第2話
最近は日が昇るのも遅く、凍てつく空気が顔に刺さってくる。冬に走るのは特に気分が良くなる。目が覚めるし、乾燥して冷えた空気がすべての輪郭を強調させてるような気がするからだ。そして、少し厚着して限界まで走る。足が痛くても、胸が痛くても、限界まで走る。走り終えたらすぐに上着を脱ぎTシャツ姿になる 「冬はやっぱりいいね、この湯気がモチベーションになる」 体から立ち昇る蒸気は自分の努力を誇示する様で、自信とモチベーションを与えてくれる。
「さて、駅でココア買って帰るか」
駅の自販機で飲み物を吟味していたら後ろから肩を叩かれた 「久しぶり」 耳と鼻を赤くした佐藤だった。
「久しぶり、就活の調子はどうだ?」
3年の冬、そろそろ決まってても良さそうな時期ではあるが
「まぁまぁかな、第1志望からはまだ連絡来てなくて、第3、第4志望からは内定、第2は落ちたよ」
「第3、第4からは内定来てるのか!第1の連絡が来たら一段落するだろ?久しぶりに飯行かないか?」
就活については全く分からない。だが、少なくとも第3、第4志望から内定が来てるならもう就活打ち切ってもいいんじゃないか?
「あぁ、いいぞ」
良かった。バレてないと思うが心臓はランニングしている時と同じぐらいうるさかった。まさか旧友を食事に誘うだけでここまで緊張するとは思っていなかった。
佐藤との食事は全国チェーンのファミレスになった。
「そういえばお前最近なにしてんの?大学急に来なくなってさ」
何かしている、何もしていないどちらも言いたくなかった。
「まぁ色々、何とか生活は出来てるかな」
佐藤は、は~んとあまり興味無さげな反応をした直後不思議そうな顔をした。
「待てよ、でもお前この前会ったの15時だよな?」
変なところで察しがいいよな
「いや、別に気のせいかも。で、注文は?」
食事するために店に入ったのにすっかり失念していた。
「じゃあハンバーグセットにしようかな。佐藤は?」
「ん~じゃあ俺はピザにしようかな」
お互い食事を半分ほど終えたころ、佐藤が切り込んできた
「お前結局なんで大学来なくなったんだ?」
本心では辞めていることにうすうす気づいているだろうが、いちいちオブラートに包んでくるところに腹が立つが
「そもそも、俺がなんであの大学に行ったか話したっけ?」
私や佐藤が通ってたの大学は巷でいうFランである。私は高校の成績と面接だけで受かった。
「あ~確か学力試験無しで面接だけで入学できるからだっけ?」
「そう。そもそも高校の成績も出席が全然足りないのを担任が面談1時間したら全部何とかする!って強権を発動して何とか卒業したレベルだよ」
佐藤は色々察したようだが、彼の口からは言いにくいようだ。
「まぁ君のお察しの通りだよ。そもそも勉強のモチベーションもないし、怠け切った学生が大学に行って簡単に変わるわけがない。そんでダラダラやって気付けばドロップアウト自主退学」
私はわざと大げさな手振りをして見せながら言った。
佐藤はからは乾いた笑いだけが聞こえてきた




