第7話
遠くに見える紅葉を眺めながら走る。元々の植生なのか植林のミスなのか杉の中から疎らに顔を覗かせる紅葉がなんとも可愛らしく見えると同時に、周りに馴染めなかった自分を想起させる。そして植物なんかに自己投影した事実にまた不快感を感じてしまう。
ふと、死にたくなることがある。
別に本気で死にたいわけでは無いが、ただ現状を変えたいと思って始めた行為が思いのほか成功したら、成功したままセーブしたいのが人間的じゃないかと思うのだ。もし私が今死んだら界隈ではという枕詞ありきだが、有名人が死んだとなる。そして私は私という主体が無いから、ある種では死んだ瞬間で時間が止まっている考えることが出来る。未来はとても恐ろしく1年どころか1週間後の世界すら予想できないことだらけだ、この職業なら尚更。未来に生きたくないがあまり永遠の今を求めるのも一興だが、直接的な自傷行為すらできない私が自分自身に手をかけられるだろうか、不可能だろう。
どんなに劣勢でも私は諦めない。諦めた瞬間敗北を肯定することになる。それは認められない、絶対にだ。1%でも勝てる確率があるならそれに縋る。プロスポーツも凄まじい劣勢から逆転することが稀にあると配信でよく熱弁する。それに対するよくあるコメントが「でもお前プロじゃないじゃん」だ。正論だ。私はプロでもなければランカーと言われる最上位プレイヤーでもない。 「でも相手もプロじゃないよ、プロがミスする確率と俺らがミスする確率。そしてそれを咎められる確率は大きく変わらないんじゃない?」 結局のところ諦める理由は大抵の場合「なんかめんどくさくなった」が殆どだ。ゲームはどこまで行っても娯楽、娯楽で精神をすり減らしたくないという気持ちも理解は出来る。しかし、人間相手にストレスフリーで勝ちたいはメンタルが対戦に向いてないのではないだろうかと思うが、言いたいことを言いすぎてもダメなのだ。この仕事、最初の立ち位置を間違えてしまうと相当なバランス感覚を求められる。台から降りるのは簡単だ。昇りなおせないだけで。




