第七歩 夢見る者の足跡
「――――――ッ!あなた組織の人!?」
彼女の心臓は激しく鼓動し、冷や汗が背中を伝う。目の前に迫る敵の姿が鮮明に映り、思考が混乱する。
すると、ノコギリをもった男が、
「そうだ。ち・な・みに助けを求めても無駄だぞ。さっきそこの生首に音避けの結界を張らせた」
そう言うと、男は持っていたノコギリを生首に向ける。
そのまま、ゆっくりと男が戦闘の構えにはいると目に見えない重圧が彼女の心臓にのしかかり、全身が凍りつく。視界がぼやけ、彼の笑みが不気味な影に変わる。
恐怖に覆われながらも勇気を奮い立たせ、彼女は立ち向かう。
「冗談、後悔させてあげるわ」
「ひひっ、安心しろよ、殺しはしねぇ。ただし腕は足はいらねぇからな。――あぁ、お前はいったんどんな敗北の顔を見せてくれるんだ!」
男は笑みを鋭くし、血に飢えた猛獣のように、突進してきた。そして、一瞬にして間合いに入り、凶刃を振り下ろす。
それを、彼女は遅れて、シールドを発動させ、それが波のように広がり、衝撃を受け止める。金属と魔力がぶつかり合い、鋭い音が辺り一帯に響き渡る。
「ははっ、良いね良いね。」
男は、余裕そうに笑みを浮かべる。
「――――――――――ッ!」
(やっぱり、強い)
彼女の汗が大粒の雨にように出てきて、警告する。
――気を1ミクロでも抜けばやられる、と
次の瞬間、彼女の杖から光が放たれる。男はその光を後ろに下がりながら、回避する。
「フゥー、危ないな」
言動の割には余裕のある男に向かって、流星群のように光のビームが無数に放たれる。だが、男はノコギリで全て弾ききる。
さらに、繋がるようにしてまたもや間合いをつめる。
そして、先ほどよりも速い斬撃が飛んでくる。それを彼女はシールドを杖に纏わせ、防ぐ。
そのまま、杖を槍のように使い、肉を削るような連撃を放つ。男もノコギリの嵐のような攻撃で応戦する。
そして正面からの勝負となると、
「賞賛、賞賛。………だが」
そう呟いた直後、攻撃がさらに速くなる
「――――――ッッ!」
このままでは負ける、そう思った時だった。
「ヤバいな、これは」
そう言い、男はバックステップで距離を取ろうとする
(――?何だか分からないけどチャンス!)
すかさず、光を放つ。その一撃に男は狼狽した……かと思われたが、男はノコギリを強く握り、口角をあげて、ニヤリと笑い、
ノコギリで放たれた光を地面に弾き飛ばした。刹那、地面が轟音と共に爆発し、周りには砂埃が撒き散らされる。
それにより視界が消える。彼女は一旦距離をとるために後ろに下がろうとする。その瞬間、まるで手品にでもあったかのように目の前に男が現れる。
「そろそろ、見えるか」
男はノコギリで横一文字に切ろうとする。彼女は防御しようととっさに、シールドを張った杖を前に出す。
防ぐことができる…かと思われたその一撃は今まで見たことのない凶悪性を含み、シールドを杖ごと叩き切った。
そして一呼吸の間にノコギリを振り上げ、
「顔を上げろ。お前の敗北の顔を楽しむため」
「あっ」
命の火が消える瞬間に彼女は思った。
――自分はただ、夢を見たかっただけなのだ。 と、