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第八話:魔王クエスト

2日ぶりの投稿です。


 殺傷力を高めた金属製のトゲ付きこん棒を手に持ちながら、ずっと睨んでいるラティの怒りは凄まじいとしか言えない。


 彼女の目の前で俺と魔王はお互い向き合うように正座している。ちゃんと謝罪しているにも関わらず、怒りの炎が鎮火してない。


 ロールプレイングゲーム風に表現するとこんな感じだ。


【シエル、魔王のターン】

 魔王とシエルは土下座した。

 ラティには効果なかった。


【ラティのターン】

 ラティはこちらを睨んでいる。

 シエルと魔王は精神にダメージを受けた。


【シエル、魔王のターン】

 魔王は謝罪した。

 ラティには効果なかった。


 シエルは謝罪した。

 ラティには効果なかった。


【ラティのターン】

 ラティはトゲ付きこん棒を装備した。

 シエルと魔王の心拍数が急上昇した。


【シエル、魔王のターン】

 魔王とシエルは向かい合って正座した

 ラティには効果なかった。


【ラティのターン】

 ラティはこちらを睨んでいる。

 シエルと魔王は精神にダメージを受けた。



 ラティを巻き込んだ寸劇は簡単に許される事ではないようだ。


 それからおふざけ無しで魔王から説明を受けた。


 先ずはラティの件だが、

 魔王城から北西に進んだ場所に幽閉されている。期間は三百年。特別にモモノーラ様の加護持ちである俺が助け出すなら許してくれるそうだ。


 直ぐに助けに行こうと思案中に不可能だと告げられる。単純に実力不足。道中の魔獣は強く、門番は更に強いと言われた。助けたいならもっと強くなれと助言された。


 ラティが使者になった経緯も聞いた。

 魔王の部下で俺の好みに合いそうな女性悪魔が彼女であり、幽閉されて暇なラティも承諾したから。罰を受けている最中なので、魔王の魔術で分体を作った。制約により本来の能力が制限されているそうだ。


 軽くスルーしそうだが、女性の好みという個人情報がモモノーラ様から魔王に流れた。俺しか被害を受けないので誰も気にしてないが、この世界ではコンプライアンスが存在しないらしい。


 次に俺の件だが、

 ウィーガン子爵邸まで連行されると平凡な生涯が確定するらしい。


 俺に対して恨みなどなく、悪評が上がっている息子のケインズは三男で跡継ぎでない。秘密裏に粛清したいが、万が一露見した時の影響を考慮して行動に移せなかったようだ。ゴブリンに扮して女性を襲った息子を退治した俺を表だって喜べないが、感謝してるとか。


 子爵としては俺を処罰せず、不幸な事故として処理される。


 その後はこれといった事件を起こさず、ありきたりな生涯になる。モモノーラ様の未来視なので本当かどうかは、魔王も判断出来ないらしい。


 不憫に思ったモモノーラ様が魔王に相談して新たな未来となる分岐点を用意した。ラティが言ってた選択とはそういう事だ。



 いきなり立ち上がった魔王は、黙って玉座まで歩き、何事もないように座る。真剣な表情で口を開いた。


「さて、本題の話をしようかと思うがよいか?」


 駄目に決まってるじゃないか。

 しれっと自分だけ抜け駆けしてズルい!

 未だに正座してる俺は完全にタイミングを逃した。


 ラティに顔を向ける。ニッコリした笑顔で返された。武装解除してないけど。


 正解がわからん。

 だが足が辛くなってきた。限界が近い。


「シエル、こちらに来なさい。それからラティフォリアもそのくらいにするのじゃ。真面目な話になる」

「申し訳ございません、魔王様」


 ラティが謝罪し、武装解除してくれた。


 魔王が魔王らしく振る舞っている。

 なんか釈然としないけど、俺だけ?


「シエル、近い将来に何か不吉なことが起こりそうで胸騒ぎがするのじゃ、お主には世界を旅して情報収集して欲しい。言うならば、わしからのクエストじゃ。どうじゃ引き受けてもらえるか?」


「ちなみに断ることは?」


「もちろん可能じゃ。お主の人生じゃからのう。ただしその選択は愚者である。わしにも魔王としての立場がある。ここまでお膳立てして断るならそれなりの処罰がある」


 ほんの一瞬だが、魔王の身体からどす黒いオーラが漏れだした。とんでもない悪寒がする。強者が放つ威圧でもなく、この場の空気が冷え込んだ。


 好好爺(こうこうや)だと思っていたが、認識を改めてなくては。

 やはりコイツは魔王なんだ。


「……俺を殺すのか?」


「そんな事はせんよ。そうじゃのう……、恋人が出来ないように女子に好かれない呪いでも」


「やります。やらせて下さい」


 魔王が言い終わる前に食いぎみで全力で答えた。


「ほう、わたしに告白しといて女子に嫌われたくないとは面白い事を言うではないか? シエル、わたしに一途だと言ってたが、どうやら認識にズレがあるようだ。腰を据えて話し合わないか?」


 隣で話を聞いていたラティが俺の肩に手を置いた。


 難局を乗り越えた先に難局があるとは誰も思うまい。助けを求めるように魔王を見ると、顔を逸らした。


 非常にまずい。上手い言い訳が浮かんでこない。今すぐタイムリープしたい。女神の加護で世界線を移動出来ませんか?


 脳がオーバーヒートしてもあり得ない程に頭をフル回転された。モモノーラ様の未来視なら回避可能なのに連絡する手段がない。


 自力でなんとかするしかないので、必死に考え、なんとか回答を捻り出した。


「ラティ、勘違いしていないか?」

「わたしがか? 結婚を不可と言ったからなのか?」

「違うそうじゃない。嫌われたくない女子にラティも含まれている。単純に俺はラティに嫌われたくないんだ! 力が足りない俺には直ぐには無理だ。でも絶対に救いに行く。誓ってもいい」

「あぅ…………」


 言葉にならない声をだして、顔が真っ赤に染まり、両手で顔を押えて悶えている。


 可愛い。動画で保存したい。

 販売してるならぜったいに買うね。

 なんなら買い占めたいくらいだ。


 作戦は完璧だ。

 ラティは恋愛に免疫がない。

 これまで恋人がいなかったからか、愛の言葉に弱い。マジで結婚出きるかもな。


「正妻はラティに決めている。だけどモモノーラ様の加護持ちとして子孫を残さないといけない。だから側室も必要なんだ。理解して欲しい。愛してるよ」

「わ、分かったから。お前の気持ちは分かったから、も、もう止めてくれ!」


 どうやらラティのキャパを超えたみたいだな。これ以上は逆効果になる恐れもある。止めておこう。


 視線を魔王に戻すと、側に控えていたメイドの女性が眼を輝かせている。


 なるほど、公開告白になるか。

 ラティがああなるのも頷ける。


「ウホン、なんじゃか甘い空気になってしまったが話を続けさせてもらうぞ。このまま旅しても直ぐに死ぬかもしれん。じゃから魔王の加護を授ける。後は旅の共にラティフォリアも連れていくとよい」



 父さん、母さん

 結婚式は魔王城になりそうです。





読んで頂きありがとございます。

次も頑張って執筆します。


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