【 揺れる想い ① 】
急に教室を飛び出した山峰さんを僕と三田さんは慌てて追いかけた。
「はぁ、はぁ……、山峰さんっ、どこ行ったんだ」
「翔君……っ、こっちにも……いないっ」
僕らを追って井上と賢治も教室を飛び出して来ていた。
「おい翔、山峰はどうしたっ?」
「みんな待ってぇ〜。置いてかないでよぉ!」
「それがどこにもいないんだ」
「まさか外に出たんじゃねーだろうな」
井上の言葉に外を見るともう雪が降り始めていた。
山峰さんはコートもない薄着のまま。
この雪空の下、風邪を引くどころではすまないだろう。
「……っ、女子トイレも全部見たけど、……っ、どこにもいないのっ」
三田さんは泣きじゃくりながらしゃがみ込んだ。
「賢治、お前は三田さんのこと頼むっ」
「わかった。春花ちゃんのこと頼むね」
「わかった、大丈夫だ」
「翔、俺は寮の方見てくるな。二手に分かれよう」
三田さんと賢治をその場に残し、僕と井上は外へ出た。
迷わず図書館に向かった僕。
館内をくまなく探したが彼女の姿は見当たらない。
初めて山峰さんに遭遇したあの自習スペ―スにもいなかった。
彼女の携帯に電話してもメッセ―ジを送っても反応なし。
フェルマにも桜並木にもどこにもいなかった。
「どこにいるんだっ!」
気持ちだけが焦っていく。
慌てて飛び出してきたためコートもカバンも教室の中だ。
さすがの寒さに体が震え、徐々に指先がかじかんでいく。
いったい昨日、彼女に何があったんだ?
先生と話し合いに行ったのか?
先生との関係をはっきり否定した彼女。
でも一方的に彼女が先生のことを好きだとしたら?
考えれば考えるほど今にも頭がオ―バ―ヒ―トしそうになる。
「クソっ。春谷があんなことさえ言わなければこんなことにはならなかったのに…」
放課後になれば山峰さんからゆっくり話が聞けるはずだったんだ。
込み上がる春谷への怒り。
追い詰められ涙を流す山峰さんの横顔が僕の脳裏に焼き付いて離れない。
彼女は今も泣いているに違いない。
「早く見つけなくちゃ…」
焦る気持ちを抑えて僕は必死に探し続けた。
「おい翔、どうだ? いたか?」
「ダメだ、いないっ」
「寮も空振りだ。病院の方探しに行くぞっ」
「そうだな」
合流した僕と井上は大学病院内を探し回った。
受付に外来、そしてそれは病棟を回りはじめた時だった。
「ねぇ吉田さん、すぐ須藤先生戻ってくると思うからそこのカルテ確認してもらっておいてくれる?」
「あ、これですね。わかりました」
後ろから聞こえた看護師さんの言葉に僕らは振り向いた。
「須藤先生……?」
それは春谷が教室で言っていた先生の名前。
確かに僕の耳には “須藤先生” と、そう聞こえたんだ。
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次話【 揺れる思い ② 】
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