第四歩 賛美の光景
「ーーー――ッ!」
目の前に広がる石畳やレンガの造りが広がる中世の城郭都市。美と風流が交差し、壮麗な建物がいつも佇む、時を超えた幻想の街だった。
街並みは
『優雅』その一言に尽きた。
余りに日本離れした街は言葉を失わせるほどの迫力を秘めていた。
「壮観でヤンス!」
ファンタも声を上げて、歓喜する。
まるで初めて親を見た赤ん坊の様にはしゃいでいた。
目の前に広がる壮大な景色に、急かされて我慢できない子供のように、
「はやく街見学行こうぜ。あぁ、色んな店行きてぇ、心躍るな。
――――あ、ちなみに金ねぇからツケで奢ってくれ 」
「行こっ……ってエェッ、旦那金ないんでヤンスか!
ツケとかいいつつ、最終的にたかる気マンマンでヤンスし!最っ低でヤンス! 」
ファンタの怒りまじりの焦った声を無視し、俺は歩き始めた。
「ちょっ、逃げんな!!」
ファンタがアイデンティティのヤンスを捨てて、叫んだ
ファンタの抵抗を諦めさせ、しばらく歩いていると、
『魔導書専門店』という看板をかかげた店が遠くに見えた
(魔導書ってことは…まさか――)
中二病なら興奮して死にかけそうになる単語を見て、
まさかと思い、ファンタに向かって、質問をしてみた
「なぁ、この世界って魔法あるのか?」
ファンタの目を正面から見つめて尋ねると、ファンタは突然吹き出して笑い、
「ぷはっ、あははは!な、何、当然のことをそんな真剣な顔で…あはは!」
腹をかかえて大声を上げて笑う、笑いのあまり涙目になっているファンタその態度にイラっとし、あやうく拳を出す二十一歳ニキになりかけたが、ファンタにとってはあまりに当然なことだったのだろう。怒るのは筋違いというものなので深呼吸して、
(それって、俺は使えんのかな?使えるならやっぱ!全てを灰にするだよな!)
ファンタへの怒りを抑え、次に湧いた疑問について期待を持ち、楽観的観測を入れながら考えていると、
「舐めてんのか、てめぇ!」
「こっちは商売でやってんだ。そんな要望聞けるかよ」
平和な雰囲気が続いていた中、いきなり怒声が響き渡った。奥の方に人だかりが出来ていて、その中心からは言い争う声が聞こえる。
そのトラブルが起きているであろう所は先ほど見た魔導書専門店の前だった。
店主と客の揉め事かなと思いながら、俺達は心配している民衆をくぐり抜け、様子を見に行った。
「この魔防書をただで譲ってくれって訳じゃねぇ。
たった半額にまけてくれってだけの話だろうが!」
「だからこっちはしょ……、駄目だ、話通じねぇな。
対話すらしたくねぇ。さっさと消え失せろ!」
「あんだと、コラ!!」
案の定店主と客の揉め事だった。店主は40歳ぐらいの体格の良い目つきの悪い男性。
無茶な事を言い、喧嘩をふっかけるのは所々破れた服を着ている体の細いチンピラだった。徐々にチンピラの方がエスカレートしていく。ファンタの方をちらっと見てみると、民衆と同じく不安と心配に包まれている様子だった。
そのときだった、チンピラの怒りの沸点が限界を迎えたのか、
腰にかけていたカバンに手をいれて…
「おら!これでも半額にしねぇっていうのか!」
チンピラがカバンに手を入れて出したものとは……
――拳銃だった
店主の顔つきが険しいものになり、民衆は逃げる民衆の表情は恐怖に満ちており、目は怯え、顔は青ざめ、悲鳴が鳴り響き、逃げ惑う人々は、まるで恐怖の嵐に巻き込まれた葉のように、無秩序に道を駆け抜けていた。
(この世界にも拳銃ってあるんだな)
呑気にもそう思っていると、
「う〜ん、やっぱタダにしてもらおっかな〜」
周りの様子を見て、調子の乗ったのだろう。拳銃を店主に突きつけ、軽率で浮かれた態度で楽しそうに言う。それを見て、店主の顔は怒りに駆られる。
それを見て俺は、
「どうしよっか――うっわ!」
チンピラの背後に音を消して忍び寄る。チンピラはいきなりのことに仰天している。店主も俺を見て、驚いている。
その隙をついて、俺は一瞬の間に拳銃を力づくで奪いとる。そのあまりの早業にチンピラは理解が追いつかず…
「て、てめぇ、何様のもん奪って――ぐはっ」
逆上して襲いかかってくるチンピラに対して、頬を狙って意識を刈り取る拳をめり込ませ、店内までふきとばした。
それを見ていた空いた口塞がらない店主を気にせず、一件落着!と思っていると、
拳銃を見た瞬間一目散に逃げたし、先ほどまで物陰に隠れて様子を伺っていたファンタが堂々たる姿で俺の元まで近づいてきた。
そして、
「どうでヤンスか、これが俺の旦那の力でヤンス!」
まるで自分の力だと言わんばかりに啞然とする周りの人々に向かって自慢する。すると、啞然としていた一人の人が拍手をし、他の人もそれにつられて拍手する。それが徐々に浸透していき、拍手が大きくなっていく。すると、民衆から
「ありがとうよ」
「あんた、助かったぜ」
と次々に、お礼の言葉が浴びせられる。子供たちの笑顔、そして周囲から声が寄せられる。
「えっ」
それを聞き、心臓を動かすことを忘れるほどの衝撃を俺は受けていた。俺は感謝されているのだろうか…?
感謝を自覚していくと共に――
その拍手一つ一つが俺の心に響き、心が徐々に高鳴り、胸が熱くなった。そして心の中にあった深淵が一気に消えてゆくのを感じた
――――本当に感謝された事なんて、あの人以外にはなかったし、今まで感謝される事を想像すらしなかった
俺はこの瞬間、言葉を失った。ただ……
――自分の存在がこの瞬間に繋がっていることを理解して、何も言い難い嬉しさを感じた。
心が熱と希望でみちてゆくのを知覚して、
(こういうのも悪くないな)
そう思いふけていると、後ろから肩を店主から叩かれた。何か言いたそうな顔をしている。
「助けられて良かったです」
「旦那は寛大なんでヤンス」
俺が笑顔で一言言うと、ファンタがそれに便乗する。
すると、俺の想像してた様子とは異なり、店主が肩をワナワナと震わせた。どこか怪我をしたのかと心配になり、また声をかけようとすると
――店主がボソッと呟いた
「――して」
「えっ?」
「何、俺の店壊してんだぁ!!」
「へっ?」
俺とファンタが顔を見合わせる。
店をよく見てみると、
――チンピラを殴り飛ばしたことにより、店内が壊れ、めちゃくちゃになっていた…
思ったより、多くの人たちが見てて本当に嬉しいです。
ありがとうございます(≧▽≦)
これからもペース上げれるように頑張ります!