第6話
陽炎が揺れる中、私は走る。服は重く、汗で目が痛む。道中自販機でペットボトルの水を1本、駅で1本買うが、毎日240円ほどの出費は意外と重い。
シャワーを浴び、髪を乾かしながらネットニュースを見る。吉報と凶報の見出しが同時に目に入るのは現代らしくて嫌いではない。しかし、ニュースの話題は諸刃の剣だ。私は日に8時間から15時間配信活動をしている。言い換えれば仕事だ、ニュースを見ることは当然出来はするが大抵は話題に出せない。視聴者はゲームに熱中している私を求めている。だからゲームしている姿を提供して、対価として時間を貰うのだ。政治やスポーツ、経済、芸能人のスキャンダル。話題にしてリスクが殆ど無いのはスポーツと芸能人の結婚報告ぐらいだろう、ほかは大抵地雷原でダンスをするようなものだ。活動者として生き永らえたいならするべきではない。
キャラクター性というのは狡い。上手ければ尊敬され、下手なら笑われる。どちらでも“役”が立つ。だが中途半端は存在しない。私はその中間だ。上位8%、だが突出はしていない。極端にバカでも極端に天才でもない。だから、私というキャラクターは空気に近い。
ただ人より画面に向かって話せる虚しさに耐えられるだけだ。




