【 言いがかり ③ 】
涙をこらえ、必死に耐える険しい表情。
山峰さんの体は震えていた。
「山峰さん、とりあえず落ち着こう」
僕は彼女の背中をさすりながら自分も冷静になろうと必死になった。
「春花、何があったの?」
三田さんはゆっくりと、優しい声で彼女に声をかけ続けていた。
「こっちはな、お前が須藤先生を待ち伏せしてるのも、先生と人気のないところでいつもこそこそ会ってるのも、何度も何度も見てんだよ!」
春谷は、荒々しい言葉を容赦なく彼女に浴びせかけた。
「違う……っ、そんなんじゃない……っ」
山峰さんは何度も何度も首を横に振った。
彼女の目からはポタポタとこぼれ落ちていく大粒の涙。
「本人が違うって言ってんだろ! ふっざけんなっ!」
井上は吊るし上げるように彼の胸ぐらを掴み直した。
何が起こっているのか、僕には理解できなかった。
目の前で取り乱す彼女の姿に僕の胸中はメチャクチャだった。
キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン。キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン。
「何を騒いでるんだ! 早く席に着きなさい!」
教室に戻ってきた先生が大きな声で注意した。
「そこ! 何してる!」
先生は取っ組み合っていた井上たちを指さした。
教室のざわめきは収まらない。
三田さんが山峰さんを慌てて席へ着かせる。
「春花ちゃん、大丈夫?」
賢治も三田さんを手伝った。
「井上、落ち着けっ」
僕は井上の手を何とかほどくと井上を席に座らせたんだ。
「学生の本分は勉強です。騒いでないで集中しなさい!」
全員席に着いたもののざわつく教室内の雰囲気に先生はひどくご立腹だった。
「はっ、泣いてるのがいい証拠だろ!いい子ぶりやがって」
春谷は山峰さんを見すようにさらに言葉を吐き捨てたんだ。
バ――――ンっ!
すごい音が鳴り響いた。
井上が手のひらで思いっきり机をぶっ叩いたんだ。
「おっまえぇぇ……、いい加減にしろぉぉぉっ!」
井上が聞いたこともない声で春谷に怒鳴り散らした。
にらみ合う二人。
「井上やめろよ! 井上! やめろってっ!」
僕は必死に井上を止めようとしたが井上の怒りは収まらない。
「コラそこ―!何をやってるんだ。いい加減にしなさいっ!」
言うことをきかない井上達に先生も大声で怒鳴り散らした。
その時だった。
ガタガタガタンっ!
「春花!? ちょっと待って! 春花、待って!」
三田さんが叫んだと思ったら、突然山峰さんが教室を飛び出したんだ。
「山峰さんっ!山峰さん待って――っ!」
僕も必死に叫んでいた。
僕と三田さんは気が付いたら無我夢中で彼女を追って教室を飛び出していた。
「コラ――っ! 君たち、戻ってきなさい!」
僕らの後ろの方で注意する先生の声が聞こえていた。
マイク越しの怒鳴り声は廊下の方にまで響いていた。




