【 旅の終わり 】
伊豆バイト旅行の最終日。
僕らはみんなして寝坊をした。
「しまったー!!」
驚くほどの大寝坊だった。
「せっかくみんなに観光もさせたかったのにぃ!」
「まぁいいじゃないですかぁ〜。来年も誘ってくださいよぉ〜」
慌てふためく由美さんを尻目に賢治はのんびり笑って言った。
別荘でゆっくり最後のひとときまで伊豆を楽しんだ僕ら。
「じゃあみんな、帰ろうか」
最後にみんなで戸締りを確認した後、がチャリと別荘に一さんがカギをかけた。
見違えるように綺麗になった別荘。
駐車場への階段を下りながら振り返ると楽しすぎた4日間に後ろ髪をひかれるような思いがした。
帰りの車の中は旅行の疲れと満足感からかとても静かだった。
BGMに耳を傾けながら僕らはゆっくり帰路についた。
いつもの風景。
大学病院の大きな建物が見えると、あぁ、帰ってきたなと思った。
「ただいま―!」
フェルマに帰ると、真っ黒に日焼けした僕らを見てジョ―ジは笑った。
「みんなお帰り! アッハッハッハッ! それにしてもよく焼けたな~!」
みんなは明日から実家に帰る。
山峰さんに次に会うのはきっと新学期だ。
地元に帰ると言っていた。
帰れば幼馴染の彼に会えずとも、きっと彼のことをたくさん考えるに違いと思った。
一さんにもらった桜の絵を大事そうに抱える彼女。
大好きな桜に彼との思い出が何かあるのかもしれない……。
それはあくまで僕の勝手な妄想だ。
でも一度そう考えると身勝手にも帰ってほしくないと思ってしまう自分がいた。
「翔君、色々ありがとう。翔君の撮った写真も楽しみにしてるね」
彼女はそう言うと僕に優しく微笑んだ。
「こっちこそありがとう。山峰さんも気を付けて帰ってね」
「お土産買ってくるね。また新学期に」
彼女と交わす小さな約束。
こんな小さな約束ですら僕のモヤモヤした気持ちを一瞬で穏やかに変えていく。
僕は君に恋をした。
僕の一方的な片思い。
でも僕は君のことがとても好きみたいだ。
新学期になったらまたいっぱいいっぱい話がしたい。
みんなで色んなことをやってみたい。
彼女の傍でもっと同じ時を過ごしたい。
そう思った。
僕は最後まで笑顔で手を振る彼女の姿を見送ったんだ。




