 1層には南に正門が一つあるだけだが、2層では南北2箇所に門があった。

 3、4層には東西南北に4箇所の門が設置され、次の門までつながる大通り沿いに構える家や店舗は権力の象徴であった。

 2層の南大通りには有力貴族の豪邸が並び、3層の南北大通りには力を持つ商会の店舗や各種ギルドが立ち並んでいた。

 4層は特別で各層と比べ物にならない長さの大通り沿いには、旅人や冒険者、行商人のための宿や酒場、露天商が軒を連ね、壁の外で活動する者たちのために、各種ギルドの出先機関もならんでいた。

 実際のところは冒険者が持ち込むものは物騒な物や異臭を放つ物もおおく、過去には問題になることがあったようで、街中に持ち込ませない思惑が大きいようだ。


 そして、第5層。

 騒ぎを起こして壁の中に住めなくなったもの、地方から職を求めてやってきたが壁の中ではやっていけなかった移民、親の後を継ぐことができなかった街人、取引に失敗して全財産を失った商人、珍しいところでは没落した貴族など、壁の内側で生活できないものが群れを成し、無機質な壁に寄り添うように作られた無数の集落。

 それこそが、実際には在るのに存在は認められていない貧民地区と呼ばれる第5層だった。

 5層には魔物や猛獣などの外敵から身を守るための壁などはなく、あって家畜が逃げ出さないように張られた貧相な木製の柵くらいのものだ。

 上空から見ることができたなら、初期には切り株状だった都が現在は、なるとのように見えるだろう。

 これは5層の集落は哨戒の妨げになるため、暗黙の了解で見張り台の近くには作られないためだ。


 そして、無数にある貧民集落の1つに今新しい命が産声をあげた。




 0歳


「おぎゃぁぁおぎゃぁーー」


 なんで自分は泣いているのんだ。別に悲しいわけでもないのに、真人は泣き叫ぶ自分自身に困惑する。

 目はまだ開けることができず、体の自由は利かないが、泣き叫ぶほどでもないはずだ。

 自分の意思とは関係なく、まるで自分が宿ったこの小さな体に引きずられているようだ。

 この日は睡魔が襲ってくるまで泣き続けることになった。



 目が覚めると、誰かが自分を覗き込んでいた。

 視界がぼやけうまく見えないが、その人は目を覚ましたばかりの自分を優しく抱き上げる。

 室内なのか周囲は薄暗い。

 柔らかな手や今眼前にそびえ自身が顔を埋める大きく柔らかな双丘から、この人が今生の母親なのだろうと思う。

 顔は見えないが、彼女に抱かれているとなぜか心が休まるのを感じた。

 こんなに心が安らぐのは一体何年ぶりのことだろう。


「……ニール。…私のニール。元気に大きくなりなよー」


 彼女の声は、水の中にいるようにくぐもってよく聞こえなかったが、なぜか何を言っているのかはよくわかった。

 どうやらニールというのが今生の自分のなまえらしい。


「ニール、そろそろお腹がすいてきたかなー?」


 戸惑ってばかりで忘れていたが、そう聞かれると確かに空腹感があった。


「うー、あぁー(あぁ、確かに)」


 何気なく同意すると、自分を抱きかかえている彼女の体がビクっと一瞬止まったのがわかった。

 彼女は後ろを振り返って周囲を確認し、首をかしげた。


「…今、ニールがしゃべったの?」


 ニールは彼女が何を言っているのかを理解すると、背筋が凍るような感覚に襲われた。


「お、おぎゃぁー(お、おぎゃぁー)」

「そうだよね、そんなわけないよねー」


 そうだ神からそんなスキルを貰ったのをうっかり忘れていた。

 考えてもみれば、聞こえる言葉だけが翻訳されるだけなんてわけがなかった。

 しゃべった言葉が例え赤ん坊の言葉でも日本語でも意味を持つものなら翻訳されてしまうのだ。

 あぶないあぶない。

 生まれたばかりの新生児がまともにしゃべるなんて、悪目立ちもいいところじゃないか。

 ステータスを開くと、神から貰ったスキルをそっとオフにした。

 この便利スキルもしばらくは使えなさそうだ。


「―――・・・――、―――・・」


 彼女が何かを話しかけてくるが、まったく理解できなくなっていた。

 何を話しているのかはわからないが、優しい気持ちだけは十分に伝わってきた。

 優しく頭を撫でられ、思わず声がもれた。

 ぼやけていてよくわからないが、彼女の赤茶けた髪の毛もシャープな輪郭も日に焼けて健康的な肌も。

 どれをとっても前世の母とは全く違うのに、なぜかオーバーラップする。

 母に撫でられるなんて何十年ぶりだろう。

 母に会えたからか、もう母に会えないからか、異世界にきたことの実感か、元の世界への未練か、いろんな想いが綯い交ぜになって、ほろりときてしまった。


「んぎゃぁぁぁぁぁぁ」


 心情的にはホロリとしただけなのに、体の方は元気に泣き出してしまった。

 体が心に引きずられるように、心も体に引きずられるようだ。

 なんだか少しずつ悲しくなってきた。


「・・・――・―――・・」


 母はトントンと背中を軽く叩きながら揺らしてあやしてくれる。

 そして、おもむろにシャツをたくし上げた。


 ぷるん


 目の前に出産後でパンパンに膨らんだ双丘が御出でになり、その頂点には神々しいばかりのピンク色の突起が鎮座している。

 神々しく、後光がささんばかりの大パノラマに年甲斐も無く大興奮。

 口をあけて唖然としていると(断じてうっとりと見とれていたわけではない)開いていた口にピンクの突起物が突っ込まれた。

 えーーー。若いみそらであんた60過ぎのおっさん相手に何やってんですかーーー。

 おっさんの心大混乱。

 おっさんだって、枯れていたって男なんだ。

 ……いかんいかん。

 すでにぼろ雑巾のような理性みたいなものを総動員するが、幼い体は必死に吸い付き、搾り出すために張りのある双丘をもみしだいた。


 お腹がいっぱいになると、抗いがたい魅力溢れるピンクの突起から自然と口から離れた。

 満腹になりゆらゆらと揺られると、すぐに睡魔が襲ってきた。

 深い眠りに落ちる間際になって、やっと理性を取り戻したおっさんは、自分が赤ん坊になっていることを思い出した。

 数十年ぶりに身を潜めていた欲が鎌首をもたげかけたが、若くとも自分の母なのだと思うと、すうーと身を潜めた。



何かを作り上げるということは、とても力がいりますね。

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