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第六話:恋の暴走

 急に二択を迫られたが悩む必要なんてあるのだろうか?


 確かに目の前にいる女性は悪魔に違いない。それがどうしたと言うのだ。たとえ目的が俺の魂だったとしてもいいじゃないか。


 どうせウィーガン子爵の所へ行っても耐え難い事になるに違いない。


 前世の記憶では悪魔というのはイメージが良ろしくない。契約者の望みを叶えてくれても結局最後には破滅する。名前からして不吉の象徴じゃん。


 でもこの女性は美人だ。

 しかも巨乳。爆乳と言っても差し支えない。


 同じ美人でも、冒険者姉妹で妹のリオ姉さんなんかとても慎ましいゲフンゲフン。


 首筋に刃物を押し当てられた気がした。


 まさか本人が近くで見ているのではないかと思い、辺りを確認してみたが居なかった。良かった。


 口に出してなくとも思っただけで存在を感じるなんて恐ろしい。俺、洗脳されてる?


 言い訳するわけじゃないが、リオ姉さんが恋人になってくれるならめっちゃ嬉しいよ。禁句さえ口にしないなら素敵な人だから。半年くらい前に恋人になって欲しい的な事を言った事がある。まだ子供だし、弟にしか思われてないのか軽くあしらわれたけど。


 以前、ギルという冒険者がリオ姉さんに禁句を言ってしまいテレビでは映せない惨状になった。あまりにも怖くてちょっと漏らした。それから俺の中で絶対に言ってはいけないセリフとして心のノートに書いた。もちろん赤字でアンダーラインの二重線を引いてある。


 そういえばあれ以来ギルを街で見ていない。リオ姉さんの名誉の為に言っておくが、亡き者にしてない。噂ではビビったギルが逃げるようにして街を離れたとか。


 もう一度彼女をじっくり見る。

 少しウェーブがかかった焦茶色の髪は肩まで伸びていてとても似合っている。

 手足も細く、小顔でモデル体型。実年齢は分からないが二十歳くらいに見える。


 見た目に関して評価すると、欠点は見当たらない。まさにパーフェクトウーマンだ。素晴らしい。


「さて、そろそろ意思は固まったか? シエル、お前の答えを教えてくれないか?」


 しばらくなにも言わなかったのはそういうことか。悪い悪魔(ひと)ではなさそうだ。


「分かりました」


 息を深く吸い込んでからゆっくり吐き出して心を落ち着かせた。



 俺の答えは決まっている。口の中に溜まった唾液を飲み込むと、お辞儀をするかのように、90度くらい頭を下げてから片手を差し出した。


「第一印象から決めてました。絶対幸せにするので宜しくお願いします」


 決まった。

 自分で言うのもなんだが、悪くないだろう。


 悲しい思いをさせた両親に嫁が出来たと報告しよう。いや違うな、この世界は15歳で成人だから彼女になるか。孫はもう少々待ってもらおう。



 静寂の時間が流れる。

 どこからともなく現れた未婚の男が、「ちょっと待ったぁ」みたいに叫んで邪魔をされるかと思ったがそんなことは無かった。


 いつまで経っても手を握ってもらえない。

 なんか失敗しただろうか。

 振り返って考えても完璧な告白だと思う。


 仕方ないので頭を上げて彼女を見たらキョトンとした表情している。うん、可愛い。


「……お前は何を言っているんだ? 意味が分からない。説明を求める」


「あれ!?」


 俺とした事がうっかりしていた。

 ここは異世界であって日本でない。

 ましては相手は悪魔。

 文化が違うではないか。


「えっと、俺と結婚して下さいと言いました。まだ14歳だから1年間は彼女になるけど。大切にするのでお願いします」


「ぷっ、あはは。シエル、お前は面白いな。そんな事を言われたのは初めてだ。少し面映(おもは)ゆいな」


 ぽっと頬を染めて照れている仕草がまたいいな。

 うん、可愛い。


「しかし悪いが返事は不可だ」


「どうしてですか? 俺は一途ですよ。 もしかして恋人いますか? 後、名前教えて下さい」


「……お前はグイグイくるな。まあいい。わたしは、ラティフォリアだ。恋人はいない。初めて告白されたのがシエルだしな。お前がわたしを助けてくれるなら考えなくもないが……」


 およよ!?

 フラれたと思っていたけど、これは大逆転ということなのか?


「詳しく聞きましょう。話して下さい」


「実はな、ここにいるわたしは分体で本体ではない。ちょっとしたミスで、とある場所に幽閉されている。後三百年は出れないから助けてくれるなら嬉しいぞ」


 分体?

 よく分からんが、影分身とかコピーロボットみたいなもんか。


 まあ、助けたら結婚してくれるなら助けるしかないだろ。簡単な話だ。


「いいでしょう。らーたんを助けましょう」

「ちょっとまて、らーたんとはわたしの事か?」

「ええ、ラティフォリアは長いのでらーたんと呼びます」

「いやいやいや、らーたんは止めてくれないか。せめてラティにしてくれ」


 ちぇっ、らーたんは駄目か。

 恋人同士が呼び合うような愛称にして、なしくずし的に親密になろうと思ったが仕方ない。


「分かった。これからはラティと呼ぶよ。それで助け出す話をしたいけどいいかな?」


「却下だ。いいわけないだろう。口調も急に変わるし、シエルの変化にはついていけない。話が脱線しすぎだ。頼むから仕事をさせてくれないか。わたしに付いてくるか、先程の人間の元に帰るか聞かせてくれ」


 考えるまでもない。


「ラティと一緒に行くよ」


「そうか、では契約だ」


 何故かいきなりラティに抱きつかれた。

 嬉しい。めっちゃ嬉しい。


「ラダデュール!」


 ラティが何かを呟くと足下が光輝き、青い光の粒子に全身を包まれた。


 一瞬の出来事だったようで、不思議な現象はすぐにおさまった。


 なんだこれ?

 魔法?

 あっ、契約魔術かな?


「契約完了だ。お前がわたしを選んでくれて嬉しく思うぞ」


 嬉しそうにしている笑顔のラティは可愛い。

 うん、好きだ。



 ラティに見とれていたら、彼女の手には丸まった羊皮紙を持っており、それを目の前にぽいっと投げたら燃えて消えた。


 すると、燃えた辺の空間が楕円形に広がり、向こう側の景色が黒い霧のように見えた。


「シエル、お前には私と一緒に魔王様に会って頂くから」


 ラティがそう言うと俺に手を差し出した。


 えっ魔王?

 ええ――――っ!!


 相手がウィーガン子爵から魔王に昇格?

 いや、これは昇格と言えるのか?


 なんかヤバさが数段階増した気がする。


 結局どちらの選択してもバッドエンドって事?

 教えて神様。俺はどこで間違いました?


次話は魔王が出ます。


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