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将棋部は今日で廃部

この物語は、一度は居場所を失った少年が、己の誇りと盤上の駒だけを頼りに強豪の門を叩くところから始まります。圧倒的な才能を持つ天才特待生・金子ゆうとと、愚直に盤に向かい続けてきた無名の飯田しん。相容れない二人のプライドが、入学式前の誰もいない部室で静かに激突する――熱き青春将棋バトルの幕開けを、どうぞご覧ください。

「将棋部は、本日をもって廃部とします」


顧問の淡々とした声が、静まり返った部室に響いた。

理由は単純な人数不足。どこにでもある、ありふれた話だ。

けれど、僕の胸には割り切れない悔しさが渦巻いていた。たったそれだけの理由で、大好きな将棋を指す場所を奪われる。


中学三年の春。僕たちの将棋部は、あっけなく終わりを迎えた。


──あれから一年。


桜が舞う高校の通学路を、僕は息を切らせて走っていた。二度と後悔したくない一心で選んだのは、県内屈指の将棋の強豪校。だが、その初日から大失態を犯そうとしている。


「やばい、入学初日から遅刻とか笑えない……!」


時計の針を気にしながら角を曲がると、前方にゆっくりと歩く小柄な生徒の姿が目に入った。同じ制服を着ているが、焦る様子は微塵もない。すれ違いざま、相手の視線がじっと僕に注がれた。


「君も一年生だろ? 急がないと遅刻するよ!」


声をかけて追い抜こうとした僕に、そいつは気だるそうに言葉を返した。


「何言分かんないこと言ってんの。入学式、八時半からだけど」

「……え?」


足を止め、スマホを確認する。──八時半。僕が勘違いしていただけだった。恥ずかしさで顔が熱くなるのを隠しながら、僕は息を整えた。


「あ、教えてくれてありがとう。僕は飯田しん。君は?」

「……金子ゆうと」


金子ゆうと。聞き覚えのある名前に胸が跳ねた。

記憶の引き出しが繋がる。あいつだ。中学の全国個人戦で、圧倒的な強さを見せて頂点に立った天才。全国から猛者が集まるとは聞いていたが、まさか初日に出くわすとは。


「やっぱり、ゆうと君も将棋部に入部するの?」

「入部?」


ゆうとは足をとめ、蔑むような視線を僕に向けた。


「一緒にしないでよ。僕は『特待生』として呼ばれてるんだ。無名の一年生と同列に扱わないでほしいな」


鼻で笑うような態度に、カッと頭に血が上った。

特待生だから何だというのか。盤に向かえば、過去の実績も立場も関係ないはずだ。


「……じゃあ、今から僕と指せよ」

「は? 入学式まであと二十分しかないんだけど」

「十五分で終わらせる。僕が勝つから大丈夫だ」


生意気な顔に動揺の色が走るのを、僕は見逃さなかった。

僕たちはそのまま校舎へ向かい、解錠されていた将棋部の教室へ足を踏み入れた。静まり返った部屋に、二人分の足音が響く。


「無名のやつが十五分で僕に勝てるわけないだろ。無駄な足掻きはやめなよ」


ゆうとは盤を挟んで座りながら、最後まで余裕の笑みを崩さなかった。だが、その瞳には確かに僕への警戒心が灯っている。


「──それじゃあ、始めようか」

最後まで読んでいただきありがとうございます!


主人公・飯田しんと、生意気な天才特待生・金子ゆうとの出会いのエピソードでした。

15分という超早指し勝負の中で、しんがどのような戦い方を見せるのか、ぜひ次話も期待してお待ちください。


面白いと思っていただけましたら、応援よろしくお願いします!

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