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【 朝釣り 】

まだ低い気温に涼しさすら感じる日の出前。

薄暗い中、僕らは朝早く釣りに出発した。



「ふぁ〜ぁあ!」

井上と賢治は寝ぼけ眼に大あくび。



「金目も釣れたりするのかな?」 

「釣れたらお刺身? でも煮つけもいいよね!」

一方の女の子たちは朝っぱらから元気も食欲も旺盛だ。




早朝の釣りはまさに爽快!


ザバ――ン、ザバ――ン。

心地いい潮風と耳ざわりいい波の音。


 


夜の闇が残る中うっすらと見える空と海の境。

水平線に太陽を先導するように空に黄色い光が見え始めた。


日の出が近い。




東の空に僕はカメラを覗いて待ち構える。



「もうすぐ日の出だね……」


刻一刻と赤く染まっていく水平線。

変化する空の色にみんなの手が止まる。


カシャっ、カシャッ。


差し込むような眩しい光がファインダー越しに目の中に飛び込んだ。


水平線から閃光とともに太陽が溢れ出す……。

日の出だ。


「わ――――っ!」


重なり合うみんなの歓声。


それはまさに大自然の神秘――。


大海原の風と波、踏みしめる大地と神々しい太陽の光。

全身で感じる大自然の存在感。


体の芯まで染み入ってまるで心が洗われるような感覚だ。




朝日に照らされオレンジ色に輝く波。

海面には日の出とともに一筋の光の帯が揺らめいた。



水面の光の上を横切る一艘の漁船。


カシャカシャ、カシャカシャ。

美しい光景に僕は夢中でシャッターを切った。 




ゆっくりと、それでいてどんどん上っていく太陽。

空はあっという間に青色へと変わっていく。



「きれいだったね!」


何度見てもいい光景だ。

わずか数分の出来事に心奪われた僕ら。




でも一人、最後まで上っていく太陽を眺め続ける山峰さんの表情を僕は見逃さなかった。

それはみんなとは違う真剣で少し思いつめたような表情。


彼女はこの神秘的な光景に一体何を思ったのだろう。


一昨日の彼女の沈黙。

僕の脳裏にはあの時の表情が浮かんでいた。



「釣れそうな気がしてきたぞ!よっしゃ頑張るか!」

さっきまでボ―っとしていたのに急に気合を入れ始めた井上。



井上の大声に驚いたのか、気が付くといつの間にか山峰さんはいつもの感じに戻っていた。



彼女の笑顔を曇らせる暗い影。

何か事情があるのは明らかだ。


明けない夜はないという。

彼女に落ちた暗い影もいつか光を纏うときが来るのだろうか。


何に悩んでいるのか。

聞く勇気すらも持てない情けない僕。


悶々と考えを巡らせながら彼女の横顔を前に切なさに溢れる僕がいた。





その後釣りを始めるとみんなはそれぞれ思い思いの場所で釣り糸を垂れた。


さりげなく山峰さんの隣りを陣取った僕。


「翔ちゃ―ん、一緒に釣ろうよ!」

途中で賢治と井上も僕の横にやってきた。




その時だ。

「お、来た、来た!」


グンッという手ごたえと共に先端がしなった僕の竿。

魚がヒットしたんだ。


「おぉ! 翔ちゃん頑張って!頑張って!」

隣りでなぜだか賢治の方が大騒ぎ。


シャ――ッ。

ゆっくりゆっくりリ―ルを巻く僕。



「来た来た来た―――っ! おお――! おぉ!? お……?」

賢治は一人で大騒ぎ。


「あっはっは! 翔、なんだそれ! ヘボすぎだろ!」

大物かとおもいきや、針の先にはなんてチョロリと可愛い小さな魚!

すかさず井上は大爆笑。

 

「まったく、賢治が大げさに騒ぎすぎなんだよ!」

僕は最初から手ごたえでわかっていたんだ。

賢治の大騒ぎのせいでとんだ笑い者だ。


「クククククっ!」

腹を抱えて山峰さんまでが笑っていた。


「糸倉くんそれはなんの魚? 可愛くて金魚みたいだね!」

「お、大正解!これは念仏鯛だよ。通称キンギョ!」


念仏鯛は求愛行動としてブリブリ、ブツブツと念仏を唱えるように鳴くらしい。


「ほほ~ん。奥手な誰かさんの代わりに気ぃきかせて愛の念仏唱えに来てくれたんじゃねぇの〜?」

僕と賢治の顔を見ながらニヤついく井上。


「バ、バカ、何言ってんだよ!」


僕の心臓が一瞬ドキッとした。

山峰さんの隣りで井上の言葉に焦る僕。

やっぱり井上は山峰さんへの僕の気持ちに気付いてるのか?


「えぇ!じゃぁその魚、俺にちょうだい! 俺のために愛の念仏唱えてほしも~ん!」

「アホ賢治! そんな念仏みたいな愛の言葉、三田さんだって喜ばねーよ!」


賢治のお陰でごまかせたが井上のやつには要注意だ。

お陰でじっとりとした変な汗をかいた。


「確かに。愛のささやきが念仏じゃぁね」

僕の気も知らず、そう言って山峰さんは可愛い笑顔で笑っていた。




結局釣れた魚は30匹以上。

ジョ―ジへのお土産を考えても十分だ。


シロギスに石鯛、メジナにカサゴ、ソウダガツオに鯖などなど。

真鯛やカワハギも釣り上げていた。


まさに大漁!


「今宵もカワハギが食えるとはハッピ―ハッピ―!」

一さんを筆頭に今夜の海鮮BBQに期待する僕らだった。

ご覧いただきありがとうございます。


また、誤字報告をくださった皆さま、ありがとうございます。

ブックマークや評価、感想を頂けますと励みになりますので、どうぞよろしくお願いします.。.:*☆



次話【 海水浴 】 


毎週水曜日 お昼の12時更新予定です。


AR.冴羽ゆうきHPから "糸倉翔の撮った写真" としての冴羽ゆうきの写真も見られます!


HPからTwitter / Instagramへも!

ご興味のある方はぜひご覧ください☆


https://sites.google.com/view/saebayuuki/ 


コピペ願います!(AR.冴羽ゆうきHP にてHPを検索!)

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