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逃避行  作者: あの山田
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第5話

 佐藤が誘ってきた場所は個室の焼肉店だった。個室じゃないと話せない事があるような関係でも無いだろうに、なんて思いつつ、受付に待ち合わせと伝えて部屋を招待してもらった。開口一番佐藤が見せてきたのは配信サイトのアカウントだった。それも私の

「これ、お前だろ」

流石に面食らったが肯定した。警戒したような表情を読まれたのか佐藤は安心するように告げた 「別に強請るつもりなんてねぇよ、ただの確認。お前とあまりに似ている声と喋り方してる人間がお前自身か、別人か気になってな。」

と言ったタイミングで事前に注文していたであろう肉が届いた。私から見たら十分に着慣れたスーツで焼肉をしている佐藤は社会人と見紛う程空気と調和していた。「俺が出す」って言葉は狡いよなと思いつつ、網に載せられた肉を眺める。

「俺が出すって狡いやり方した手前信じられないだろうけどさ、誰にも言わないからどんぐらい貰ってるか教えてくれないか?」

やっぱり来たか、別に言えないことはない。ただ、言って定期的に会う人間との関係が拗れるのは良い気分にはならないだろう。それがあと1年も無いとしてもだ。仕事の良くない部分を列挙しても、命にかかわるとかでない限り正当に評価できる人間は多くないのだ。それだけ人間は金に弱い。

「今年は…平均の2,3倍ぐらいかな」

けど福利厚生とか無いし、税金関係は基本全部自分で処理してるけどね。と付け足しておいた。 「時間辺りだと意外と普通だな」

実際自給換算だと極端に多い訳じゃないだろう、基本週7で8~15時間配信して税金関係の処理を自分でしてこれだ。佐藤は私の配信稼働時間を確認したうえで質問したのだろう、焼けた肉を摘まみながら返事をした。周りの人間の懐事情は気になってしまうが人情だろうと思いつつ私も肉を食べる。

「本当に出さなくていいのか?」

会計は本当に佐藤が出してくれるようだ。ガムを貰い店を出る。

「今日はありがとうな」

会計を終えた佐藤に言ったが、佐藤はこちらこそありがとうと言いながら帰った。

家に着くころにはガムの味は無かった。

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