第4話
ふと、「今のままでいいのか?」という疑問が浮かぶたび、私は何も考えないようにしている。考えてしまうと、十年前からの自分を否定し続けなければならないから。
地面に舞った桜を踏みしめながら走る。「もう一度桜が散るころには佐藤とばったり会うことも無くなるのかな」なんてことを考えながら走っていたら気が付けば駅前まで来ていた。休憩ついでに桜味のジュースを買ったが、2重の意味でハズレだった。甘すぎるし、肩で呼吸している時に飲むと余計に喉が渇く。一口ごとにため息を漏らしながらちまちま飲んでいたら後ろから声をかけられた。
「今日もランニングか?」
佐藤だった。もう就活は終わったろうにスーツを着ている。
「なんでスーツ着てんだ?もう就活終わっただろ」
佐藤は少し考える様な素振りをしてから答えた
「ほら、着慣れてない服って動きにくいし、どうしてもちょっとカッコ悪くみえるだろ?」
なるほど、スーツを着続けることは分かっているから慣らすために普段着にしているのか、と納得しかけているところに続けて佐藤が答えた
「それに結構楽なんだよ。オシャレとして着る物じゃないからさ、制服みたいなもんだよ」
それは確実に私の恰好を見て考えた物だろう。そして突然何かを思い出したかのように告げた 「今から飯行かね?俺が出すからさ」
唐突な誘いで驚いたが、すぐに平静を取り戻して
「飯は良いけどシャワー浴びてからでいいか?場所教えてくれたら1人で行くから」
佐藤は肯定してすぐにどこかに歩いて行った。私は家に戻りすぐにシャワーを浴びた。




