第二章 【 新学期 】
長い夏休みも終わり、待ちに待った新学期が始まった。
教室に行くと僕は一目散に、それでいてあくまで自然を装いながら山峰さんの側に駆け寄った。
「翔君、おはよ」
山峰さんは相変わらず元気そうだった。
そして相変わらずとても可愛かった。
「お、おはよう。元気だった?」
僕の胸は彼女を見るなり早速ドキドキ早鳴った。
顔もきっと緩んでいただろう。
途端に顔がにやけていく。
夏休みが終わると、伊豆の旅行で仲良くなった僕ら5人は自然とフェルマによく集まるようになった。
そしてなんと僕らは次第に一緒に授業を受けるようにもなっていったんだ。
好きな人と毎日のように一緒に授業を受けたり、学食で一緒にお昼を食べる。
賢治と僕は毎日が楽しくて仕方がなかった。
旅行の時ほどではなかったが、山峰さんはいつも穏やかに笑っていた。
旅行の時はかなりはっちゃけてしまっていたんだと彼女は恥ずかしそうに笑っていた。
山峰さんのことを心配してた三田さんも彼女のそんな様子にだいぶ安心しているようだった。
僕は授業の疑問点があると、事あるごとに彼女に話しかけた。
「山峰さん、さっきのこの説明わかった?」
「難しかったよね。後で先生に聞きに行ってみようか」
勉強の話しをする時、彼女はとてもイキイキしていた。
僕は彼女との間に〝勉強相手〟というポジションを作り上げていった。
わからないことがあれば、一緒に担当の先生の教室に質問に行っり、図書館で調べたりした。
ただの友達という関係に変わりはなかった。
でも一緒に過ごす時間は日に日に増えていった。
彼女が僕のことを頼ってくれているのも感じていた。
彼女の傍で誰よりも同じ時を過ごす、それは僕に心地いい時間だった。
僕の山峰さんへの気持ちはみんなにバレバレだったようで、ことあるごとにみんなは僕をからかった。
山峰さんを下の名前で呼ばせようとしたり、わざとらしく山峰さんの隣りの席を開けていたり、お節介だと思いつつも僕にはみんなの気持ちがちょっと嬉しくもあったんだ。
一緒に過ごすようになってからは桜並木で山峰さんのことを見かけなくなり、自然と桜の下に彼女を探すこともなくなっていった。
桜を見上げる理由をいつかどこかで聞いてみよう、そう思っていたことも忘れ僕は目の前の彼女の存在に充実した日々を送っていた。
三田さんいわく、彼女と好きな人との状況は変わっていないようだった。
彼女の抱える事情は結局分からないままだったが、毎日楽しそうにする彼女にわざわざ聞く必要もなく、僕らはいずれ時間が解決してくれるだろうと思うようになっていた。
事あるごとに撮った記念写真も段々と数を増し、フェルマの二階にはみんなの写真が増えていった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ季節はどんどん移り変わっていった――――。
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次話【 みんなの心配 】
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