第3話
努力が即座に反映されるものほどモチベーション維持に役立つものはない。大学から逃げた時もこんなこと言ってたな…根本的な部分でいうとゲームのリアルタイムされるランキングに影響されているのだろう。自分の立ち位置が分からない状態で頑張れる人はそう多くないのだ。SNSでの自慢、不幸自慢とかが流行るのも理解できる。皆、自分の立ち位置を求め彷徨っているのだ。
基本的に私はMOBAという、5対5で拠点を壊し合うゲームを主に配信している。ミスひとつで、強くなるタイミングが遅れ、相手が先に完成する。人生と違って、努力の遅れが目に見える世界だ。
「最近全然勝てないんだよなぁ」
事実だ。直近20試合で3試合しか勝ててない。原因は明らかに自分にもある。しかし、「君は悪くないよ」という言葉を渇望していることも事実だ。誰だって負けている時に「お前の責任だ」なんて言われたいわけじゃない。その時あるコメントが目についた。
「そりゃへたくそなんだから負け続けて当然だわな」
事実だ。《同じレベルのプレイヤー》を集めた試合で負け続けてるというのを客観的に評価するなら「そのランクに相応しくない」ということになる。しかし、これだけは認められない。事実だとしてもだ。プライドが許さないのだ。 「逃げ続けた人生にプライドなんてあるものか」と普段の私なら笑っていたのだろう。しかし、最初に学校から私を逃げさせたのがこの「MOBA」と呼ばれるジャンルのゲームなのだ。負け続けて憂鬱な気分のなか、こんなこと頃を言われて平静を保っていられる訳がない。しかし、返す言葉がない。1試合単位でいい訳するなら幾らでも出来るのだが、20試合中17敗を1試合ずつ言い訳するのは見るに堪えないだろう。もっと言うならこれだけ負けて自分は悪くないというのは無理がある。
「そうだね」
唇を震わせながらそう言うしかなかった。
桜の蕾を見ながら走る。佐藤は就活を終え今頃卒業研究とやらに励んでいるのだろうか。春は皆忙しいからだろうか、少し実入りが少ない。大学を辞めてから日に日に将来に対する不安が募っていくのを自覚する。正確には「配信者」という生き方に専念をしてからだろう。福利厚生なんてものも昇級という概念もない。もっと言えばこちらに過失がなくとも、配信サイトのミスで仕事の配信が出来なくなる可能性すらある。佐藤の就職先はどこだったかな、名の知れた大企業だったのは覚えているが、いずれにせよ最近の大企業は福利厚生やコンプライアンス意識は一昔前の意識からすると過剰レベルだろう。
また距離が開いた。
春の暖かさは感じられない。




